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エボラの治療薬『アビガン錠』は催奇性が有る・・・インフルエンザでは限定的使用が条件

2014-10-27 05:32:00 | 分類なし
 

■ エボラ出血熱の治療薬として注目されれ富山薬品の『アビガン錠』 ■

富士フィルム傘下の富山薬品が抗インフルエンザ・ウィルス薬として開発した『アビガン錠』(ファビピラビル)が、エボラ出血熱に効果が有るとして、厚生労働省がエボラに対する使用を認可しました。

ファビピラビルは細胞内でウィルスがRAN転写によって自己複製して増殖する際に利用される、細胞内のRNAポリメラーゼを阻害する事でウィルスの増殖を防ぐ薬です。

ウィルスは細胞自体が持つRNA複製機能を利用して自己複製、増殖するので、RNA転写を阻害するファビピラビルの効果は全てのウィルスに有効で、エボラ出血熱も例外では有りません。

■ 催奇性が有る事から、条件付の認可となったファビピラビル ■

鳥インフルエンザの流行に備えて開発されたファビピラビルですが、細胞の基本的機能を阻害する為に、催奇性が高い事が開発当時から分かっていました。細胞分裂が盛んな胎児の細胞や、精巣の細胞に害が有るのです。

そこで、厚生労働省はファビピラビルを認可する際に、新型インフルエンザが流行して、他の抗インフルエンザ薬が効かない場合に限り、ファビピラビルを製造するという条件付で、ファビピラビルを認可しました。

この場合の新型インフルエンザとは、鳥インフルエンザの様な死亡率が高く、社会の大きな脅威となるインフルエンザの事で、先の弱毒性の新型インフルエンザでは、ファビピラビルの影響の方がインフルエンザよりも深刻になる恐れがあるので、使用認可に対しては慎重さが必要となります。

催奇性の有るファビピラビルの使用に際しては、妊婦や妊娠しそうな人への投薬は禁止されています。又、男女とも服用後1週間のセックスは禁止されています。

■ エボラの脅威はファビピラビルの害に圧倒的に勝る ■

使用に際しては制約の多いファビピラビルですが、致死率50%以上のエボラ出血熱には有効です。ファビピラビルによる害よりファビピラビルによって死亡する脅威の方が圧倒的に勝るからです。

■ 早期投薬が望ましい ■

タミフルなどの抗インフルエンザ薬も同様ですが、ウィルスの増殖を抑える抗ウィルス薬は、ウィルスが増殖する前に投与する場合に一番効果が高く、ウィルスが体内で増殖して症状が出た場合には、効果が薄いとされています。

実際にインフルエンザが発症した後、タミフルによる効果は回復が1日か2日早まるだけだと言われています。

エボラ出血熱の場合、症状が出てから劇症化が早く、患者が来院してエボラである事が判明してからファビピラビルを投与しても、症状を劇的に改善する事は難しいと思われます。ただ、生存率が高くなる事は確かです。

ただ、先進国ではエボラ患者に接触した人はチェックされていますから、それらの監視対照の人が発熱初期にエボラである事が分かれば早期投与が可能で、ファビピラビルは期待通りの効果を発揮します。

■ 予防投与には不向き ■

一方、抗ウィルス薬は、予防投与で感染による危険を下げる効果は高いので、エボラ出血熱の患者を扱う医療関係者には有効な薬だと思われます。しかし、ファビピラビルは正常な細胞のRNAポリメラーゼを阻害するので、長期間の服用は何かしらの害を体に与えると思われ、長期間の予防投与には不向きな薬です。

この様にファビピラビルの効果は限定的ですが、しかし、エボラ患者は死亡する確率が非常に高いので、生存率を高める薬の登場は吉報と言えます。


■ WHOの予測ラインから実際の死亡者数は乖離し始めた ■

WHOのブルース・エイルワード(Bruce Aylward)事務局長補は、現実的な予測値として「12月の第1週までに、新規感染が週5000~1万人に達する可能性がある」との見解を述べた。と報道されています。

しかし、これは有効な治療手段が無く、又、従来の様に感染地域の住人が予防に対する知識が欠如した状態が続く事が前提となっていると思われ、被害を過大に評価した発言です。



確かにこれまでんの感染者や死者数は右肩上がりで直線的に増えているので、WHOの警告は間違いでは有りません。しかし、直近の死者数を見ると、改善している事が分かります。



 5日- 7日 168人死亡 (1日平均 84人)
 7日-12日 463人死亡 (1日平均 92人) 
12日-14日  62人死亡 (1日平均 31人)
14日-17日 256人死亡 (1日平均 85人)
17日-19日  66人死亡 (1日平均 22人)

1日辺りの死者数にバラつきがあるので、死者数が減少に転じているとは必ずしも断言できませんが、各国の協力により、感染拡大の速度が低下している可能性が高いと思われます。


■ 一人の患者が二人に感染させると地球は滅ぶ? ■

「一人の患者が二人に感染させた場合、地球が滅亡する」という分かり易い誤解から、過剰に脅威が煽られていますが、死亡率50%ならば、地球が滅亡する事は有りません。

又、初期の感染者の増加傾向(約2.3%ずつ)から830日後には60億人が感染するという、単純な予測もありますが、これも対策が施されなかった場合や、世界各国で封じ込めに失敗したケースで、実際にはどこかで死亡者の増加は減少に転じます。(WHOも似た様な予測を発表していました)

何れにしても、アメリカを含め先進国ではほぼ封じ込めに成功しており、感染者との接触の有った人への二次感染も医療関係者のみと限定的です。これは、エボラ出血熱が症状が発症するまでは感染力が弱い事を証明しています。

■ ワクチンの開発が進んでいる ■

エボラの治療には血清が有効ですが、感染者の血液から生成される血清は、大規模な感染においては数が確保出来ません。

ですからエボラ出血熱のワクチンの登場が待たれますが、致死性の強いウィルスのワクチン開発はレベル4の研究施設が必要で、かつ人体実験が難しいので、感染者の少ない状況では利益が出ないので製薬会社は開発に乗り出しません。

今回の大流行を受け、いくつかの製薬会社が開発に取り組んでいますが、WHOは2015年半ばまでに20万人分のワクチンが準備出来るかも知れないと発表しています。現在、2種類のワクチンが人への臨床実験の段階にある様です。(感染者が多いので、臨床試験が可能)

近年のワクチンはウィルスのRNAを合成する様な手法で開発され、アジュバンドとの組み合わせでそれなりの効果の有るワクチンが短期間で開発出来ます。インフルエンザ同様に、ワクチンの効き目が恒久的で無い可能性や、ウィルスの変異でワクチンが無効化する可能性が有るので、ワクチンの需要は今後、一定量継続し続けます。

アフリカ諸国では、今後、エボラ出血熱の予防処置として、ワクチン接種が義務付けられるかも知れません。製薬会社は、安定した収益源を又一つ確保したと言えます。


・・・エボラ出血熱はとても危険がウィルスですが、その一方でしっかりとビジネスにしている人達が居る事も確かなのです。