人力でGO

経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

日本の不景気の原因・・・高すぎる住宅取得コスト

2016-08-25 06:44:00 | 時事/金融危機
 

■ 日本の住宅は高い ■

日本の消費の落ち込みの一因に、「住宅コストを除いた後の可処分所得が低い」という事があるのではと・・。

1) 狭い国土に人口が密集しているので土地の価格が高い
2) 耐震基準が厳しい為に建築コストが諸外国に比べて高い
3) 新築志向が強く、結果的に住宅取得コストを押し上げる
4) 賃貸住宅も同様の理由で家賃が高い

住宅取得世代の消費常用を見れば明らかな様に、マイホームを買った途端に家計は厳しくなり、消費や娯楽が抑制されます。

■ M6程度の地震で崩壊したイタリアの住宅 ■

イタリア中部でM6程度の地震が発生しましたが、住宅が崩壊して多数の死者が出ています。煉瓦を積み上げて漆喰を塗っただけの建物は地震で簡単に崩壊します。

日本の耐震基準を満たした建造物は、戸建て住宅にしろ、鉄筋コンクリートのマンションにしろM6程度の地震で倒壊する様な事は有りません。(耐震基準が低かった時代の建物や手抜き工事は別ですが)

海外の鉄筋コンクリートの住宅を見ると、地震が多いロスアンゼルス近郊ですら、柱や梁が細く、こんなので地震に耐えられるのか心配になります。(おまけにコンクリートの施工が酷い・・)

日本は巨大地震が発生する度に耐震基準が強化され、建築コストは当然上昇してきました。

■ 一生を縛る「リコースローン」 ■

住宅を取得すると30年以上に渡りローンに縛られます。この間、リストラに合ったり、会社が倒産してもローンは払い続ける必要が有ります。

日本の場合はリコースローンなので、担保になっている住宅を手放しても担保割れになっている部分の返済義務から逃れる事は出来ません。

日本は「新築志向」が強いので中古住宅の価格は極端に低く、マンションも入居したその日から値下がり始めます。結果的に、ローンを払えなくなって住宅を手放しても手元に1000万円程度の借金が残ります。

この様な事態を避ける為に、ローン返済者はなけ無しの可処分所得から、万が一に備えて貯蓄に勤しみます。

アメリカなどではノンリコースローンが一般的ですから、住宅を手放した時点で借金はのこりません。これが中古住宅市場に潤沢な在庫を供給する事になり、結果的に中古住宅市場の流動性が高まり住宅取得コストを下げる結果に繋がります。

■ 銀行がリスクを取らないノンリコースローン ■

リコースローンとノンリコースローンの違いはリスクの所在にあります。リコースローンの場合は、銀行は一度お金を貸せば、ローン返済者が住宅を手放しても銀行は損をする事がありません。

一方、ノンリコースローンの場合は銀行は損をする事が有ります。ですから、住宅ローンをMBS(住宅担保証券)に加工してリスクヘッジするシステムが発展しています。

MBSなどのリスクヘッジでは、住宅債権のリスクは銀行単体ではヘッジされますが、金融システム全体のリスクは減りません。「大数の原理」で何となく誤魔化されていますが、リスクは存在し続けます。

どちらが良いかは一概には言えませんが、債権者である住宅取得者にとっては多少金利が高くともノンリコースローンの方がリスクは少なく、生活状況に応じて住み替えが出来るというメリットもあります。

■ 借家という選択 ■

所為の低下や、雇用環境の悪化で「持家信仰」は次第に薄れて来ています。

従来は「借家=木造アパート」というイメージもありましたが、鉄筋コンクリートの賃貸物件や、分譲物件の賃貸化などにより良質な借家が増えています。こうなると、持家と借家でどっちが得か、真剣に考える必要が生じて来ます。

「家は資産」というのは一昔前の考え方です。実際に住宅に住み始めた途端に資産価値が減少し、25年程度で上物(建物)の価値はゼロと見なされます。

マンションを買うと毎月管理費と修繕積立金を払い、築20年程度で内装や設備の更新時期がやってきます。水回りのリフォームは結構高いです。

賃貸住宅の場合や契約金や敷金・礼金などが在りますが、賃貸市場がダブついているので、敷金礼金ゼロなんて物件もチラホラ。

今後、人口減少に伴って日本の空家率はどんどん上昇します。(但し、古い一戸建てや古い木造アパートから空家になります)。そうなると賃貸物件の家賃はどんどんと低下して行きます。こうなると「一生借家」という選択をする人も増えるでしょう。

■ 所得、家族構成、に合わせた住み替え ■

終身雇用が崩れた現代において、住宅を取得する事は「求職する地域が限定される」というデメリットも見過ごせません。「関西の景気が良いのに、東京近郊から離れ慣れない・・・。」こんな事態も生まれて来ます。

実際にリーマンショック以後、アメリカでは中古住宅の価格が低下したので、住宅を手放す事が出来ず、地域間の雇用の流動性が損なわれた時期が在りました。

この様に「持家信仰」を捨てる事で様々なメリットも生まれて来ます。

■ 老後の家賃 ■

問題は所得が無くなり年金生活となった後の家賃です。

借家では一生家賃支出の心配が付きまといます。しかし、考え様によっては、借家によって浮いたお金を貯蓄に回したり、運用に回せば、老後の家が買えなくもない。夫婦二人ならワンルームで十分でしょう。

介護付マンションが人気ですが、その為の資金を「賃貸住まい」で貯めるのは合理的は発想かも知れません。

■ 「持家信仰」を捨てると日本は豊になる? ■

思い付に過ぎないかも知れませんが、「持家信仰」を捨てると可処分所得が増えて消費が増えるかも知れません。「持家信仰」を捨てると、貯蓄が増えて老後の心配が減るかも知れません。

いっその事、住宅をインフラとして整備すれば、国民は「住宅」という呪縛から解放されるかも知れません。

「持家の方が得」というのは右肩上がりの経済成長で、住宅価格が上昇する時代の考え方かも知れません。