■ 千葉県でグランフォンドは可能か? ■
自転車で長距離を走る事を「ロングライド」などと呼びます。「サイクル○○」などというイベントで一般市民も100Kmを走ったりするイベントも盛んです。
自転車先進国のヨーロッパのロングライドイベントには「自然の中を、自転車で長距離走るイベントやレース」が多くあります。これは「グランフォンド」と呼ばれています。ツール・ド・フランスも山岳コースが文字通り「山場」となりますが、やはり「人力」で大自然に立ち向かうというイメージに「山登り」はピッタリなのでしょう。
日本でも近年グランフォンドのイベントが盛んですが、八ヶ岳とか安曇野といった高い山のある地域で開催されるのは当然と言えます。
一方、日本で一番高い山の無い千葉県ではグランフォンドは不可能の様に思われます。ところがネットで調べてみると「清和の森サイクリング」というイベントがヒットします。参加者のコメントを読むと「サイクリングとは名ばかりの過酷なグランフォンドでした」と有ります。
100Km余りのコースで獲得標高は2,200m・・・。これ、完全に「グランフォンド八ヶ岳」並のイベントじゃん!!
しかし、高い山の無い千葉でどうしたら2000mのコースを作れるのか・・・。
清和ロマンの森→鹿野山(秋元口)→もみじロード→愛宕山→鴨川→清澄山→三石山→清和ロマンの森
エグイ・・・「塵も積もれば山となる」とはまさにこの事。さらに、結構劇坂コースが紛れています。最初の鹿野山の秋元口からの登攀は平均勾配8.6%、10%越えが所々に有ります。最初にここで足を削られて、はたして一日山道を走れるのでしょうか・・・。
■ 一人「グランフォンド千葉」を敢行 ■
一度参加してみたいと思っている「清和の森サイクリング」ですが、出発地点の「清和ロマンも森」は房総半島のど真ん中。車の無い私には自転車で行って前泊するしか大会出場の方法が有りません。さらに、イベント後も自力で君津まで走る必要が有ります。・・・これは無理です。
そこで、「グランフォンド千葉」を勝手にコース設定してみました。
浦安 → 鹿野山(宝竜寺口) → 更科 → 志駒川もみじロード → 大山千枚田 → 愛宕山 → 鴨川 → 清澄山 → 養老渓谷 → 大福山 → 上総牛久 → うぐいすライン→曽我(輪行)
どーだ!! これなら獲得標高は2000mを超えるでしょう。さらに走行距離も200kmを超えそうです。これを一日で走れば、立派なグランフォンド。
■ 2回挫折している ■
実はこの企画、先々先週、先週とチャレンジして二回とも挫折しています。山登りのコースが多いので久々にカーボンのレモン1号君を持ち出したのですが・・・・いい気になって飛ばすと鹿野山の入り口で既に足が終ってしまい・・・結局もみじロードから長狭街道で鴨川に行って、娘の下宿でマッタリして電車で帰る事2回・・・。
そこで土曜日は「七分目」の力で鹿野山を目指します。朝6時半に浦安を出て、君津到着は9時半。メーター読みのAVが27.2Km。ようやく体がカーボンバイクの乗り方を思い出してきて、クロモリよりは2段軽いギアーで「クルクル回す」走法で体力を温存。
鹿野山も普段は使わないインナーギアーに最初から入れ放しで7分目の力で体力を温存して山頂に。それでも、タイムは21分台。意外に後半に足を残せるので、クルクル走法は効果的かも知れません。
山頂で休憩する事無く、マザー牧場で写真を一枚パチリ!! 直ぐに更科口にダウンヒル。
■ 「不動の名水」を堪能 ■
「志駒川もみじロード」をしばらく走ると「不動の名水」が現れます。
自由に水が汲める様になっているので、車でいらした方が大型のペットボトルに何本も水を詰めています。飲んでみると・・・とても柔らかで美味しい。「志駒川沿いの断崖岩を切り抜いた不動様の岩の割れめから沸き出している霊水」なのだそうだ。
房総の名水は「上総掘りの深井戸」から出ている水も多く、これらの水は地下400m程の堆積物を含んでいるので硫黄臭がきつい。「久留里の名水」も半硬水で硫黄臭がします。しかし、「不動の名水」は「表層水」の様で、とても柔らかな軟水。
