■ 「ラジオ体操第四」が存在していた ■
皆さん、「ラジオ体操第二」って覚えてますか?
ジャンジャカジャン、ジャンジャカジャン、ジャジャジャジャ、ジャジャジャンって、
妙にやる気満々の前奏で始まって、
「さあ体操始めるぞ!!」って気にさせておいて、
いきなりテンポダウンして脱力するヤツです。
ところが、「ラジオ体操シリーズ」に、幻の「ラジオ体操第四」が存在していたらしい。
(何だか、エヴァンゲリオンシリーズみたいでカッコイイ)
この第四、実は難易度が高く、実際にはほとんど行われていない様です。
上に動画を貼っておきました。とくとご覧あれ。
■ リーボックのネット広告 ■
実はこれ、リーボックのTAIKANシリーズというウェアーの広告なんです。
最期に、ウェアーの裾にプリントされた「TAIKAN」って文字がクローズアップされています。
しかし「TAIKAN」というシリーズがリーボックにある事を知っている人は皆無でしょう。
だから思わずgoogleで「TAIKAN」を検索してしまいます。
そして、「ナーンダ、リーボックのプロモーション画像だったんだ」と知るのです。
この広告手法は、ネットならではのものです。
情報が一方的なTVのCFでは、15秒などという短い時間に、
視聴者に商品名とその商品の特徴を伝達する必要があります。
視聴者はCFは好きではありませんから、
スポンサーは有名タレントを起用したり、
奇抜な内容で注意を引き付けたり、
脳裏に焼き付くCMソングを流したりと、
まさに、あの手この手で視聴者にアピールします。
その結果、CF内の情報密度はどんどん高まって行きます。
CFが1本だけならば、それは効果的かも知れません。
しかし、視聴者は次から次に情報量の多いCFを見せられるのですから、
情報は飽和状態になり、
ほとんどの人はCFの間は能が情報のインプットを無意識に制約します。
送り手側の熱意に相反する様に、受け手側をCFを無視するのです。
ところが、このリーボックのネット広告は、
商品やブランドの表出がほとんどありません。
視聴者はこれが広告と気付く事無く、
最期まで、唖然としながらこの映像を楽しみ、
最期にクローズアップにされる「TAIKAN」というロゴに興味を持ちます。
当然、googleで検索するという行動に出ます。
こうして、情報の受け手が能動的に情報にアクセスする切っ掛けを与える事で、
「TAIKAN]という商品への興味の抱き方に違いが生じるはずだと送り手は考えたのでしょう。
■ 情報は「受動」から、「能動」の時代へ ■
さらに私の様にこの映像に興味を持った人達は、
facebookやTwitterでこの映像を紹介したくなります。
こうして、情報の連鎖が発生すれば、莫大な広告費を掛けなくても
多くの人達が「TAIKAN」という商品を知り、
一部の人達は、ネット上に公開されているTAIKANの紹介ページを興味を持って読むはずです。
ネットの普及は「情報の受け手」だった大衆が
「情報の発信者」になるという変化を生みました。
チャットや掲示板という「閉じられた場」からスタートし、
ブログという、「情報量の多いパッケージ」に発展した後に、
Twitterやfacebookといった「情報連鎖が発生し易い媒体」に進化します。
リーボックは、この情報の伝達方法の変化に着目したのでしょう。
「人々の興味を引くもの」をネットに投下すれば、情報は自発的に拡散する。
但し、これで「TAIKAN」シリーズの売り上げが向上するかという問題は別です。
情報感度の高い層に商品を認識はさせられましたが、
そこから先は、商品紹介ページのアピールによって購買衝動に訴えかけるのは
従来のネット広告と大差はありません。
■ ネットは優れた情報を自動選別する ■
様々な試みが試されるネット広告ですが、
ネットに散らばる膨大な情報量の中から、
目的とした情報にアクセスさせる有効な方法が確立している訳ではありません。
アフリエイトなどは、TV番組のスポンサー的な発想で、
定常的にアクセス数が確保されたページに広告を貼って顧客層を待ち受けます。
しかし、TVコマーシャルと同様で、情報が受動的に伝達されるので、
逆に言えば、大衆はともすると貼り込まれた広告を「邪魔」と感じてしまいます。
広告を無視するというTVコマーシャルと同じ拒否行動を取る事が出来ます。
一方、リーボックの採用した手法は、
「ネット情報の自律的選別機能」に着目したものです。
「人々が面白いと感じる情報」は、
Twitterfacebookなどを通じて情報拡散が繰り替えされ
自然と人々の目に触れる様になります。
いれは、井戸端会議などと同様に、「口コミ伝達」の特徴です。
ただ、この方法も、人々がその情報に興味を示すかどうかが不確実です。
当たれば大きいけれど、外れる確率の方が高いとも言えます。
クォリティーだけでは無く、時代との同調性という不確定要素が大きいのです。
ネット広告の市場規模は年々増大していますが、
未だ「大衆商品」を販売する企業にとってはは、
TVのコマーシャルの方が確実に不特定多数に情報伝達が可能な状況でしょう。
■ 「大衆プロモーション」と「プライベート・プロモーション」 ■
