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コンクリートの寿命は50年・・・日本のインフラは高齢化している

2012-12-04 09:50:00 | 時事/金融危機
 


■ 自民党に追い風のトンネル事故 ■

不謹慎な表現になりますが、今回のトンネル崩落事故は、
「国土強靭化」を訴える自民党に「追い風」の様に思えます。

「公共投資を怠ったから、トンネルが崩落した」という印象操作がされるのでは無いでしょうか?

■ 事故トンネルの管理は道路公団の仕事 ■

今回崩落した中央高速道路の笹子トンネルの管理者は道路公団のはずです。
道路公団の財源は、高速道路の通行料ですから、国の公共事業ではありません。

トンネル崩落の原因は、天井から重さ1tのコンクリートパネルを吊っていた
アンカーボルトの劣化と見られています。

しかし、従来、アンカーボルトの劣化による落下事故は、
パネルが単体で落ちるような事故になるはずで、
その時点で、アンカーの総点検が行われて、大規模事故が未然に防がれます。

以前、首都高の高架橋をジョイントする高強度のボルトがせん断、落下する事故が発生しした。
道路公団は、全てのボルトを、超音波診断し、
せん断の恐れのあるボルトを交換しました。

さらに、交差点や、下を一般道が走っている様な箇所では、
高速道路の下側をカバーで覆い、落下物が下に落ちる被害を未然に防いでいます。

この様に、道路公団の事故対策は、ある意味徹底しており、
今回の事故も予兆があれば、大規模事故に至る前に防げた可能性は高いと思われます。

■ 全国に大量に存在する築40年以上のトンネルや橋梁 ■

一方で国や地方自治体が管理する道路(国道や県道)には
築40年以上を経過して、コンクリートや鉄材の強度の劣化した
トンネルや橋梁が沢山存在します。

日本全国には築40年を経過したトンネルが3200本、
築30年を経過したトンネルが4800本もあるそうです。
これらの多くが、修繕費が無い為に放置されている様です。

日本は高度成長期に多くの道路が作られました。
山間部の道路には多くのトンネルや橋梁が存在します。

日本は人口動態と同様に、「インフラの高齢社会」を迎えています。
今後、次々に寿命を迎えるトンネルや橋梁やダムなどのインフラの
修繕や改修、さらには、立替が必要になります。
これは老人の医療費が増大する事に似ています。

インフラ高齢化国家日本は、必要なインフラのメンテナンスコストが増大するので、
新規のインフラを整備する余裕は既に少ないと思われます。

今後、この傾向は益々顕著になるはずです。

■ 漏水が激しい東京の地下街 ■

東京の地下街を歩けば、至る所で漏水が発生している事に気付くはずです。

地下街が建設された当時は、工業用の地下水の汲み上げで
東京の地下水位はかなり低くなっていました。
ところが、地盤沈下が発生した為に地下水の汲み上げが制限されたため、
東京の地下水位は、徐々に上昇を初めました。

震度の深い東京駅の総武線地下ホームや、
上野駅の新幹線地下ホームは、
地下水による浮力で、ホーム自体が浮き上がってきています。
それを、アンカで固定している状態です。

大深度地下で無くとも、震度の浅い地下街の漏水も増えています。
東京駅の地下コンコースは、内装を改修しても直ぐに天井から漏水して、
一時、天井に醜いビニールシートが貼られ、
そこからビニールチューブで下に置かれたバケツに漏水が誘引されていました。
とても、先進国の中央駅とは思えない光景でした。

今回、東京駅の大改修で、これらの漏水対策もされた様で、
見苦しいビニールシートは撤去されています。

コンクリートは経年劣化します。
100年は耐えられるとされたコンクリートも、
骨材に使われた海砂の塩分で、内部の鉄筋が腐食するなど、
高度成長期のコンクリートの耐久性は100年に満たないと思われます。

