■ 日本株は売られ過ぎでは無いのか? ■
日本株の下落が止まりません。
極端に円高に振れている訳ではありませんので、為替に連動した動きとは異なる様です。
同時に新興国通貨も下落しており、FRBのテーパリングによるリスクオフが起きていると解説されています。
従来は新興国からリスク回避した資金は、安全資産としての円相場を押し上げるでので、円相場に上昇圧力が掛かりますが、ドルもユーロも昨年よりは安定しているので、円高は限定的です。
では、何故、日本株がここまで売られるのでしょうか?
■ アベノミクスから興味を失った? ■
2011年11月来の日本株の上昇は、日銀の緩和期待と円安調整に後押しされた値上がりでした。買い上げていたのは外資です。
時に、ヘッジファンドなど短期の投資家は、アベノミクスによる回帰回復などという不確定な要素に期待した訳では無く、単純に日銀の金融緩和に反応して日本株を買い上げていました。実際に日銀が異次元緩和を打ち出すのは2013年4月からですが、株式市場は緩和期待に反応しています。
一方、短期の投資家は、売って儲けてナンボですから、日本株を売り抜ける機会を探していました。昨年5月の一時的な下落では、一部のヘッジファンドが見事に売り抜けています。しかし多くの外国人投資家は日本株投資を継続したので、15兆円程の買い越しとなっていました。
昨年5月までの上昇相場を支えていたのは外資中心で、日本人はむしろ塩漬株を処分していたと言われています。しかし、昨年後半からメガバンクなども国債投資から株式投資にウエイトを変更すると発表するなど、日本人のお金が徐々に日本株を買い支える様になっていた様です。
特に、昨年後半から年末にかけては、下がり掛けてはジリジリと上昇する相場が続いており、外国人が徐々に売り抜けて、それを日本人が買い支えている様な印象を受けていました。
要はヘッジファンドを中心とした海外の投資家達は、アベノミクスを信用していた訳では無く、アンダーウェイトだった日本株の上昇の切っ掛けとして捉えていたに過ぎません。消費税増税で4月からの景気失速が確実な状況で、日本株の美味しい時期は過ぎたと判断したのかも知れません。
■ 日銀の追加緩和のおねだり ■
日本株がここまで売られる背景には、「日銀の追加緩和のオネダリ」も無視出来ません。
リーマンショック以降、世界の中央銀行の発行する緩和マネーはヘッジファンドなどの資金調達コストを引き下げていたはずです。ヘッジファンド自体は中央銀行から直接資金調達は出来ませんので、ゴールドマンサックスやJPモルガンなどの旧投資銀行が彼らに資金を提供しています。
これらの銀行は、FRBのテーパリングの開始によって泡銭が少し減少しています。FRBの低金利政策自体は継続していますが、不良債権化したMBSをFRBに売りつけるビジネスモデルは今後縮小して行きます。
そこで期待されるのが、日銀の緩和拡大です。
日銀自体もヘッジファンドなどに直接資金を提供する訳ではありません。外資が日本国債を大量に保有している訳でも無いので、資金の流れは、日銀が日本で営業する海外の銀行に提供した資金が流れたり、日本の金融機関が米国に投資した資金が回り回って金利を低下させているのかも知れません。
いずれにしても、日本株を過剰に攻撃する事で、日銀の緩和拡大をリスク市場は期待しているのかも知れません。消費税増税による景気の失速に上手くタイミングを合わせて日銀を追い込む作戦でしょうか?
■ FRBはテーパリングを粛々と進めている ■
一方、FRBは市場の混乱など無視するかの様にテーパリングを粛々と進めています。緩和マネーは徐々に減ってきていますが、市場がパニックを起こす様な減り方でも有りませんし、低金利の資金供給は依然継続されています。
一時は上昇していた米国債金利も、リスクオフの流れと共に低下しています。
■ 新興国危機は新興国投資から米国債への資金還流を生んでいないか? ■
金融緩和の拡大を促す日本株への攻撃とは異なり、新興国危機は米国債への資金還流が目的で仕掛けられたのでは無いかと私は考えています。(根拠など有りませんが・・・)
新興国から急激に引き上げられた資金の一部は、毛部式市場も値下がり傾向なので、とりあえず流動性の高い米国債市場に流れ込んでいるはずです。テーパリングの開始で上がるかと思われた米国債金利は低下気味です。
新興国に投資される様なリスクを選好する資金は、危機が去れば再び利率の高い(リスクの高い)市場に投資されるでしょう。それまでの一時的な対比場所として、流動性の高い米国債は理想的です。
本来2月7日の債務上限再引き上げ問題で米国債金利は上昇するはずですが、世界的なリスクオフの流れによって金利は逆に低下しています。
似た良いな事はQE1やQE2の終了時にも、中東当たりのリスクが意図的に煽られた事などから、新興国危機の原因は米国債の防衛にあると私は妄想しています。
■ ジレンマの解決を要求される出口戦略 ■
現在の金融市場は低利で供給される緩和マネーを新興国やリスク市場で運用して利ザヤを稼ぐ事で成り立っています。ヘッジファンドや旧投資銀行はこれによって巨利を上げ、リーマンショックの損失を埋めています。
このモデルの問題点は二つあり、供給される資金の金利が上昇したり、供給される資金量が減ればリスクを取り難くなります。
もう一つの問題点は、いつまでもリスク市場に過剰な資金が流入し続けると、必ずバブル化してそれが弾ける事です。
FRBやECB、そして日銀はこのジレンマを解決する事が求められていますが、「市場との対話」などで解決するとも思えません。
そもそも相反する事項だからジレンマと呼ばれるのであって、両者を同時に満たす事は出来ません。
現在FRBは出口戦略に着手していますが、日銀のバックアップ無くしてはその達成は難しく、日銀の出口こそが金融崩壊のタイミングとなるのかも知れません。ただ、日本の財政を考えると、日銀の量的緩和に当分出口は訪れそうにありません。
消費税増税の強行も、景気を犠牲にして量的緩和を継続・拡大する為の口実なのかと疑っています。こうして、2年後か5年後に「黒い白鳥」が現れるまで、テールリスクは拡大して行くのでしょう。
本日も朝から妄想三昧でした。