今季アニメが出そろいましたので、おススメなど・・。
『Gのレコンギスタ』
先日の記事にほぼ書いています。
富野監督の『Gのレコンギスタ』は「うんこアニメ」だ・・・監督の真意を妄想する
4話目にて、ゴタゴタした感じが整理され、話が動き始めました。特に演出でオーー!と唸ってしまうシーンが多々有りました。
1) 会話がかみ合わない様に見えて、二つの事を同時に説明している超絶脚本
2) 「進撃の巨人」など近年のアニマに挑戦する様な固定カメラ的視点から、3次元の演
出を繰り出す。(出撃シーンでラライア達をコクピットの高さからの見下げで描き、その間の高さをアイーダが移動する・・・。こんな作画をやられると、近年のCGによる「視点グルグル」演出が如何に野蛮であるか痛感させられます。
3) マンディーとノレドの描写に時間を割き、他を思い切り割愛する思い切りの良さ。戦闘物は、戦闘員以外を描く事で戦闘の意味が浮き彫りになるイデオン以来の伝統。(カツ・レツ・キッカやハロがかつてはこの役割を担っていましたね)
4) マンディ「あなたの目キレイね」
クリム・ニック「よくそう言われる」
・・・・ウーン、この会話の挿入は神。シビレます
5) 敵の艦長との交流など明らかにユニコーン・ガンダムと同じ様な設定ですね。これUCに挑戦状というかアテツケ。
戦闘シーンにばかり目が行きがちですが、戦闘シーン以外が素晴らしいから、作品が生き生きしているのが冨野アニメの特徴ではないでしょうか。
しかし、アイキャッチのダンスの演出やエンディングのダンスシーン、クセになりますね。冨野監督の娘さんが振付師をされているとかで、キャラクターの性格を動きで良く表現していてなす。物語の後半はシリアスで重い展開になりそうですが、ダンスが適度に明るさを保ってくれるのではないかと期待しています。
『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞』
サンライズのネタアニメ。『革命機ヴァルヴレイヴ』などのキワモノ路線かと。
マナという超自然の力を使う事で平和で豊で平等な社会を実現している世界。アンジュはミスルギ皇国の皇女として人望も厚い。彼女は何不自由なく育ち、正義を信じる心も人一倍です。一方、マナという能力を持たずに生まれて来た子供「ノーマ」は、帝国に害をもたらすものとして例え赤ん坊であっても社会から排除されます。アンジュはそれすらも正義として一点の疑いも持ちません。
そんな彼女が16才になった時、式典に臨んだ彼女にマナが無い事が発覚します。王と妃が事実を隠ぺいしていたのです。皇女から一転ノーマとなった彼女は、辺境の収容所に収監されます。彼女を待ち受けていたのは屈辱の日々でした。
ノーマは女性にしか発現しません。収容所は小さな女児から大人まで全て女性の世界です。ノマー達は、小さな頃より訓練され異空間から出現するドラゴンと闘う事を強いられます。ノーマの生きる価値はそれ以外に無いのです。そして、ノーマ達の戦いが、マナの世界の平穏を守っているのです。
皇族としての特権はおろか、普通の人間としての尊厳すらもノーマであるアンジュには許されません。それに適応出来ない彼女は「痛姫様」とノーマの仲間たちからも蔑まれます。女性だけの社会で先輩達のイビリは陰湿です。さらには性的な苦痛をも伴い・・・。
とまあ粗筋を書くと意外に面白い。ポット出の新人がいきなりロボットを乗りこなして無双してしまう最近のアニメではあまり描かれない上官の新兵イビリなど、80年代の雰囲気を感じます。話の大筋は、友人の裏切りで中東の外人部隊に売られた日本人パイロットを描く『エリア88』に良く似ています。墓守の婆さんはマッコイみたいですし・・。(よたろうさんの指摘は適格です)
エロ・グロ描写も、マンガがサブカルチャーとしてのドロドロとした活力に満ちていた時代には当たり前の描写でした。『ワイルドセブン』なんて、結構エロかった。ただ当時のエロもグロも社会に対する反発だった事に意味が有りました。キレイごとの世の中に反発する手段の一つがエロでありグロだったのです。
ところが『クロスアンジュ』や最近の深夜アニメに多いエロやグロは、ただ単に若者の性欲のはけ口でしか有りません。エロアニメを見るのと同じ次元のエロやグロの表現が、単に作品を注目させる為だけに用いられているのです。
まあ、アニメなど所詮はオタクの妄想の道具でしかありませんから、エログロの何がいけないのかと聞かれたら・・・まあどうでも良い・・と答えるしかありませんが・・。