今後、全国の地下街で、トンネルと同様にコンクリートが耐久性を失って行きます。
地下街で崩落や陥没事故が発生したら、その被害は甚大です。

■ 「国土強靭化」は、必要性の高いインフラの補修を優先すべきだが・・・ ■

安倍氏を初め、自民党は200兆円の「国土強靭化」計画を発表しています。

これは、いわゆる景気対策なので、
全国的な公共事業のバラマキに陥る可能性が高い政策です。

例えば、山間の小さな村落に繋がる生活道のトンネルが劣化していれば、
誰かが予算計上して、トンネルの補修工事が予算化されます。
橋梁でも同様な予算が経常され、
道路脇のコンクリとで補強された斜面の補強工事も全国至るところで予算化されます。

実際に地方では、斜面崩落で通行止めの道路などが出現し始めています。
交通量の少ない道路は見捨てられ、迂回路に回されるのです。

山間の村落の生活道の保全は、大変重要な公共工事です。
一方で、これらの道路の修繕費は、非常に再生産性の乏しい事業でもあります。

道路やトンネルを修繕した先にある村落では高齢化が進行し、
人工減少の時代にあっては、次第に廃村となる事が予想されるからです。

先祖代々すみ続けた土地に住めなくなる事は大きな問題です。
しかし、効率性の乏しい土地に、全国一律のインフラを整備出来る程、
日本の財政に余裕はありません。

本来、インフラの劣化と、高齢化、廃村化が同時に進行して、
山間の不便な村々から、居住に適さない場所になって行くのですが、
無節操なバラマキが行われると、人の済まない村に続く道路が増える事になりかねません。

■ 「居住に適さない」という判断を行政が下せるのか? ■

高度成長期以前は、これらの僻地と呼ばれる地域の生活は自給自足でした。
車が入れなくても、村から人々が出入りする事は少なく、
背負子を担いだ行商人が、村に必要物資を届けていまいた。

地すべりや、鉄砲水などの被害もあったでしょうが、
人々は経験的に、災害危険地を避けて居住していたでしょう。

ところが、高度成長期にはこれらの村落も経済拡大します。
村に生活道が通り、耕作地が拡大され、
核家族化によって、自然災害の恐れのある場所に住居が建築されました。

災害を防ぐ為に、砂防ダムやダムが作られ、
山肌に張り付く様な、危険な箇所では、
トンネルが沢山作られました。

本来、居住に適さない土地が、
経済成長の恩恵で、公共事業により居住可能地域に変わったのです。

しかし、それを支えたのは、輸出産業であり、生産性の高い都会の労働者でした。
都会で徴収された税金が、地方に多くの道やトンネルやダムを作って着ました。

ところが、バブル崩壊後、日本は低成長時代に突入し、
都会の税収で、地方のインフラの拡充も、メンテナンスも出来なくなってしまいました。

国債を発行する事で、かろうじて維持されてきた地方のインフラですが、
財政赤字がGDPの200%を超える中で、
既に、その維持は限界に達しています。

人間と同様に、国土も抹消から老化が進行するのです。
本来、人工縮小と同時に、放棄されるか、
或いは、昔の自給自足社会に戻ってゆくのが自然の成り行きです。

しかし、自由と平等を謳う日本国憲法の下では、
これらの僻地の住人の権利も平等に保護されなければなりません。

人一人のインフラコストを比較した場合、
都会の住人と、僻地の住人との間には10倍以上の開きがあるはずです。

人工が収縮し、財政が収縮する日本において、
中長期的には、これらの山間の僻地は「居住不可能な場所」になって行くのですが、
行政がその判断をする事はありません。

ダムに沈む村からの住人の退去にも苦労する国柄ですから、
僻地の村を見捨てる事など、到底出来ないのです。

■ 「国土強靭化」は直ぐに行き詰る ■

「国土強靭化」で年間20兆円ばら撒けば、景気が回復すると自民党は主張します。

1) 地方の土建屋が公共事業で道路の補修を受注する
2) 半分はパアーと飲み屋で遣い、半分を従来の生活費に充てる
3) 飲み屋のオバチャンが、今まで買えなかったエアコンを買い換える
4) 地方の潰れかけた電気屋に臨時収入が入る
5) 電気屋は借金を返済しる

