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経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

「集団的自衛権」は必要か・・・環太平洋軍事同盟への布石?

2014-05-19 05:31:00 | 時事/金融危機
 

■ 集団的自衛権って何? ■

安倍首相が『集団的自衛権』の憲法解釈の見直しを指示しました。

国連は侵略的な行為に対して国家が「自衛の為の戦争」を行う事を認めています。さらには、武力行使に際し同盟国が共同で自衛の為の戦闘を行う「集団的自衛」をも認めています。

一方、日本は憲法9条で「戦争放棄」を宣言し、「いかなる軍隊も持たない」事を宣言しています。しかし、朝鮮戦争が勃発し、アメリカが日本に再武装を許した事で、「警察予備隊」が1952年に発足しています。警察予備隊は後に自衛隊へと発展します。

かつては「自衛隊は軍隊か」などという不毛な論争もありましたが、自衛隊の装備と人員は世界有数の軍隊であり、「自衛隊は軍隊では無い」などという発言は国際的には全く通用するものではありません。

日本は自衛隊という軍隊を持ち、国連の認める「自衛の為の戦争」を遂行できる能力を有する国家ですが、「集団的自衛権」に関しては1981年の憲法解釈では認められていませんでした。

日本は憲法9条によって、自国が攻撃された場合のみ戦争が許される(専守防衛)と憲法を解釈した場合、アメリカ軍が攻撃を受けたとしても、日本自身が攻撃対象となっていなければ米軍と共同で戦争を行う事は出来ないと判断されていたのです。

仮に尖閣諸島に中国軍が上陸した場合、これは明らかな中国による日本への侵略行為ですから、自衛隊は中国軍と交戦出来ますし、自衛の為にアメリカ軍と共同で戦う事も許されています。

一方、例えば尖閣近海で日中に緊張が高まった時に、中国が米軍を攻撃しても、自衛隊は米軍を守る事が出来ません。日本本土が侵略されるか、自衛隊の艦船や、日本の民間の船舶などが攻撃されなければ、自衛権が発動しない為です。

この為、現在の日米安保条約は一方的にアメリカが日本を守る形になり、アメリカとしては不平等な条約となっています。

■ 「他国の戦争に巻き込まれる」という恐れ ■

「集団的自衛権」を認めない理由は、「専守防衛」の日本が不用意に他国の戦争に巻き込まれる怒れがあるからです。

例えば、朝鮮半島で有事が起きた場合、在韓米軍が交戦に入ります。その際、集団的自衛権を拡大解釈すれば、アメリカ軍を守る為に日本の自衛隊が戦争に参加するという判断も不可能ではありません。

従来の多くの日本人はこの様な事態を恐れており、今でも世論の過半数は集団的自衛権に否定的です。

■ イラク戦争では集団的自衛権を行使している ■

「集団的自衛権が無い」とされる日本ですが、イラク戦争では戦闘が継続するイラク本土に自衛隊を派兵しています。

この時、当時の小泉首相は「自衛隊が居る場所が非戦闘地域です」と国会答弁しました。まさに禅問答の様な答弁ですが、この解釈によってイラク派兵は「戦闘では無い」為に「集団的自衛権の行使」では無いとされました。

しかし、実際には自衛隊の陣地にロケット弾が着弾するなど、イラクはれっきとした戦闘地域でしたので、自衛隊の派兵は実質的な「集団的自衛権の行使」だと考える事も出来ます。

日本近隣の紛争では無く、遠く中東の地で発生したアメリカの身勝手な戦争に、自衛隊はなし崩し的に参加していた事になります。

■ 憲法解釈は都合良く変更されてきた ■

従来から自衛隊を巡る憲法解釈は、都合良く変更されて来ましたが、それはアメリカや国際社会からの要請があった場合に限られて来ました。

1992年のカンボジアのPKO参加は自衛隊の始めての海外覇権でしたが、その後も自衛隊は様々なPKOに参加しています。

湾岸戦争ではアメリカは海上自衛隊に兵站輸送の協力を要請しましたが、これは実現せずにずにお金だけを出しました。

イラク戦争では遂に戦闘地域?に自衛隊を派遣しました。同時に、インド洋での他国艦船への給油活動も行い、ライクへの物資の空輸も航空自衛隊が参加しています。

ソマリアの海賊に対する作戦にも海上自衛隊は参加しており、2010年にはジプチに自衛隊としては初めての補給基地を建設しています。(これ、意外に国民には知られていません)