アニメにおけるエロ表現が確立したのは80年代だと思います。それまでは、『宇宙戦艦ヤマト』のスターシアの裸や、『キャプテンハーロック』にマゾーンの裸にエロティズムを感じていた健全な男子達の中から、魔女っ娘物の「変身バンク」に萌える人達が現れ始めます。
マンガの世界でも永井豪などは結構エロエロの描写をしていましたが、あれは反骨精神の現れでパンクと言えました。しかし、80年代ラブコメブームからマンガに氾濫するエロチックな表現は、明らかに若者の単純な要求に応える出版社のマーケット戦略でした。過激化するエロ表現を少年誌で展開するのは問題が有りますから、この頃からヤングジャンプなどの青年誌が発刊され、少年誌のエロ表現はおとなしくなりますが、それでも雑誌のテコ入れの為に、ちょっとエッチな作品は少年誌では定番と言えます。
マンガ雑誌に青年誌が生まれた様に、80年代半ばになると「アダルトアニメ」というジャンルが生まれ、18禁という規制の中でエロエロな作品が次々に生まれる様になります。このジャンルは結構面白くて、明らかにオタクがブヒブヒ言う為の作品がある一方で、子共向けになったTVアニメから押し出された人達が、規制の緩いアダルトアニメで自由な表現を繰り広げています。かつて日活ロマンポルノが新人映画監督達の実験場であった事に良く似ています。丁度、夢枕獏や菊地秀行らの小説が開いたジャンルをアニメが踏襲していったとも言えます。
1989年の宮崎事件がアニメ界に与えた影響は非常に大きかったと思います。実際に宮崎被告の部屋にあった多くのビデオはTVドラマや、普通のTVアニメ(ドカベンなど)がほとんどだった様ですが、マスコミはアニメの影響ことさら強調します。これが「有害コミック騒動」に発展し、アニメやマンガの表現に様々な規制が掛かる様になります。「パンチらはダメ」とか「乳首が見えたらアウト」なんて言う自主規制が生まれます。
この様な社会の圧力によってTVアニメから、エロやグロといった生々しい表現が抜けて行きます。アニメは子供向けの無害な作品と、一部のファンの為の「美少女のユートピア」的な作品だけになってしまいました。一般のアニメ視聴者は行き場を失い、アニメへの興味を失って行きます。この流れは『エヴァンゲリオン』の出現まで続いたのではないでしょうか。(私自身、高校時代には既にアニメを卒業していたので、80年代後半から90年代はアニメを一切見ていませんでした)
アニメにエロとグロが戻って来たのは、規制の緩い深夜アニメの普及が切っ掛けだと思います。DVDの売り上げをビジネスの目的とする事で、マスマーケットを狙わない様々な実験的作品が生まれる様になりました。これらの自由な表現に対しても東京都の石原元都知事が規制を掛けるなど、アニメの表現と行政の規制はイタチごっこを繰り広げますが、石原都知事が中央政界に転出した事で、最近の深夜アニメにはエログロ描写が増えた様に感じます。
エロとグロは若者にニーズが有りますから、キワドイ描写を入れれば作品が売れます。さらに、TV放映時には湯気や黒塗りで隠しておいて、DVDで全部見えるなんていう戦略を取ればDVDの売り上げが増えます。ここら辺は、一種のマーケット戦略ですから、私などがとやかく言う事では有りませんし、この様な表現を規制した所で、ネットの中にはもっと過激な表現が溢れていますから、アニメでオッパイが見えたぐらいで子供が犯罪に走るとは到底思えません。
一方、『クロスアンジュ』でのエロやグロ表現には何故か不快感を覚えます。表現の仕方としてはアニメがサブカルチャーだった時代の挑発的な感じに近いのですが、彼らはこの作品で社会に反抗している訳ではありません。エログロ表現は単に「話題性」の為に挿入されているに過ぎません。「うわ、こんな所まで描くかよ・・・」という悪趣味に視聴者が悪乗りする事を期待しているのです。
話の展開として面白く、メカのデザインも悪く無く、料理の仕方次第では今期の覇権になれたかも知れない作品ですが、「お前ら、エログロ好きだろう?」って感じで挿入されるシーンには嫌悪感を覚えます。
74歳の富野氏が『Gのレコンギスタ』を作らせるのは、最近のサンライズの作品作りへの姿勢も大きく影響しているのかも知れません。
『四月は君の嘘』
書店で気になっていたマガジン連載の音楽物。