ペットボトルに水を汲んでいたオジサンは、ご飯とお茶用に2週間分を汲んで行かれるそうです。
「もみじロード」は君津市の志駒川沿いを走る県道です。ゆるやかなアップダウンを繰り返し、山里の間を抜けて行くコースですが、とても素晴らしい景色が続き、走っていても楽しい道です。11月下旬には「もみじ」が見頃を迎えるでしょう。
■ 大山千枚田は「千枚田の夜祭2015」の準備がされていた ■
もみじロードは長狭街道に横根峠で突き当ります。そこから鴨川方面にしばらく登り、少し下りを楽しんだ後、県道88号線を右折して「大山千枚田」を目指します。
鴨川市の「大山千枚田」は「東京から一番近い棚田」です。機械が入れないので近年は耕作放棄されていた所を「棚田トラスト制度」で東京近郊の人達に貸し出した所、沢山の応募が有り、昨今では故郷再生の拠点として、都会の人々と農業の接点を提供しています。
この棚田ですが、毎年秋口から新年までLEDキャンドルでライトアップされます。そして、10月の末には「棚田の夜祭」というイベントが開かれれいます。3000本の松明が棚田を縁取る中、様々なステージイベントが3日間に掛けて繰り広げられます。
本日の千枚田は、松明もセットされ、祭りの準備は万端です。ところで・・・祭りはいつなんだろう・・・?
■ 何と、同行の方が出現 ■
棚田の写真を写メしていたら、自転車乗りさんが登って行かれました。ここから先は愛宕山に向かうコースですが、ナビの無い私はきっと道に迷います。これはグットタイミングとばかりに、自転車乗りさんを追います。
話しかけてみると、この方も「清和の森サイクリング」のコースの下見だそうです。「清和ロマンの森」に車をデポして、コースを正確に巡っているのだとか。愛宕山に至る道は「劇坂」と聞いていたので、これは嬉しい。同行者がいれば勇気百倍です。
そんなこんなで、道に迷う事も無く、劇坂も話している内に知らず知らずにクリアーして、どうやら愛宕山まで来た様です。
■ 日本一低く、そして日本一登頂が難しい「県の最高峰」 ■
愛宕山は標高408.2mで千葉県の最高峰。ところが、これは日本の都道府県の中で一番低い最高峰です。沖縄ですら石垣島が526m有ります。
ところが、この一番低い最高峰は、一番登頂が難しい最高峰とも言われています。その理由は、山頂一帯が自衛隊のレーダー基地になっているので立ち入りが出来ないのです。事前の申請を行えば入る事が出来る様ですが、本日は門の所で引き換えします。
門はシェパード犬と若い隊員に守られていましたが、門の写真を撮る許可を頂きました。
この「峯岡山分屯基地」は入間基地の分駐屯地ですが、首都圏に接近する敵航空機を監視すると同時に、パトリオットミサイルの誘導も行う様です。要は首都圏防衛の要。
■ 鴨川までは快調に到着 ■
「同行の氏?」とは長狭交差点で分かれ、私は一路鴨川を目指します。途中、ブルベの集団とすれ違います。朝、幕張メッセで、ディスクホイールを履いたブルベ参加者と話をしましたが、200Kmブルベの皆さんの様です。既に100Km以上を走られているはずです。
鴨川には13時に到着。ここまで135Km、浦安を出てから6時間半。「7割の力」を意識して走ったせいか、脚は十分に残っています。2週間程、あんなに苦しんだカーボンバイクにも体が順応しました。むしろクルクル走法で登りは快適。これならば、清澄山と大福山もクリアーは確実です。
■ 痛恨のDNF ■
娘のアパートに立ち寄って弁当を一緒に食べていたら、「お父さん、今日明日って大山千枚田のお祭りだよ」と言われた。
「えええーーーーー!!。どうりで準備が出来ている訳だぁ!!」
鴨川に自転車で来たのはこのブログの第一回目を書いた2008年の7月でした。それから7年間鴨川に通っていますが、未だに「千枚田の夜祭」を見た事は有りません。夜のイベントという事もあって、泊でないと見れない事もさることながら、毎年の様に「忘れて」しまうのです・・・。
何というラッキー。娘よでかした!!