例えが悪い様ですが、確かに公共事業が内需を拡大しています。
ところが、そこに見えるのは消費だけの構造です。


生産的なのは、道路の補修だけですが、
これも、道路が繋がる先が自給自足の様な村ならば、
ほとんど、再生産に寄与しません。

結局、公共事業で地方にばら撒かれたお金は、
銀行の預金や、消費という形で、都会に集まってきます。
流通システムが都会の大企業に支配された現代においては、
消費による富の還流は、高速化しています。
従来、地方経済に滞留して、地方経済を活性化出来た消費の連鎖は、
既に、崩壊しているとも言えます。

都会の企業や銀行に集まった資金はどの様に運用されるでしょうか?
多分、企業は借り入れを返済し、内部保留を積み上げるはずです。
そう、結局金融機関に集まってきて、国債購入資金になるのでしょう。

何だか、経済は少し活性化しましたが、
結局、景気が今よりも大幅に好転する様には思えません。

はたして、実際どうなるかは、公共事業をばら撒いてみないと分かりませんが、
経済が活性化しなければ、日本の財政は現在よりも一掃悪化します。

建築業に従事してきた私の経験では、
公共事業が拡大されている間は、そこそこ仕事が増えますが、
公共事業が終了すると同時に、仕事は元の量に減ります。

これこそが、「潜在GDP」と呼ばれる概念で、
公共事業で景気を刺激する事には限界があるのです。

後には前にも増して膨れ上がった財政赤字が残ります。

こうして自民党が主張する「国土強靭化」は、
その額に応じた名目GDPを拡大するだけの効果しか上げられないでしょう。
様は、乗数効果の呪縛から逃れる事が出来ないのではないでしょうか?

「それでも、無いよりはマシだろう」というのが、現在の国民の率直な意見です。
これには、私も同意します。
だって、私だって建築業ですから、仕事は欲しい!!

■ 財政破綻が来ないのならば、自民党の試みは興味深い ■

無責任な話ですが、私は自民党の「国土強靭化」に興味があります。
はたして、こんなムチャクチャな政策で、景気が回復するのか?
もし、日本経済が復活するならば、私は丸坊主になっても良い。(既に坊主頭ですが)


「国土強靭化」が救済するのは「土木業者」がメインの様です。

インフラ事業が縮小された影響で、
橋梁や道路、トンネルや港湾などを整備する土木業者は瀕死の状態です。
さらには、それらの工事に付随するプレキャスト・コンクリートの業者なども
絶命寸前の状態に追い込まれています。

「建設業」は、民間の需要も低調ながら存在しますが、
「土木業」は公共事業が頼りの業界とも言えます。

今回の「国土強靭化」の目的は、どうも「土木業界救済」の意味あいが大きい様です。
「土木工事」は一般的な建設工事と比べて、動くお金の額が違います。

ビルなどよりも、道路やトンエルや橋梁の建設コストは圧倒的に高いのです。
それだけに、「利権」の温床と化しており、
「大規模土木工事」は、有力政治家の資金元となっており、
地方の土木工事は、地方で土建業を営む地方議員などの「お手盛り予算」と化します。

「国土強靭化」などと呼び名を変えた所で、
「土建政党」の自民党のDNAは全く代わらないのです。


おいしい話は、そうそう転がっているハズがありません。
ウマイ話には、だいたい悲惨な結末が待っているものです。

日銀が不景気政策で必至に踏みとどまる「破綻」とい断崖で、
後ろから思い切り背中を押すような自民党の政策の結果が、
ある意味、楽しみでもあり、恐ろしくもあります。