■ 安倍首相が憲法解釈の変更を急ぐ理由は・・・ ■

今回の安倍首相の集団的自衛権を巡る憲法解釈の変更要請がこれまでと異なるのは、具体的な戦闘が起きていないのに、変更に着手しようとしている点です。

「集団的自衛権」を認めるかどうかは、日本国憲法の根幹に関わる問題なので、本来は憲法を改正すべき事柄です。しかし、戦後教育によって植えつけられた「戦争アレルギー」は未だに国民の間に根強く残っています。特に、投票行動に積極的な高齢者は戦争を嫌っています。ですから、日本において憲法9条を改正する事は事実上不可能であり、安倍首相は憲法解釈の変更で「集団的自衛権」を確立しようとしています。

ところで具体的な有事が起きていない今、政府が集団的自衛権の確立を急ぐ理由は何なのでしょうか。

一つには、衆参両院で自民党が安定多数を持っている事が大きいでしょう。「憲法解釈の変更」に対しても野党は強烈に反発しています。しかし、自民党が衆参両院で過半数を占める国会で、重要法案や予算案をボイコットして対抗する事は不可能です。

「改憲」には「国民投票」という高いハードルが存在しますが、「憲法解釈の変更」は、国会の議決無くして実行可能なのです。

結局、一党が衆参で安定多数を獲得した時点で、国民の意思は国会に反映されいのです。これが民主主義の最大の罠です。そして、「アベノミクス」というアメに釣られて自民党に投票したのは多くの国民です。

■ 「環太平洋条約機構」的な軍事同盟が結成されるのか? ■

安倍内閣が強引な手法を用いてまで「集団的自衛権」の確立を急ぐ理由を邪推してみます。

現在、日本は中国との間で尖閣諸島という領土問題を抱えています。もし、中国軍が尖閣諸島に上陸する様な事が起きれば、自衛隊は「自衛権の行使」という国家として当然の権利を発動する事が出来ます。米軍がこの作戦を支援するとしても、現在の憲法解釈はそれを合憲と判断します。ですから、尖閣問題は「集団的自衛権」の確立を急ぐ理由に成り得ません。

一方、ベトナムに目を転じれば、中国は相当強引な行動に出ています。自衛隊は世界屈指の軍隊ですし、日米安保条約がありますから中国は尖閣には容易には手出しできませんが、ベトナムは大国と軍事同盟を結んでいないので中国の冒険的行動を抑止する事が出来ません。

アジアではASEANが国際的な協調の基軸となっていますが、ASEANは軍事同盟では無いので、個々の国々は個別の安全保障条約で中国などに対抗するのが現状です。一方、中国は上海協力機構という国際協力の枠組みを構築しています。上海協力機構は軍事演習を共同で行うなど、NATOやワルシャワ条約機構の様な共同安全保障としての枠組みを持ち合わせています。

上海協力機構SCOの主要国は中華人民共和国・ロシア・カザフスタン・キルギス・タジキスタン・ウズベキスタンの6か国です。これにモンゴル、インド、アフガニスタン、イラン、パキスタン、東南アジア諸国連合(ASEAN)などがオブザーバー加盟しているので、アジア大陸の国々の軍事連合に発展する可能性が有ります。

これに対して、日本や韓国やフィリピンやベトナムなど、中国や北朝鮮と緊張関係を持つ国々は個別にアメリカと安全保障条約を結んでいるだけなので、上海協力機構に対抗する軍事同盟は存在していません。

東アジアの海洋における中国との緊張が高まる中で、どの国からとも無く集団安全保障の枠組みを作る話が出る可能性は低くありません。そして、この安全保障の中心になるのはアメリカでは無いでしょうか?