上の動画は『DRAGON HOUSE』というアメリカのダンスユニットの映像です。
途中、静止やスローモーションや巻き戻しに見える部分は、
一見、映像編集の様に見えますが、
彼らがリアルタイムで踊っています。
今、この映像が全世界で話題を集めています。
この様に、ネット世界ではある一定以上のクオリティーを持つ情報は、
勝手に表層に浮かび上がってきます。
情報には、自律的峻別という特徴が「うわさ話」のレベルから存在するのです。
このようにインターネットの普及によって、
従来、情報発信の手段を持たない「優れた個人」が注目される時代になりました。
これに注目したのがアーティストの卵達で、
CDの手売りの感覚で、ネットに映像や作品をアップして、
当然、その内容が優れていれば、Youtubeのアクセスが増え、
最終的には、メジャーレーベルと契約したり、スポンサーが付いたりします。
この様に、ネット広告は、コストを掛けずに、当たれば効果絶大という、
良い意味での、情報効果の非対称性が存在します。
これは資金力に乏しい個人や、
大衆を相手にしないニッチなビジネスには有効な広告媒体となります。
■ 「多様化」と「スタンダート化」という相反するニーズ ■
「消費の高度化」は「消費の多様化」と同義とも言えます。
成熟した消費社会においては、消費者の嗜好は多様化するので、
大ヒット商品が生まれ難くなっています。
一方でiPhoinの様な、市場を独占する様な商品も生まれます。
このどちらもが、「情報の濃密化」が生み出した結果とも言えます。
情報量が増えた事で、人々はより自分に合った商品、
より他人と差別化出来る商品を探す様になります。
ファッションが良い例で、多様化、個性化によって
「今年の流行ファッション」などというものが存在しなくなりました。
業界として、雑誌などとタイアップして必死で流行を作り出そうとしています。
「流行」を作る事が、売れ残りを回避する有効な方法になるからです。
皆で同じ物を作れば、ハズレが少なくなります。
しかし、それに対抗する様に、プライベートブランドが様々な奇抜な商品を発表し、
そして明らかに若者は、そちらのファッションに興味を持つ様になります。
一方、スマートフォンは、情報のプラットフォームとて統一した企画が求められます。
デファクトスタンダード化したプラットフォームに便利なソフトが増えるからです。
スマートフォンはブラックベリーなどが先行していましたが、
iPhoneがデザインの洗練さで、売上を伸ばした事と、
根強いApple信者が、便利なソフトを沢山作った事で、
あっと言う間に、スマートフォン市場のデファクトスタンダードの座を獲得しました。
この様に、現代においては、表層的な商品は圧倒的に多様化する一方で、
ベーシックな商品は、iPoneやユニクロのヒートテックの様に、
一人勝ちが生じるという事が一般化しています。
日本企業の衰退は、多様化とスタンダドー化のイニシアチブを取れない事に由来します。
日本の家電メーカは、様々な多様な機能を製品に搭載しましたが、
人々のニーズは、多機能、シンプル、デザイン、耐久性などに分化して、
そのどれもに、ハード的にアピールする事が不可能になってしまいましおた。
iPhoneは、シンプルなプラットフォームを提供し、
デザイン的にも、機能的にもユーザーがカスタマイズする道を選びました。
これが、現在の「多様化とスタンダド化」という消費に対するベストアンサーだったのです、
■ ネット広告はスタンダード化に対応できるのか? ■
ネット広告は多様化に対する対応力は、TVのCFなどよりも優れています。
一方、スタンダードな商品を大衆に告知する方法を確立していない様にも思います。
しかし、iPhoneの成功などを見ると、
ネットでの情報のやり取りが、iPhoneの売り上げに大きく貢献している様にも思えます。
これも口コミ効果なのでしょうが、誰もが良さを認める性能を持つものは、
ネットの最大公約数として、やはり情報有意を獲得する事が出来る様です。
■ ネットは悪い情報も伝達する ■
上の写真は2チャンネルで見つけたものです。
放火による火災で焼失した韓国の国宝、南大門の天井壁画の修復の写真です。
何と、修復どころか、デザイン的にも細部が似ても似つかない物に仕上がっています。
日本人からすれば信じられない事ですが、
彼の国の歴史への敬意が疑われる写真とも言えます。
しかし、こんな情報があっと言う間に拡散するのもネットならではとも言えます。
従来のメディアでは、話題になるまでは、こんな情報は伝えられる事はありませんでした。
この様に、ネットは良い情報も、悪い情報もあっと言う間に拡散させます。
ネット広告の良い面ばかりがクローズアップされますが、
マイナスの広告効果も高い事に注意が必要です。
ネット時代、企業には多くの事が求められています。
商品の開発力や技術力、デザイン力もさることながら、
コンプライアンスやコーポレート・ガバナンスにも厳しい視線が注がれます。
企業も、政治も、個人も、まだまだネットとの付き合い方を試行錯誤する時代が続くのでしょう。