■ 米国債の保有を減らす債券ファンド ■
GS 毎月分配型債券ファンド「妖精物語」 2011年12月末
GS 毎月分配型債券ファンド「妖精物語」 2012年11月末
しばらくご無沙汰していた、GSの毎月分配型債券ファンド「妖精物語」の定点観測です。
昨年12月と、今年の11月の比較になります。
1) 米国債がチャートから消えた
2) モゲージ債(MBS)の保有が大幅に増えた
3) ヨーロッパの堅実国の国債保有が増えている
債券ファンドは運用実績が問われますから、
毎月チョコチョコとポートフォーリオを組み替える必要があります。
4) 昨年末はユーロ危機の盛り上がりもあって、リスク回避の為に米国債の保有を高めた
5) FRBのQE3発表前からこのファンドはMBSの保有を増やしていた
6) MBSはFRBが買い取りを保障しているので、安心して保有出来、米国債よりも金利が高い
興味深いのは、ドイツ意外のヨーロッパの堅実国の国債でも、
流動性の高い残存の短い国債を中心の運用になっている事です。
そして、何故か韓国国債が3年以上も居座っている・・・。
2014年9月が償還時期・・・。
■ 住宅市場の回復をどうにかして演出したい米国 ■
アメリカは住宅価格が回復すれば、個人消費も回復します。
ですから、どうにかして住宅市場を回復させたい。
QE3でFRBは月々400億ドルずつ、無期限にMBSを買上げますが、
これも、住宅市場に住宅に資金を提供する為です。
1) 個人が住宅を購入する
2) ローンの貸し手は銀行
3) 銀行は住宅債権を、ファニーメイやフレディーマックに売却
4) ファニーメイやフレディーマック、あるいは銀行自身がMBSを組成
5) MBSをFRBが買い上げる
こういう循環が出来上がっています。
銀行への貸し出し金利よりも、住宅債権の買取金額が上回れば、
銀行は労せずして、利益を上げる事が出来ます。
リスクは全てFRBが丸抱えする事に・・・。
ここまでやっても、住宅市場はなかなか改善しません。
当たり前と言えば当たり前です。
アメリカの住宅価格は戦後、右肩上がりに上昇し続けました。
無理してもローンを組んで住宅を購入すれば
住宅価格の上昇によって、あらたな担保が生まれ、
車を買ったり、様々な消費が出来ました。
ところが、リーマンショックによって米国民は住宅価格が下落する事を知ってしまったのです。
これは、バブル崩壊で日本人が体験した事と同じです。
生き物は、痛い経験から学習します。
アメリカ国民は、住宅ローンの恐さを学習してしまったのです。
その様な国民に対して、低利でローンを提供すると甘言を呈しても、
おいそれとは人々は誘いには乗りません。
まして、リーマンショックの精算すら済んでいない状況で、
誰がバラ色の将来を想像して、住宅ローンなど組むでしょう。
まして、FRBの金融緩和の副作用で、将来的な金利上昇が予想される中で、
変動金利でローンなど組んだ日には、破綻が約束されている様なものです。
確かに最近、住宅市場に薄日が差して見えますが、
これだけジャブジャブ資金供給して薄日程度では、
ちょっと北風が吹けば、雲の切れ間は直ぐに塞がってしまいます。
ケースシスラー指数が悪化し始めたら、アメリカの金融界はパニックを起こすでしょう。
■ 既にアメリカの実体経済は二番底の様相を呈している ■
アメリカの消費指数は今年後半から再び下落の傾向を顕著にしています。
アメリカ経済はマスコミの報道とは反対に、
二番底に入りつつあります。
失業率の改善は、まともな就職を諦めた人達が、
パートタイムジョブに付き始め事と、
就職を諦めた人達が、労働市場から退出した事にる「偽りの改善」です。
可処分所得が低下しているアメリカで、
消費が回復する事はありません。
当然、景気回復には程遠いのです。
■ リーマンショック前夜に酷似してきた世界 ■
最近の世界的な株式市場の回復は実体経済の回復を伴いません。
ヨーロッパもアメリカも日本も中国も、実体経済はボロボロです。
しかし、世界の中央銀行が狂った様に発行するマネーは、
金利を求めて市場を徘徊します。
新興国の隆盛で、旺盛な資源消費を見込んで現物市場に流入していたマネーは、
世界経済の失速による生産の低下によって、一気に現物市場から流出しています。
それらの資金が、株式市場を買い上げているのでしょう。
QE3が実施された事により、リスクの意識が低下しています。
ヨーロッパの危機は相変わらずですが、人々はユーロリスクに慣れっこになっています。
ここに来て、安倍総裁の金融財政政策を材料に、日本株が買われています。
日本株は不当に安かったので、一気に1万円台を回復しています。
しかし、中国経済の失速が確実になるなど、
世界経済に明るい材料は見当たりません。
結局、行き場を失ったマネーが、株式市場に集まってきているだけです。
何か、リスクが一つ顕在化すれば、
これらの資金はリスクを回避して、一気に米国債や日本国債やドイツ国債に逃避します。
アメリカで昨年8月、米国債の発行上限問題が解決した後、
S&Pが米国債を格下げしたにも関わらず、
株式市場の資金が一気に米国債市場に向いました。
結局、市場のプレーヤー達は、資金移動によって利益を確保していますから、
状況が少しでも変化すれば、一気に資金は移動します。
「先に逃げたヤツが勝ち」という単純なルールに支配される市場は、
決して安定することがありません。
■ 「財政の崖」回避で、米国債市場への資金移動が始まる? ■
市場が次に狙うイベントは、「財政の崖」の回避でしょう。
米国債市場に一気に資金移動が生じ、
買い上げられた株価が下落すると私は予想します。
ダウが下がれば、日経平均も連動して下落します。
ファンド勢は、売る気満々で、日本株を買い上げているのでしょう。
まあ、当たらないといわれる人力予測なので、あまり当てにはなりませんが・・・。
<追記>
田中宇氏の最新記事によれば、
JPモルガン曰く、「現在米国で新規に発行される債券の9割は連銀が買い取っている」とあります。
若干の誇張はあるのでしょうが、金融機関が新規国債などを殆ど購入していない様です。
既に、米国はFRBの無制限の緩和無くしては債権市場を維持出来なくなっており、
市場が米国債やドルをどこまで信用し続けられるかは、我慢比べの様な状況なのでしょう。
尤も、池に住む魚が、自ら池の栓を抜くとも考えられず、
崩壊は思わぬ所から徐々に始まって、
気付いた時には池の底が一気に抜ける様な状況になるのではないかと思います。
そして、誰かが絶対に大儲けをし、そして大多数の人達が全てを失うのでしょう。