■ 10年後の日本を予測してTPPの意味を考える ■
10年後の日本の社会や経済を予測した時、TPP問題は労働人口が減少する日本においては将来的にはプラスに働く面もあります。
現在、日本の農家の平均年齢は66.8歳。現在でも山間部を中心に耕作放棄地が増えています。将来的には現在の農業生産を維持する事は不可能です。
競争力の無い作物や畜産品から徐々に輸入に置き換わって行く事は仕方の無い事で、農家の後継者も現金収入に繋がらない農業から離れて他の産業に従事する事は当然の結果と言えます。(一方で自給自足的農業の役割は拡大すると思われますが)
それでも、食糧安全保障を考慮すれば、最低限の耕作規模は確保しておく必要は在り、現在のバラマキ補助金を、選択的に残すべき作物への補助金に集約する必要は感じます。日本の官僚は優秀なので、政治家達が集票の為の干渉をしなければ、効率的な補助金の分配が可能かと思いますが、現状は政治がこれを邪魔しています。
■ 「食の安全」より「今日の食事にありつける事」が切実な問題だ ■
食糧輸入には「食の安全」という国民の健康を守る点も重要になりますが、こればかりは「所得に応じた」という但し書きが付かざるを得ません。仮に円安がさらに進行する場合、現状の関税水準では食糧価格が上昇し、低所得者の食費が拡大して生活を圧迫します(現状も既にそうなっていますが)。
こうなると、「食の安全」よりも「安い食品」が優先されます。先ずは食べる事が先決となります。これはアメリカとて同様で、庶民のスーパーと、高額所得者が買い物するオーガニック食品のスーパでは価格に大きな開きが有ります。要は、国内農業が衰退した後は、「食の安全はお金で買う」時代が到来します。
■ TPPなど無くとも、いずれ日本の国民皆保険制度は維持出来なくなる ■
多分、医療保険制度も外資の参入で、混合診療がどんどん進んで行くでしょう。現在の様に国民皆保険で高齢者に高額医療費を垂れ流す事は継続不可能ですから、簡単な医療と高度医療の選別が進んで行きます。アメリカの様に盲腸の手術で300万、ガラガラ蛇に咬まれて薬代が1000万というクレージーな状態には、日本の官僚がする訳が有りませんが、庶民に不相応な高度な医療は民間保険でカバーする様になるはずです。
■ 「誰もが幸せな社会」なんて過去にも未来にも幻想に過ぎない ■
とかく農業問題の矮小化されがちなTPP問題ですが、人口が減少し、かつ円安がさらに進行するであろう日本では「変化」を否定したのでは庶民の生活が破綻します。「誰もが幸せな社会」を支えていたのは労働人口であり、これが減少して高齢者が増加する社会で「物質的豊かさ」を求められるのはある程度の所得を得ている人に限定されていきます。
■ 官僚は政治家や外圧を利用しながら、50年、100年単位で国家を運営している ■
TPPにマイナスの側面とプラスの側面が存在します。ただ、急激な変化に社会は耐えられませんので、変化のショックを和らげる事が官僚の腕の見せ所と言えます。
政治家はその時々で便利に使われる存在なのでしょう。安倍首相が独断で進めているかに見えるアベノミクスですが、官僚達にはもっと深遠な思惑やビジョンが有り、アメリカの外圧も利用しながら将来の日本を守っているのだと・・・私は妄想しています。