■ ヘッジファンドは安定的な保有者では無い ■
現在、日本国債の海外保有高は100兆円程度。
その内の40兆円から70兆円程度をヘッジファンドが保有していると見られています。
残りは、諸外国の中央銀行が保有していますが、
この中には中国の中央銀行なども含まれます。
最近、ヘッジファンドは日本国債の保有を拡大しています。
彼らは残存年数の短い国債を購入して、堅実に金利を稼いでいます。
しかし、一たび日本国債の需給関係が変化すれば、
ヘッジファンドは一斉に日本国債を手放す可能性があります。
例え満期保有で多少の金利が稼げたとしても、
円安になれば、為替差損が発生するからです。
■ 「地獄の投資」と呼ばれる「日本国債売り」 ■
かねてより国内保有率の高い日本国債を売り崩す事は不可能と言われて来ました。
日本国債売りに挑戦したヘッジファンドの経営者達が失敗して自殺する事から、
「地獄の投資」とも「後家作り」とも呼ばる危険な賭けとされてきました。
日本国債の一日の市場での出来高は平均で30兆円程度です。
ここに、5兆円や10兆円程度の売り浴びせがあっても、
日銀や国内の金融機関が買い支えてしまいます。
邦銀が最も恐れるのは、日本国債の値下がりで金利が上昇する事です。
ですから、邦銀は必至に日本国債を買い支えます。
■ ヘッジファンドが再び「日本国債売り」を狙っている ■
ヘッジファンド勢は再び「日本国債売り」を狙い始めています。
2%金利が動くだけで、これ程儲かる投資は無いからだと言います。
そして、テクニカル的にはそれが可能だと彼らは主張します。
仮にヘッジファンドが70兆円の日本国債を保有しているとして、
はたして、一気に70兆円が売り浴びせられた時、
日銀と邦銀はこれを買い支えられるのか?
ヘッジファンド勢は、日本国債を暴落させるとは言っていません。
2%金利が上昇するだけで、巨大な利益が出ると主張しています。
はたして、この利益はどこから生まれるのでしょうか?
多分、空売りと連動するお得意の戦略がとられるのでしょう。
CDSと連動さ、スプレッドの拡大で危機を煽る戦略も取るでしょう。
実弾を70兆円も持っていれば、金利が十分下がった所で(国債価格が値上がりした所)
日本国債を一斉に売却して利益を確定し、
さらに、空売りで利益を拡大します。
2%程度の金利上昇があれば、空売りで莫大な儲けが出るのです。
ヘッジファンド勢は日本国債を破綻させる必要はありません。
一時的な金利変動さえ演出出来れば、それで十分儲かるのです。
■ 金利の上昇は直ぐに収まる ■
ヘッジファンドの売り浴びせで、一時的にあは日本国債の金利は上昇しますが、(国債価格の下落)
日銀と邦銀の買い支えで、直ぐに金利は低下するでしょう。
ここで邦銀が慌てて日本国債を売却したら、
日本国債が本当に暴落してしまいます。
ですから、邦銀は資金の許す限り国債を買い支えるはずです。
■ 「叩けば儲かる日本国債」に変貌するかも知れない ■
今までは「地獄の投資」であった日本国債売りですが、
ヘッジファンドの売りが金利変動を演出できる様になれば、
「天国の投資」に豹変します。
ヘッジファンドは、日本国債を売り浴びせて利益を確定した後に、
価格の下がった日本国債をすぐに買戻して、次の売り浴びせの機会をうかがいます。
これはスペインやイタリア国債で繰り返されている事態です。
国債の暴落を演出すれば、ECBが銀行を通していくらでもお金をバラマイテくれます。
それを彼らは、美味しく頂いているのです。
■ 市場を不安定にする「規模」が必要であった ■
かつて日本国債売りが「地獄の投資」と呼ばれたのは、
ヘッジファンドが売り浴びせても、金利変動が起こらなかったからです。
これは、ヘッジ勢の売却額に対して、日本国内の購入資金が圧倒的に大きかったからです。
