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アベノミクスの前半戦を総括する・・・市場の認識

2014-05-27 09:09:00 | 時事/金融危機


■ 円安を見込んだ市場の動きは2012年の夏頃から始まっていた ■

日銀は2%インフレ目標達成に向けて順調に物価は上昇し、かつ潜在需要が解消していると発表しています。これらをアベノミクスの効果や、日銀の金融緩和の実績とマスコミは報道していますが、冷静な市場関係者は違う見方をしています。


日本のデフレ脱却は2012年度後半から始まっています。これはユーロの信用の回復期に当たり、世界的にリスクが後退しています。

安全通貨として買われていた円が対ドル、対ユーロで下落し始めたのが2012年夏頃からで、白川時代には円を巡る環境は既に変化しています。

同じ時期白川日銀は外国金融機関への円の供給を増大させており、これらの資金が日本株に流入した為に、安倍政権発足を前に、日経平均は上昇に転じています。

これらの動くはアベノミクスが実現した場合、日銀が大規模緩和に踏み切るという「期待」を先取したもので、ソロスやジム・ロジャース達が為替と日本株で2013年前半に大儲けする下地を作っています。

■ 異次元緩和と財政出動には効果があった ■


金融関緩和の効果としては、円安の進行を促進した事が最も大きく、これがエネルギーコストを始めとする輸入価格の上昇による物価上昇を後押ししました。

一方、実体経済に対する影響は2013年前半の補正予算による公共事業の増発が効果があり、これによって名目GDPが押し上げられ、雇用の需給が改善しています。

2012年前半は株式の上昇して資産効果による消費回復も見られました。アベノミクスへの期待が高まっていた時期です。

しかし、5月にアメリカのテーパリング予測によって投資環境が変化すると、日本株は売られ日経平均は下落に転じました。消費は夏頃から低迷しますが、消費税増税前の駆け込み需要が強引に消費を押し上げます。2014年1~3月期の経済指標はあまり当てには出来ないでしょう。

■ 製造業と人材において供給力が低下した結果、潜在需要が解消した = 縮小均衡 ■

一方、潜在需要が解消したと言われていますが、これは日銀も指摘する通り、製造業と人材の供給力の低下が大きく影響しています。

製造業は110円程度の円安では競争力を維持出来ないので、現在の為替レートでは国外移転を選択せざるを得ません。その結果、国内の製造力は減少し続け、製品輸入が一方的に拡大しています。

労働市場においても、建設業やサービス業での人手不足が深刻化していますが、今の若者は炎天下で汗を流して重労働する建設業に就きたがりません。同様に自給が安くなり過ぎたコンビニの店員や飲食店の店員は、日本人は敬遠し始め、海外の留学生などがその穴を埋めています。

「潜在需要の達成」は、「需要の拡大」では無く「供給の縮小」という形で達成されつつあります。所謂リストラクチャリングや縮小均衡が達成された訳ですが、その後に成長が始まる為には、構造改革などの環境変化やイノベーションが必要になります。

それらのイノベーションが起こらなければ、供給力の縮小に合わせて需要も縮小する負のスパイラルに突入する恐れがあります。東京オリンピックで東京は再開発ラッシュが始まると思いますが、時期的には非常に良いタイミングだったのかも知れません。

■ 複雑な条件が絡み合う経済から、金融緩和の効果だけを切り出すのは難しい ■

経済は色々な条件が複雑に絡み合って、結果的にインフレとかデフレという現象が観測されるのだと思います。

金融緩和も公共投資も確かに効果が有りましたが、円を巡る内外の動きや、日本の供給力の低下なども複合的に影響を及ぼしており、さらにフィードバックが掛かるので、純粋に金融緩和の効果を切り出すのは難しいと思います。これは日銀も指摘する所です。

■ 副作用の存在を忘れてはならない ■

金融緩和も財政出動も、不景気の脱却には効果が有りますが、副作用の存在は無視するものでは無いと思います。債務残高が巨大に膨らんだ日本においては、国債金利の上昇によって、現在の低金利の弊害が一気に噴出します。

地銀や信金が中長期国債を大量に抱える状況で金利上昇が始まると、地方金融がパニックをお越します。

同時に予算における国債の金利負担が増大し始めるので、福祉や公共事業の予算が削られる事にもなり兼ねません。

景気回復による金利上昇であったとしても、異常な金融緩和が長期に渡って実施された経済においては、その悪影響も無視出来ないのではないでしょうか。これが、「下口戦略」の難しさであり、日銀が不用意に追加緩和を実施しない理由なのでは?

一般論では有りますが、ここら辺が市場関係者の共通認識といった所でしょうか。

■ アベノミクスの本命は市場開放と構造改革。そして防衛問題 ■

アベノミクスは期待に働きかける政策と言われていますが、その本質は全く別の所にあるのではないかと私は考えています。

TPP問題一つ取っても、衆議院選挙時の公約と全く逆の動きを見せていますが、小泉政権時の竹中氏の役割を甘利氏が担う事で、日本の市場開放と構造改革は着々と進んでいます。これは必要な事であると同時に、既得権者には痛みを伴う改革です。

一方、防衛問題に関しては、安倍氏は明なに次ぎの世界の枠組みを意識して行動しており、アメリカとの綿密な連携が取られている事は疑いは有りません。

とかく「景気」や「デフレ脱却」ばかりが話題になるアベノミクスですが、市場開放や構造改革、防衛改革など将来の日本のあり方を変える改革が進行しています。これがアベノミクスの第二幕になるのでしょう。