行政区単位GDP順位 ２０１２
国別GDP予測 ２０１２
■ 国家並みのGDPを有するのに盛り上がらない東京都知事選挙 ■
東京都知事選が終盤を迎えていますが、細川氏というネタはあるものの、自民党と公明党が推薦する舛添氏が優勢の様です。
都民の関心は雇用や賃金、福祉や医療や教育にあるので、利益誘導型の盤石な選挙組織を持つ自公は有利となります。
ところで、東京のGDPが世界の都市で一番大きい事をご存じでしょうか？（ただ、２０１２年のデータなので、現在の為替レートでは順位は下がっているかも知れません。）
国別のGDPと比較しても、世界１３位に入ってしまいます。
大阪も検討していて、都市では世界７位。国別で比較しても３０位以内には入りそうです。
そんな国家レベルの都市の首長選としては、東京都知事選挙は盛り上がりに掛けます。
■ 日本の財布としての東京都 ■
東京都のGDPが巨大なのは、大企業の本社が集中しているからに他なりません。全国展開している企業が稼ぎ出す収益が東京に集まって来ます。
この収益は税収として都が吸い上げ、都民の生活向上に使われるだけでなく、財政が厳しい地方に配布されています。
東京都が手放す税収、１千億円か 格差是正で地方へ
2013年12月9日16時53分 朝日新聞
＜引用開始＞
来春の消費増税にあわせ、政府・与党が検討している自治体の税収格差の是正措置で、東京都が手ばなす税収が約１千億円になる見通しになった。財政力が弱い自治体に配る「地方交付税」の原資に振り向ける。自民党の税制見直し作業で固まった。
来年１０月以降、企業が都に納める「法人住民税」のうち約１７００億円を国が吸い上げる。一方、２００８年度に導入した「地方法人特別税」を通じた別の格差是正で、都が手ばなす税収を７００億円減らす。この地方法人特別税については、１２日にもまとまる与党税制改正大綱で廃止を含めた見直しの検討を盛る。ただ、具体的な方向は示さない。
＜引用終わり＞
都民からすれば一見不公平に思える税収の地方分配ですが、税収の元となる利益は全国津々浦々から東京本社に集まって来ますから、これを地方に還元する事は当然とも言えます。
例えば、地方に大型の商業施設が進出して、地方の零細のスーパーや小売業者を淘汰します。その売上は東京に集まって来るので、これを地方に還元しなければ、地方はどんどん衰退してしまいます。
■ ユーロ危機と同様に共通通貨の宿命 ■
これとは別に、地方の住民の預金も、利益の機会を求めて利潤率の高い東京や大阪などの大都市に集まって来ます。
せっかく税収を再分配しても、地方のお金は直ぐに東京に集まってしまうのです。これはユーロ危機における南欧諸国とドイツなどの関係に良く似ています。
■ グローバルな競争で勝ち抜く為に ■
現在の世界はグローバル競争時代です。少しでも高い生産性を求めて、少しでも賃金の北緯国に資本も企業も流出して行きます。
一方、大都市はより「魅力的な都市」である事が、より多くの資本を集める為に重要になります。ビジネスのしやすい環境や、交通や都市インフラの整備。空港の利用のしやすさ。治安や景観。そして、法人税の安さなどです。
シンガポールや香港、上海やソウルなどが熾烈な競争を繰り広げるアジアにおいて、都市間の競争に勝つ為には、「重荷」が少ない方が有利になります。
「重荷」とは「地方」であり「福祉の対象者」です。
ですから、国民の平均年齢が若く、山手線の内側程度の面積のシンガポールなどは正に理想的な都市国家として、今後の競争を有利に進める事が出来ます。
逆に東京は重荷を沢山負っているので、不利な戦いを求められる事になります。
■ 大阪都構想の意味 ■
東京でも昔から、「東京の税収は東京の為に使うべきだ」と主張する人は少なくありません。しかし、政治家レベルになると、そんな事を出張する人は途端に少なくなります。東京の税収が全国の人達に支えられている事を理解していますし、中央官庁の御膝元で声高に叫ぶ事でもありません。
しかし、橋下大阪市長は、大阪都構想で大阪の財政の裁量性を拡大する様に要求するはずです。これは大阪が今後グローバル社会で生き残れる都市になるかどうかに大きく関わって来ます。
グローバルの視点から見ると、「都民の生活がーーー」という選挙戦を繰り広げる東京よりも、今後の都市のあり方を視野に入れた大阪の方が断然面白い選挙戦だと言えます。
ただ、「大阪の税収は大阪で使う」とは大々的に言う事は出来ないので、二重行政の廃止による効率化が前面に押し出され論点がボケてしまっています。本来は「都」に昇格する事で、特区としての裁量を拡大する事こそが目的なのでしょう・・・。
日本を、いえ世界を代表する２大都市の選挙戦ですが、争点は大きく異なるのではないでししょうか。