しかし、日本国債の残高は当時と比べて格段に拡大しています。
同じ「海外保有率10%」であっても、保有額は100兆円に達しています。
これは、国内の資金量に対して、充分な脅威になるはずです。
最近のヘッジ勢の発言は、日本国債の金利をテクニカル的に変動出来る自信の表れです。
そして、彼らの目的はあくまでも2%程度の一時的な金利変動。
日本国債を暴落させてしまっては、日本を強請(ゆす)れなくなります。
何度も売り浴びせて、そして何度も利益を出すのが彼らのやり方です。
■ 既に日本株はヘッジの鴨にされている ■
この手法は既に日本株で実行されています。
日経新聞は未だに、「円高で輸出企業を中心に日本株が売られ」とか
「円安で輸出企業株が買われ」などと寝ぼけた記事を載せています。
1) ヘッジ勢が株安の時期に輸出株を中心に日本株を買い込む
2) 円高になった所で、日本株を売却する
3) 日銀が日本株を買い支える
4) 為替市場でヘッジ勢が円安に誘導
5) 円安に乗じて、価格下落の大きい輸出企業を中心に株を買い戻す
6) 円高に戻る時点で、為替市場でもう一儲け
これはファンダメンタルとテクニカルの巧妙な組み合わせです。
ファンダメンタルは円高。
FRBがドルを大増刷する限り「円高基調」は変わりません。
テクニカルは為替相場の操作と、株の売買。
輸出株は円相場に敏感なので、利益を拡大します。
(ここで言う所のテクニカルは、厳密な意味での市場のテクニカルでは無く、
テクニカルを誘導する為の仕込みといった意味合い)
■ 既に日本株市場は、ヘッジファンドと日銀による相場 ■
日本企業の決算期には銀行と日銀が日本株を買い支えます。
ヘッジファンドもこれに先んじて日本株を買い込んでいます。
そして、決算期が過ぎれば、円高を演出して日本株を売り抜ける・・・。
既に、これは風物詩の様になっていて、
日本の株式市場は、ヘッジファンドと日銀の相場と化しています。
■ 国債増発を誰が購入しているかに着目すべき ■
自民党政権の成立が確実視されていますが、
新規に発行される国債を誰が買うのかに注意が必要です。
既に近年、国内に資金余力が乏しく、日本国債の入札の海外勢の比率が高まっています。
安倍総裁が国債増刷と金融緩和を政策の両輪としているのは、
国内の国債購入余力を拡大する目的があるのでしょう。
■ 今回も「地獄の投資」で終わるのか? ■
ヘッジファンド勢は日本国債売却のタイミングを虎視眈々と狙っています。
対する日銀と財務省は、鉄壁の防御でこれ防ぐかと言えば・・・
もし、安倍政権と日銀や財務省の対立が深まれば、
日銀も財務省も、ヘッジファンドの攻撃に抵抗しない可能性もあります。
金利上昇をあえて放置して、
安倍政権の危険な賭けの弊害を明確にすると共に、
財政拡大路線を一瞬にして葬り去るかも知れません。
安倍自民党と、日銀と財務省のバトルが楽しめるかも知れません。
■ 何事にも限度がある ■
問題の本質は、中央銀行の供給し続けた過剰流動性が
海外に、これだけ大きな国債保有勢力を作ってしまった事。
日本国債は円でしか買えないので、これは日銀の緩和政策の弊害とも言えます。
結局、どんな世界においても、限界を超えると弊害は出て来ます。
薬の過度の服用が健康を害する様に、
国債の過度な発行や、過度な金融緩和が経済に影響を及ぼさない訳が無いのです。
この限度にチャレンジする自民党の政策は単なる無謀なのか、
それとも、国債や通貨の信用は意外にも強いものなのか?
私は、日銀を含めた世界の運営者に、金利上昇というお灸を据えられるのではないかと疑っています。
一瞬でも金利が2%上昇すれば、邦銀は皆真っ青になりますから・・・。
或いは、国債の大増刷と日銀の緩和拡大が容認される様ならば、
裏からアメリカに利益が供与される何等かの仕組みが存在する事を疑います。