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経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

最大進化と絶滅のプロセス

2009-07-17 10:00:00 | 時事/金融危機
■ ゴールドマンサックスが最高益 ■

つい先日まで、アメリカ政府の資本注入を受けていたゴールドマンサックスが、
4-6月期で純益34億3500万ドルを上げ、
注入された資本も返済して、完全復活の様相です。
モルガンスタンレー、JPモルガンも好調で、
シティーバンクやバンカメといった負け組みとの差が歴然としてきています。

アメリカ政府も先の発表で、9年度の成長率を0.1%上方修正し、
一部でアメリカ経済の復活が垣間見られているような印象を与えています。

一方、アメリカ政府は今年末には失業率が10%を越すという予測も発表しています。
失業に伴う個人のデフォルトも増大しており、
もはや金持ちの住宅ローンの破綻額は、サブプライムローンの破綻額を超えています。
商用不動産向けローンの破綻も着実に増えており、
これらが、地方銀行の経営を圧迫しています。

■ 何故ゴールドマンは儲かるのか? ■

リーマンショク以降、投資銀行は商業銀行に鞍替えして、
政府からの資本注入で生き残ってきました。
しかし、看板は架け替えてもゴールドマンは積極的にリスクを取って、
債権や商品などで盛んにトレーディングを繰り返し、
大幅な利益を上げたようです。

世界はお金に飢えていますから、他の金融機関が萎縮している中、
リスクを取りながらも、ハイリターンを期待させるゴールドマンに資金が集中します。
市場は薄商いとなっていますから、大口で取引するゴールドマンは、
市場を思いのままに支配し、充分な価格形成力を持つに至ります。

こうなれば、相場を上げるのも下げるのも意のままです。
結局、上げ相場に寄ってきた小口投資家の資金をかっさらって、一人勝ち状態です。
ギャンブルの世界では、ルールを決めるディラーには決して勝てません。
今の市場は、一部の奔放な資金に支配され、
彼らがルールを決めているようなものですから
当然、個人や中小の資本では立ち打ち出来ません。

■ 小口投資家とは我々自身である ■

小口投資家と言うと、デイトレーダーなどの個人の投資家を想像しますが、
彼らは大口投資家の周りに群がるハゲタカの様なもので、
血の匂いを嗅ぎ付けて群がり、危険が迫れば逃げて行きます。
その際、多少の腐肉をかじり取る事も忘れません。

一方、我々が銀行に預けて銀行が運用する資金や、
瀬戸内海の島に住む老人が年金を溜めて購入した投資ファンドや、
日本国民の年金は、運用損失を積み上げています。
自分では、金融市場に投資しているなどと気付かない所で、
われわれ一般国民は日々負け続け、日本のお金はアメリカに流出し続けています。

それではゴールドマンの商品を買えば安心かといえば、
一般向けの投資ファンドの運用実績はそれ程高くありません。
むしろ、大口の顧客が利益を上げる為のコマセの様な存在です。
但し、余程の事が無ければゴールドマンは倒産しないという安心感はあります。

例えば、リーマンブラザーズが倒産した時、
リーマンのCDSの売り手であるAIGは、支払い不能に陥りました。
このCDSの買い手がゴールドマンでした。
ゴールドマンはアメリカ政府に働き掛けて、
180億ドルの資本注入をAIGに行わせ、
見事にリーマンのCDSの保証金を手にししています。

これらのCDSにゴールドマンがどの位の期間保証料を払ったかは定かではありませんが、
CDSのシステムが出来てから間もないので、
ゴールドマンは投資した金額以上の保証金を手した事は確実でしょう。

アメリカの財務省はサマーズやガイトナーなどゴールドマンOBに牛耳られています。
でしから、AIGの支援はスピーディーに行われたと言われています。

■ ゴールドマンの投資プログラムが流失 ■

先日、ゴールドマンサックスの取引プログラムが流失しました。
ゴールドマンのロシア系の社員が持ち出し、
ドイツのサイトから流失した様です。

このプログラムはゴールドマンの投資手法が網羅されており、
もし、このプログラムを元に複数の大口投資家が投資を始めれば、
ゴールドマンの一人勝も危うくなると言われています。

尤も、考え様によっては、市場を支配する資金が増えるとも言えるので、
益々ゴールドマンを益する状況とも言えるかもしれません。

■ 崩壊するアメリカと、復活する金融資本 ■

この様に、投資銀行が復活して、わが世の春を謳歌する一方、
アメリカの国家と地方の財政は破綻しつつあります。
又、失業率の上昇や、製造業の不調は、庶民の生活を一層苦しめています。
結局、儲かるのはリスクを取る事の出来る富裕層だけという状況になっています。