かつて天才ピアニストと将来を嘱望された主人公は、母親の死を切っ掛けにピアノから遠ざかります。そんな彼の前に、自由にバイオリンを弾く少女が現れ、彼の止った時計が周り始める・・・多分、そんなストーリーではないでしょうか?(原作を読んでいないので)
この分野では『ピアノの森』という大傑作マンガがあるだけに「二番煎じ」的に見えてしまうのは仕方ありませんが、『クロスアンジュジュ』の解毒剤として今期一押しの作品です。マンガやアニマには過激な表現が溢れている一方で、こういう「良心」の様な作品の沢山有ります。
アニメとマンガの違いは絵が動き、音が聞こえる事。その音の部分がマンガではどうしても描ききれません。『のだめカンタービレ』や『ピアノの森』では、絵や言葉が雄弁に音を表現していますが、『ピアノの森』のカイの演奏などは、逆に本物の演奏でその感動を伝えるのが難しいと感じています。ホロビッツのピアノの良さを万人に音だけで説明するのは難しのと同様です。一方、『四月は君の嘘』のかおりちゃんのバイオリン演奏は、譜面を無視しているので分かり易い演奏です。それだけにアニメ化が生きる作品とも言えます。
今期の家族枠にお勧めです。
『甘城ブリリアントパーク』
集客が出来ずに閉園寸前のテーマパーク。実はそこは妖精達の住処だったのです。妖精達はパークのゲストからエネルギーを集めていました。パークの閉園は、妖精達の死活問題です。そこで1人男子高校生が、パーク立て直しの為に呼ばれて来ます。
日曜朝に放送されるアニメにピッタリな内様ですが、何故か京アニ、深夜アニメ。話は面白くて、テーマパークビジネスの内情に詳しい私などは抱腹絶倒なのですが、やはり何故に京アニ・・・。『境界の彼方』などよりは余程好きな作品ですが・・・。
『旦那が何を言っているか分からない』
オタクの夫を持つ年上のカミサンの夫婦の話。短編アニメですが、1話目から大笑いしてしまいました。「こういう事ってアルアル」って頷きながら見てしまいました。ネコ目の奥さんが可愛い。
『Fate/stay night -Unlimited Blade Works- 1st』
『Fate/Zero』の後日譚。ストーリー的にはZeroよりも面白いかな。素直に楽しめる良作。ハズレ無し。
『グリザイアの果実』
最近どうも様子がオカシイ倉田英之がシリーズ構成。ただ、この作品は悪くは無いかな。特にツインテールとの絡みが面白くて・・・プ!!
クールで有能な主人公ですが『魔法科高校の劣等生』のお兄ちゃんが転校して来たかと思いました・・・。
『異能バトルは日常系のなかで』
1話目はどーでもいい話でしたが、2話目の演出は上手い。一瞬、大沼心監督かと思いましたが、ガイナックスOBの大塚雅彦が総監督。『キルラキル』のトリガーとは思えない作品ですが、
2話を見る限り「大化け」しそうな予感。今期、一番期待してしまたりして・・。
『寄生獣 セイの格率』
傑作マンガのアニメ化ですが、キャラクターデザインをアニメ向きに変えて来たのが英断でしょう。ストーリーは当然面白い。花澤さんと、沢城みゆきという私が唯一名前が分かる声優さんが出ているのも嬉しい。
『selector spread WIXOSS』2期
カードゲームのPRアニメながらバトルシーンがほとんど無い異色作品。
岡田麿里のダークサイド炸裂の作品。とにかく暗くてノリが悪い作品ですが、2期目でイオナがカードに成った事で緊張感がパナイ。期待してます。
『神撃のバハムート』
「何でイデオンのコスモが出ているの?」と思わずビックリ。作画はイデオンやダンバインで素晴らしい仕事をした湖川友謙氏の弟子の恩田尚之。
『タイガー&バニー』の 「さとうけいいち」の監督作品ですが、これもカードゲームのアニメ化の様ですね。内容は・・・古臭い活劇ですが、ただ作画だけは神の領域。週一アニメでこの作画で最期まで持つのか・・・。
2話目の酒場のシーンの表情は必見。3Dアニメに特化してしまったディズニーのアニメーターに見せてやりたい作品です。
この他は
『ソードアート・オンライン』の2期目は・・・、何だか先が気になる
『失われた未来を求めて』、だいぶ劣化した
『サイコパス2』(何故かタツノコプロの制作に変わっています)などなど、どれを切るか迷ってしまう今期アニメ。
この他に、ベジ子さんから『蟲師』をお勧めされていますが、実は原作のファンでして、ちょっとアニメで見るのが怖くて躊躇しています。良作だとの話はネットで色々目にするので、いつかは見てみます。