■ 米国債をベルギーに移したロシア? ■
ウクライナ問題でロシアと欧米の対立が深まる中で、ロシアが保有している米国債が売却されたのでは無いかとの憶測が流れていました。実際にロシアはン米国債保有高を減らしています。(153.0→100.4・単位10億ドル/前年3月期比)
ロシアが米国債を売却したならば、米国債価格が下落(金利は上昇)しても良さそうなものですが、相場は安定していました。
実は時期を同じくしてベルギーの米国債保有高が急増しています(188.4→381.4)・単位10億ドル/前年3月期比)。これによってベルギーは世界三位の米国債保有国に躍進しています。
ちなみに今年3月時点での世界の米国債保有国上位は次のようになっています。。中国1272.1 、日本1200.2、ベルギー381.4、カリブ海の金融センター312.5、石油輸出国247.4、ブラジル245.3、台湾176.4、英国176.4、スイス175.7、香港155.7、ルクセンブルグ145.1 (単位10億ドル)
この件に絡んで、ロイターに次ぎの記事が出ています。
「ベルギーの米財務省証券保有急増、ユーロクリアが関連性指摘」(ロイター 5.16)
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPL3N0O240F20140516
<全文引用>
[16日 ロイター] - ベルギーに本社を置く清算機関ユーロクリアは16日、ベルギーの米財務省証券保有高が急増していることについて、同社の取引が関係している可能性があるとの見方を示した。
米財務省が前日に発表した3月の海外投資家による対米証券投資統計によると、ベルギーの米財務省証券保有高は3814億ドルと、前年8月時点の1668億ドルから大きく増加し、中国(1兆2721億ドル)、日本(1兆2002億ドル)に次ぐ3位に浮上した。
ユーロクリアの預かり資産は約24兆2000億ユーロ(33兆ドル)。同社は90カ国以上に及ぶ2000社を超える金融機関と取引がある。
ただユーロクリアの広報担当者は、米財務省証券を保有する顧客との取引が急に活発化したかについてはコメントを控えた。
<引用終わり>
1) FRBが管理していたロシアの米国債が激減した
2) ベルギーのユーロクリアが同額程度の米国債保有を増やした
この2点から、ロシアがFRBに預けていた米国債をベルギーのユーロクリアに移したのでは無いかとの憶測が流れています。
■ ユーロクリアって? ■
ところで、国家レベルの米国債を扱うユーロクリアっていたい何なのでしょう。
「証券投資用語辞典」より
http://secwords.com/%E3%83%A6%E3%83%BC%E3%83%AD%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%82%A2.html
<全文引用>
ユーロクリア(Euro clear)とは、1968年にモルガン銀行が設立したユーロ市場における集中決済機構のこと。現在はマーケットを構成する参加者が出資する別会社が運営しており、モルガン銀行ブリュッセル支店が業務を代行している。
無記名式のユーロ債、ユーロCD等を中心に取り扱い、証券決済・保管、新発債の配分、証券貸借、銀行業務を行う。決済は、参加者がモルガン銀行に設けた資金口座、証券口座を用いて決済日前夜に振替決済を行う方法をとっており、資金と証券の同時決済によるリスク軽減、証券貸借や資金の当座貸越による円滑な決済サービスが特徴である。
このほかに、CEDELも同様のサービスを行うが、両機関は相互に自己の資金、証券口座を有しているため、それぞれの参加者間で決済を行う場合には両システム間の橋渡し(プリッジ取引)が行われている。
<引用終わり>
幾つかのブログなどを拝見すると「ロシアがユーロクリアに米国債を預けた」という表現をしています。
何故、ロシアは米国債を売却せずに、「預ける」様な事をする必要があるのでしょうか?
■ 各国中央銀行保有の米国債はFRBに預けられている ■
ここで興味深いのが、各国中央銀行の保有する米国債がFRBに預けられているという事です。現在の米国債は電子化されていますから、かつての様に証書が金庫に保管されている様な事は無いのですが、一応、電子化された債権の所在がFRBになっていると解釈すれば良いのでしょうか?
FRBに預けた米国債の管理者はFRBですから、もし仮にロシアや中国が悪意を持って米国債を売却しようとした場合は、FRBはこれらの国の保有する米国債の売買と凍結出来ると考える事も出来ます。
では今回ロシアはウクライナ危機を前の米国債をFRBからユーロクリアに預け直したのでしょうか?