しかし、なんという不幸・・・。「千枚田の夜祭」を見に行ったら「一人房総グランフォンド」はここで中断しなければなりません。
逡巡したあげく、「一人房総グランフォンド」は来週以降に再チャレンジする事にします。体力が余っているのに、ここで痛恨のDNF(Did Not Finish =途中棄権)です・・・。
■ 松明に縁取られた幻想的な棚田はまさに幽玄の世界 ■
棚田の夜祭は4時半頃から始まります。鴨川駅と鴨川市の総合スポーツ施設からシャトルバスが運行されていますが、10Km程度なので自転車でGO。夜間走行になるますが、長狭街道の交通量は少ないので大丈夫でしょう。
18時半頃に棚田に到着すると、辺りはもう真っ暗。3000本の松明と、10000個のLEDキャンドルが棚田を縁取っり、それはもうこの世の物とは思えない光景。
iPhoneで写真を撮りましたが、どうしてもピントが合いません。上の写真はネットからお借りしました。
観光客の方々は千人以上はいらっしゃると思うのですが、田の畔道に座っているので、ほとんど視界には入りません。(暗いので)。ただ、大勢の人の気配だけがしています。空には月が登り、ひんやりとした夜風が時折吹きぬけて行きます。
いわゆるテキヤの屋台は出ておらず、有志団体や地元の食堂がテントで出店していました。熱々の磯汁とサンガ焼きを食べて体を温めます。
■ 三味線と和太鼓のコラボに鳥肌 ■
棚田には特設ステージが設けられていて、7時頃から三味線と和太鼓の演奏が始まりました。
三味線は星野通映(みちやす)さん。和太鼓は熊谷傅治郎さんという組み合わせです。ステージに二人が登場するとステージ前に陣取ったオジサン、オバサンから「みちやすーーー」とか「でんじろーーーー」という掛け声が掛ります。二人ともこのイベントの常連の様でしっかりファンが付いています。
演奏は・・・なんととても現代的でした。和太鼓もドラムセットの様な音域の広い太鼓を組み合わせていますが、何と言っても三味線のソロが素晴らしかった。
ちょっとNYのアンダーグランド辺りのギタリスト達がやりそうなスタイルですが、弦を強く弾く時の附帯音や、弦を抑える微妙な力加減によって倍音を出している様で、星野さんは「伝統的だけど癒しを感じる音楽」と表現していましたが、現代ギタリスト達の演奏スタイルや、インド辺りの弦楽器のスタイル、或いはアフリカのコラーを思わせる素朴な音色を自在に駆使する演奏は、聴いていて鳥肌が立ちました。
いわゆる伝統的な津軽三味線の名手は沢山いらっしゃると思いますが、現代、あるいは世界の音楽とコミットする奏者というのは珍しいのでは無いでしょうか。日本で演奏させておくのは勿体ない・・・むしろNY辺りで尖ったミュージシャン達と一緒に演奏させたい。
成田山の「弦まつり」の映像があったので紹介しておきます。
鴨川の自然の中で、夜風に吹かれながら素晴らしい音楽を堪能しました。
■ もしかして日本で一番近くで見れる打ち上げ花火? ■
フィナーレは棚田の底から打ち上げる花火でした。これ、恐い程近くで炸裂するので迫力満点です。もしかしたら日本で一番近くで観れる打ち上げ花火かも知れません。
ドローンが空中から花火を撮影するというオマケ付でしたが、ドローを花火が直撃するのではないかと見ていてハラハラしました。
19時過ぎにイベントは終了し、一路鴨川に戻ります。