市場原理主義の立場からすれば、このままアメリカ経済が全体的に崩壊するよりも、
一部の業界や人が高い収益を上げれば、
税収や消費という形で、その利益はアメリカの社会を潤すという考え方でしょう。

しかし、資本が国境を軽々と越境する時代に、
はたして今のアメリカは有望な投資先となるでしょうか?
答えはNOです。

現在、ゴールドマンなど好調な銀行が政府の後押しで稼ぎ出した利益は、
より大きな利益を求めて、新興国市場や商品市場に流れ込んでゆきます。
新興国のプチバブルや、原油などの商品市場の高騰は、
物価の上昇となって、アメリカの庶民の生活をジワジワと圧迫し、
アメリカの貿易収支の赤字を拡大させてゆきます。

■ アメリカ国民とアメリカの国際金融資本は違う ■

オバマが発するメッセージは、アメリカを救おうとする意気込みが感じられます。
しかし、一方でゴールドマンを始めとする金融資本家達は、
アメリカを食い物にしても、自分達の成長と生き残りに余念がありません。

安い陰謀論にもなりがちですが、
世界の金融市場を支配するのいは、ロスチャイルドやロックフェラーなどの
一部のスーパーパワーです。
ゴールドマンの出資者は、ロスチャイルドです。

同様に、アメリカ連邦準備制度理事会FRBは、
日銀の様な中央銀行とは異なり、金融資本家達が支配しています。
日銀の株主は日本政府ですが、FRBの株主はロスチャイルドやロックフェラーです。
さらに、アメリカよりもヨーロッパの資本比率が高い状況です。

FRBは政府から独立していますが、
ロスチャイルドやロックフェラーからは独立していません。

これらの資本家達やFRBが、アメリカ国民の幸福を本気で望むでしょうか?
アメリカは今まで、彼らの金の成る木であり、集金システムでした。
しかし、今、その木が枯れかけ、システムが崩壊しつつあります。

彼らはどうするでしょうか?
ドルが危ないとなれば、真っ先にドルを手放すのは金融資本家達です。
アメリカ国債が危ないとなれば、真っ先に債権を売るのは中国では無く彼らでしょう。
彼らはそれにより、更なる利益を出すポジションも準備しているでしょう。

ドル以降の通貨体性の構築にしても、
ドルに見切りを付けた金融資本家達が、中国やロシアに入れ知恵をして、
彼らの資金の逃避先を準備しているに過ぎません。

結局、「アメリカ」と「アメリカの金融資本家」は別の存在です。
「アメリカは潰れるハズが無い」でという考え方は間違いです。
「アメリカの金融資本家は潰れるハズが無い」が正しい見方です。

アメリカ国民の「金融資本家」に対する視線にも冷たいものがあります。
「税金を使って、一部の金持ちを助けるのか」という彼らの意見は
ある意味、尤もなことと言えます。
市民生活の崩壊が進行すれば、暴動も置きかねない状況です。
アメリカは陸軍を国内配備して暴動に備えているとも言われています。

■ 利己的な進化は自身をも食い尽くす ■

経済の進化も、生物の進化も、最大限の拡大を目指す事に変わりありません。
増えすぎた種族は限界を超えると、食料の欠如や疾病の蔓延で崩壊を迎えます。
金融市場も同様に、リーマンショックで限界を迎えました。

現状は種の淘汰が進行している状況です。
この様な激変に時代には、巨大で鈍重な固体から倒れて行きます。
シティーバンクやバンカメ、AIGやGMがこれらに相当します。

しかし、一方、これらの弱った獲物を狩って、
屈強な肉食の固体は一時勢力を盛り返します。
いわば、共食いの状況で勝者のみがますます栄えます。

しかし、種全体を支えていた環境が維持不能の状態ですから、
狩りが終われば、一瞬にして勝者は敗者に転じます。
それまでに、次の環境が用意されるのかどうかで、
今後の世界の形は大きく変わるでしょう。

私は悲観論者でも、社会主義支持者でもありませんが、
アメリカの金融資本家達の慎みの無い行動には、怒りを覚えます。

バブル後の失われた10年を、他国に迷惑を掛けずに必死にしのいだ日本人や、
節度ある成長を模索する一部の国々や、
アジアやアフリカの貧しい国々が、
強欲な資本家のとばっちりで苦しむ事は、悲しい事だと思います。