■ 老人達に郵政株を勧める証券各社 ■
実家の母の所には毎日の様に証券会社などから「郵政株」を勧める電話が掛ってくる。
「ねえ、郵政株って儲かるかしら」と聞かれたので、「きっと値下がりするから買わない方が良いよ」と答えると、「だって、TVや雑誌でも儲かるって書いてあるわよ」だって・・。
■ プロは買わない郵政株 ■
国内機関投資家などは郵政株にあまり興味を示していないと言われています。(国内販売の95%が国民なので、プロは実際には買えませんが・・・)
ゆうちょ銀行は177兆円という莫大な預金残高を抱えていますが、運用ノウハウを持っていないので今までは日本国債中心に資金を運用して来ました。
しかし、日本国債の金利は異次元緩和で極限まで低下しており、最早国債で利益を上げる事は難しくなっています。ゆうちょ銀行は異次元緩和で手持ちの日本国債を日銀に売却しており、その資金を米国債や日本株や海外株式に投資し始めています。これは金利を考えれば当然の判断です。ゆうちょ銀行の国債運用率は50%を切っています。
現在は日銀の国債を高値で売却して利益を上げる事が出来ますが、将来的にこれが継続する訳では有りません。運用ノウハウの乏しいゆうちょ銀行は銀行としの収益性に根本的な問題を抱えています。
業務規制が存在する為にカードローンや住宅ローンなどの個人貸付や企業向け融資を制限されているから融資残高が少ないのですが、しかし実際のこれらの融資業務が解禁になったとして、ゆうちょ銀行の現行の職員が融資における適切なリスク管理が出来るとは思えません。石原都知事が設立した「新銀行東京」の様に、地域の企業との癒着などで不良債権の山を築く可能性が高いのでは無いかと私は妄想しています。
■ 巨大な投資銀行になりつつある ■
日本最大の預金残高を誇るゆうちょ銀行が融資業務を拡大すると、地方銀行や信用金庫、さらにはメガバンクなどの民業を圧迫する事にもなりかねません。そこで、ゆうちょ銀行は資金を市場運用する方向を選択すると思われます。
ゴールドマンサックスの元日本副社長を市場運用部門のトップに迎えるなど、ゆうちょ銀行も運用ノウハウを高度化させようとしています。銀行というよりも巨大な機関投資家、あるいは投資銀行に近い存在になる可能性が高いのではないでしょうか?
参考までに現状のゆうちょ銀行と三菱東京UFJ銀行の比較を見つけたので紹介します。
ゆうちょ銀行 三菱東京UFJ銀行
売上 2兆781億円7900万円 2兆8565億円
経常利益(利益率) 5695億円(27.4%) 9026億円(31.6%)
店舗数 2万4000 国内931・ 海外105
預金残高 177兆円 152兆円
融資額 2兆7840億円 98兆円
国債保有残高 101兆6439億円 29兆円
■ 投資銀行のリスク ■
リーマンショックではアメリカの投資銀行の全てが事実上の経営破綻に陥りました。一時的に債権や金融商品の価格が暴落した為に、その市場で資金運用していた投資銀行は、資産を時価評価すれば債務超過に陥ったのです。
アメリカではこれらの投資銀行を商業銀行に吸収合併させて延命します。法律では投資銀行には公的資金を注入出来ないので、商業銀行に合併させて公的資金を注入したのです。
それでも時価評価では受け皿になった商業銀行の経営が怪しくなるので、いい加減な調査でえ経営状態を誤魔化して嵐が去るのを待ちました。
政府やFRBが一時的に紙屑となったMBSなどを買い取る事で、市場は落ち着きを取り戻し、アメリカの銀行の業績は急回復しました。
ゆうちょ銀行が今後、一般の貸付で利益を稼ぐ商業銀行として成長する可能性は低く、巨大な投資銀行になる可能性が高いと思われますが、先述の様に投資銀行にはリスクが付きまといます。
■ プロは買わないから国民に郵政株を押し売りする政府? ■
政府は郵政株の国内販売分の95%を国民に販売するとしています。これ、プロは買わないから国民に買わせるという事の様にも受け取れます。
多分、郵政株の公開からしばらくして日本株市場は外資によって暴落するでしょうから、NTT株よろしく多くの国民が郵政株を高値掴みさせられる事になると思います。
■ 郵政株が値下がりしてからが外資やプロの出番 ■
日本株の暴落局面で郵政株を手放す国民も多いでしょう。外資やプロはそこを狙って行くと思われます。仮にゴールドマンサックスが郵貯株を大量に保有する事になれば経営に関与する事も可能になります。
そうなれば177兆円という運用資金が彼らの手に入る訳で、まさに濡れ手に粟状態です。
尤も現在も市場運用部門のトップはGSのOBですから、既にGSの手中に有るとも言えますが・・・民営化されたゆうちょ銀行を支配出来れば、日本政府の意向を無視した運用も可能です。極端な話、日本国債を叩き売るなんんて事も出来ちゃいます。(やらないでしょうが・・・日本政府や財務省は首根っこを押さえられる事になります。)
■ 国民に買わせる意味 ■
ところで仮に日本株が暴落して日経平均が1万円を切る状況が発生した場合、郵政株を保有する国民はこれを手放すでしょうか・・・。
「このまま持っていれば又いつか値上がりするかも知れない」と考えるお年寄りも多いのではないでしょうか?
リーマンショック時に投資信託が暴落した時、老人達の多くはこれを手放さなかったのでは無いでしょうか。毎月払いのタイプを持っていた人が多いので、基準価格が暴落しても毎月お金が入るので年金感覚で保有し続けた方が多いかと思います。
そもそも郵政株を購入するような余裕のある老人は、「あれ、ちょっと損しちゃったわ」なんて感じで、慌てて郵政株を売る様な事は無いのかも知れません。
■ 財政危機でインフレが発生すれば株は資産保全の手段になる ■
私はいずれ日本の財政は破綻状態になり、円の信用低下によるインフレが発生すると妄想しています。
株はインフレに強い資産で、インフレ率にリンクして株価も上昇します。将来的に日本が高いインフレに突入した場合、預金で資産を保有するよりも株で保有する方が資産保全としては有利です。
こう考えると、政府が国民に郵政株を持たせる事が決して無駄では無い様にも思えてきます。
郵政株は「買い」ですが、それは「今」では無くて「暴落後」では?尤も、ゆうちょ銀行が将来的に破綻しない事が大前提となりますが・・・。