本日の走行距離は167.5Km。獲得標高は1521mでした。
■ 「グランフォンド2日目」は・・・体が重い ■
翌日は10時頃に鴨川を出発します。二日連続でロングライドは初めてですが、昨日の疲れが筋肉に残っているので、体のキレが有りません。
安房天津の街を通り抜けたら、大きな白木の鳥居が目に留まります。天津神明宮の鳥居です。先日の「鳥居曳」の祭りで20年ぶりに造り替えられました。街の人達が磨いた表面はツルツルです。清澄の山から切り出された杉の巨木は、1年の間、様々な神事を経て、立派な鳥居となり、街を見守ります。
丁度「房総ジャンボリー」が開かれていたので、境内は人で賑わっています。古物を扱う店や、自然食を扱う店など、ちょっとしたフリマ感覚です。本堂の前のステージではイベントに参加するミュージシャンが音合わせをしていました。エレキギター、結構上手いのですが・・・神社の境内でブルースの短いフレーズを聴くのは・・・シュール。本番はボサノバデュオらしいのですが、この方、ギンギンのブルースギターが弾けるのでしょう。
■ 麻綿原高原を登る ■
昨日、痛恨のDNFとなってしまったので、本日は気合を入れる為に麻綿原高原を内浦県民の森側からヒルクライムします。後半にかけて斜度が増すコースです。クルクル作戦でスピードは抑え気味に登った所、結構楽に登れました。頂上で休憩せずに、そのまま下りに突入します。
麻綿原から養老渓谷に抜ける林道は小石が浮いているので下りは細心の注意を払ってソロソロと走ります。コーナーでブレーキを掛けると前後輪とも簡単にドリフトします。
■ 大福山にも登って行こう ■
順調に養老渓谷に到着して一休みした後、まだまだ登れそうだったので、大福山にヒルクライムを敢行します。
養老渓谷側から登ると序盤に20%はあるのでは無いかという急斜面が一か所ありますが、ここさえやり過ごせば、後は大した事の無い登りです。さすがにダンシングすると腿の裏側が攣りそうになりますが、なんとか頂上をクリアーしてそのまま下ります。
月崎方面への下りは、登り返しも多くてライフポイントを削られます・・・。
■ 向かい風との戦い ■
月崎の駅で一休みします。山間を抜けたら強風が向かいから吹いていました。一瞬、小湊鉄道で輪行しちゃおうかという誘惑が頭をもたげましたが、列車は1時間は来ません。やはり、追い風に向かって走るしか無い様です。
駅舎の近くの小屋の表面は山野草に埋まっています。まるでトトロの小屋の様な趣ですが、野菊やサラシナショウマなどが満開でした。
■ 仕上げは「うぐいすライン」 ■
向い風に悩まされながら、30kmを切るスピードで上総牛久に到着。まだ明るいので、「うぐいすライン」の登り下りを最後に加える事にします。
軽めのギアーでクルクル回せば、結構スルスルと登るもので、茂原街道まで楽に着いてしまいました。ここからはモロ向かい風・・・楽しくありません。
体力よりは気力が削られて・・・曽我からは輪講で新浦安に。
思わぬアクシデントで痛恨のDNFに終わった今回の「一人グランフォンド」。
一応、二日目は83.3km走って、獲得標高は1310mでした。
二日合計で250.8km走って、獲得標高は2831mでした。
いつもは1日で走る距離を、初めて二日に分けて走りましたが・・・二日目は体が重くてキツかったです。来週はもう一度チャレンジしたい・・・。