米国債と米国の安全保障の観点からは、対立が深まったロシアにミスミス米国債を渡すのは不可解です。
■ 米国債売却というカードをニュートラルな状態にしたかったのでは無いか ■
ここからは私の憶測です。
もし米ロの対立が深まった時、ロシアの保有する米国債がFRBに預けられていたら、ロシア政府は国民から非難を浴びるでしょう。「アメリカとの交渉カードとなる米国債をFRBに預けっぱなしとは何事だ!!」
一方、仮にロシアや中国が米国債を売り浴びせた時に米国政府やFRBはこう言い訳するかも知れません。「売られた米国債はFRBの管理していない米国債であったので売却を防げなかった。ロシアや中国は危機が深まる前から徐々に米国債を引き出していたので、FRBはこれを防ぐ手立てを持たなかった・・・」
中国も保有国際をユーロクリアに移しているという噂も有り、米国債がFRBの管理下に無ければロシアや中国の米国債売却というカードはいつでも切れる状態にあるとも言えます。
■ 表面上は対立して見えるが・・・ ■
この様な中ロの米国債に対する動きは一見米国に脅威に写ります。
しかし、米ロの対立か仮に深まった時、ロシア国内で米国債売却圧力が高まっても、ロシア政府が手持ち米国債は既に売却したと発表する事が出来ます。実際には管理をFRBからユーロクリアに移しただけかも知れませんが、ユーロクリアが口をつぐめば、真相は闇の中です。
要は、ロシア政府が米国債をユーロクリアーに預ける事で、ウクライナ危機が深まっても米国債の売却カードを切れない事になります。これは米国債とドル基軸体制に対して安心材料となります。(ロシア政府が米国債を既に売却したとウソを付く限り・・・)
この様に一見対立している様に見えて、米ロは実は結託しているのでは無いかと私は疑ってしまいます。
■ 中露との対立が米国債を支えている構図 ■
今年に入ってからロシアと中国がアメリカと対立する構図が明確になってきています。市場はこれらの危機を嫌気して、徐々にリスクオフに傾いています。ダウの上値も重くなっていますし、日本株や上海株式市場からも資金が流出しています。
これらのリスクを回避した資金は、とりあえず米国債に姿を変えていると私は邪推します。テーパリングで米国債の価格が下落(金利上昇)するリスクは有りますが、昨今の米国債の価格は上昇傾向(金利下落)にあります。
■ 危機を予感する金融機関 ■
株式市場の値動きが激しくなり、日経平均も14000円を巡る攻防が続いていますが、これは金融界が何か危機を予見している事の現れでしょうか?
英国のバークレイズが投資銀行部門を縮小して、今後3年間で世界で1.9万人のリストラを予定すると発表しています。これは今後、投資銀行業務の利益が減少すると見込まれるからでしょう。
■ 最後に「戦争」というカードでウヤムヤにするのでは? ■
私は戦争の原因はいつの時代も「経済」にあると考えています。
そして、もし再び世界を金融危機が襲うならば、その被害はリーマンショックの比では無いと妄想しています。各国国債の信用にも疑問が持たれるかも知れません。「米国債やドルの信用」が揺らぐ可能性はゼロでは有りません。
もしドルに万が一の事態が訪れたらどうするか・・・。
アメリカは世界にゴメンナサイと言えるでしょうか・・・?
どうも私にはアメリカがそんな謙虚な国だとは思えません。ドルが自壊する前に軍事的緊張を煽り、「中国やロシアが米国債を売却したから、米国債は暴落したんだ!!」と責任を転嫁するのではないかと妄想します。
そして、その後は「戦争という非常事態」を名目に市場を管理下に置くのでは無いか・・・。
その為にも中ロの保有する米国債をFRBが保有している事は好ましくありません。責任を中露に押し付ける為には、中露が米国債保有を減らしている様に見せ掛けながら、どこかに爆弾を積み上げる必要が有るのでは?
あくまでも現在の市場が崩壊する事が大前提のヨタ話ですが、陰謀論者としては妄想を掻き立てられる昨今の米国債を巡る国際情勢です。