■ 値上がりする「環境株」 ■
蓄電池の「GSユアサ」など所謂「環境株」がブームの様です。
政府が主導するグリーン・バブルを先取る動きでしょう。
先日の新聞記事にもありましたが、
東京電力も来るべき自然エネルギー普及に備えて、
自然エネルギーの不安定さを吸収するバッファーとして、
大掛かりな蓄電設備を建設する予定があるようです。
日本版スマートグリットの一環の様です。
各家庭の太陽光発電、スマートグリット、ハイブリット車、電気自動車など
蓄電池の需要は大幅に増大する事が見込まれます。
■ 脆弱な政府主導のグリーンバブル ■
温暖化に絡む現在の状況は「政府主導のグリーンバブル」と言えそうです。
しかし、冷静に考えると、「グリーン・バブル」は基礎が非常に脆弱です。
ドイツなどの自然エネルギー利用は、
「緑の党」が政権に加わった事に端を発します。
緑の党は「原発廃止」を公約に掲げていた為、
ドイツは2020年の原発を廃止を目指してして、
自然エネルギーの開発を推進してゆきます。
税制の優遇や、自然エネルギーの高値買取など、
政府の補助でバックアップしながら、
民間の投資を呼び込んでいました。
民間ではエコ・ファンドの様な資金もあり、
環境に貢献する技術や事業に積極的に投資を行っていました。
しかしその結果、ドイツの電力料金は5年間で2倍に跳ね上がりました。
一方でドイツはフランスから大量の安い電力を購入しています。
フランスの電力は80%が原子力発電ですから、
事実上、ドイツは原子力発電の利用国です。
さらに、アルミニウムなど大電力を必要とする工場は
国外に移転しましたから、自国外でクリーンで無い電力を消費しています。
一方、世界的不況で、自然エネルギー分野はの投資は冷え込んでいます。
何故なら、電力が足りなければ「安い電力」を買えば良いからです。
経済の危機的な状況にあって、フランスからの電力購入は増大するでしょう。
経済危機が長引けば、「緑の党の政策であって必然で無い」ドイツの環境ビジネスは
危機に立たされます。
■ 日本においても非効率な自然エネルギー ■
日本は好むと好まざるとにかかわらず、原子力発電推進国です。
世界の3大原発グループを抱え込んだ今後、
この動きはさらに加速するでしょう。
国際原子力委員会(IAEA)の委員長の座を日本人が獲得した事からも、
政府の本気度が伺えます。
地震における柏崎原発の操業停止も、活断層の真上で地震被害を受けながら、
原子炉はダメージを受けなかった事が、逆に日本の原発技術の安全性を証明し、
国際的にも評価されています。
一方、自然エネルギーは政府の支援無くしては採算の取れないビジネスです。
将来的には石油が枯渇し、ウランも高騰しますから有効な技術ですが、
原油価格が100ドルを突破しても、
自然エネンルギーはその2倍以上コストを必要とします。
ドイツの電気代が2倍になった事でも明らかです。
現状、太陽光発電や風力発電は不安定で質の悪い電力です。
この様な「粗悪」な電力が増加すれば、
本来不必要な蓄電設備が電力網の中に必要になります。
蓄電池の寿命は10年~15年程度ですから、
温暖化の名の下に、石油が枯渇してから必要になる貴重な資源を無駄に浪費します。
■ 投資リスクの大きい自然エネルギー ■
今後2年間は経済状況は悪化こそすれ、好転は見込めません。
財政出動にも限界があります。
その様な状況の中で、エネルギーも効率が重視されて行きます。
現状は「温暖化」が追い風となって国民の支持を得られている自然エネルギーも、
国民負担が増大すれば、風向きが変わってきます。
さらに、「温暖化」のメッキは大分剥げてきています。
気温低下の傾向が顕著になれば、政府やIPCCがいくら「温暖化」を主張しても、
「懐疑論」が優勢になる事を防ぐ事が出来ません。
そこで「グリーン・バブル」が弾けます。
長期的に見れば、とても重要な自然エネルギーですが、
石油の枯渇が本格的になるまでは、様々な投資リスクが付きまといます。
■ 利益が出る事が環境にも優しい ■
市場原理主義的に聞こえるかもしれませんが、
実は利益が出る事が、効率化が追求され、一番環境に優しいと言えます。
補助金に支えられた技術やビジネスは不効率で、
LCAを検討すれば、実は環境負荷が大きいと分かるはずです。
(LCA自身、非常にバイアスの掛かり易い評価ですが・・)
私は自然エネルギー反対論者でも、原発推進論者でもありませんが、
現状の自然エネルギブームは、温暖化問題とともに一度終焉すると見ています。
実際に1980年代のアメリカのクリーンエネルギーブームは短期で終焉しました。
やはり、本格的な自然エネルギーの普及は、石油が高騰してからになるでしょう。
■ 人為的な石油高騰 ■
現状、オバマの「グリーン・ニューディール」は掛け声ばかりで、
具体的な動きは見られません。
民主党のゴアの支持母体が原子力団体であったり、
民主党をレアメタルのシンジケートが支持していたりする点を考慮すると、
アメリカ版「グリーン・ニューディル」はスリーマイル島事故以来停止していた、
原子力発電所の建設の再開が主目的でしょう。
又、前時代の遺物と化している送電網の近代化を図る理由付けに使われています。
風力や太陽電池は環境派に対するカモフラージュと、
来るべき石油枯渇に備えた種まきと見るのが妥当かと思います。
もし、アメリカが本気で自然エネルギーに舵を切る時は、
利潤追求の上からも、石油高騰が不可欠となりますから、
中東での戦争を本気で心配する必要が生じます。
石油高騰は現在の所、経済に大きなダメージを与えますから、
可能性としては低いと言えますが、
もしオバマが本気で「グリーン・ニューディール」を推進し始めたら、
我々もそれなりの覚悟を決める必要がありそうです。