しかし、「集団的自衛権」が認められていない現在の日本は、この様な軍事同盟に参加する事が事実上不可能です。何故なら、仮にベトナムと中国が交戦状態になった場合、同盟国である日本はベトナムを支援して戦闘に参加する必要が生じるかもしれないからです。

■ アメリカの単独覇権が弱まる一方で・・・ ■

アメリカは財政上の制約から、従来の単独覇権主義を維持する事は出来ません。従来ならばアジアで中国が台頭すれば、先頭に立って中国と対峙した米軍ですが、現状は第七艦隊は台湾海峡を通過する事すら躊躇しています。

ウクライナで欧米諸国と対立するロシアは中国との連携を深めて来ており、アジアにおいて上海協力機構に対抗し得る軍事同盟の確立は、この地域のパワーバランスを安定させる為には不可欠となります。

日本とて、軍事バランスの変化に無関係では無く、むしろ尖閣問題を抱える当事者となっています。

中国が領土を巡る姿勢を強硬なものとすればする程、日本の世論も「軍事同盟止む無し」「集団的自衛権の行使は認めるべきだ」という意見に傾いて行きます。




免れ得ない状況としてはアメリカが日米安保条約を一方的に破棄して、新しい安全保障の枠組みに日本が参加する事を要求して来た場合です。日本にNOと言う選択肢は残されていません。

・・・・とまあ、この問題を性急に進めようとする安倍首相を見るにつけ、こんな筋書きが出来上がっているのではないかと妄想してしまいます。こういう状況を一般的には「マッチー・ポンプ」と言います。


戦争を回避する為の陰謀論・・・「シラケ」てしまえば戦争は出来ない

2014-05-15 10:41:00 | 時事/金融危機
 

■ ベトナムと中国の確執の歴史は長い ■

かつて同じ共産圏の中国とベトナムが戦争をしていた事を知る若い人達は少ないでしょう。

「中越戦争」と呼ばれる戦争で、カンボジアの支配を巡る戦争でした。

カンボジアは中国の支援したポル・ポト政権が支配していましたが、「文化大革命」のカンボジア版とも言える大量虐殺によって国内ではポル・ポトに反抗する動きが高まります。カンボジアと国境を接していたベトナムはベトナム戦争で共産化し、ソ連との関係が緊密でした。

当時中国とソ連はアムール河(黒龍河)の国境線を巡って軍事衝突を起すなど決して中ソ関係は良好とは言えず、ソ連との関係が親密であったベトナムにとって、中国の傀儡政権であったポル・ポト政権は煩わしい存在でした。

ポルポトの圧政に反抗する形でカンノジアで内戦が発生すると、べトナムは反政府軍を率いるヘン・サムリンを支援する名目で、カンボジア領内に侵攻します。そして、ポル・ポト政権は打倒され、1979年1月にヘン・サムリン政権が樹立されます。

これに対して中国は50万の兵をを中国とベトナムの国境に集結させ、10万の兵力でベトナム領内へと侵攻します。主力軍をカンボジアに投入していたベトナム軍は、北部の戦線で後退を続け、ハノイ近郊に防衛ラインを築きました。

ハノイ近郊でベトナム軍の主力が合流した為、ここで戦闘は膠着状態となりまさすが、ソ連から武器供与を受けてアメリカ軍を撃破したベトナム軍は中国軍に引けを取らず、止む無く中国軍は国境まで撤退します。

それ以来、中越国境は緊張を続けていましたが、中国が改革開放路線を打ち出して経済発展を続け、同様にべトベムも資本主義経済を導入するに当たり、経済大国となった中国との関係は改善して行きます。

近年は中越国境では人民元で貿易決済が行われる程、緊張緩和は進んでいました。

■ 西沙諸島、南沙諸島における中越の対立 ■

南シナ海における中国とベトナムの対立は、最初はアメリカに支援を受けた南べトナムと中国の領土問題でした。
 
「西沙海戦」とも呼ばれる戦闘が、1974年に発生しており、装備に勝る中国海軍が南べトナム海軍を圧倒し、西沙諸島を占拠します。この戦闘ではアメリカ海軍が支援をしている事からも、東西対立の一環の中で行われた戦闘でした。

一方、共産化したベトナムと中国の間で1988年に南沙諸島の環礁の領有を巡って衝突が発生しています。この衝突は中越戦争の中で起きた共産国家同士の戦いです。

中国は南沙諸島(ベトナム名 チュオンサ諸島)を防衛するベトナム海軍に対して攻撃を仕掛けます。満潮時に海面下になる環礁の一つをベトナム軍が防衛していましたが、ほぼ無抵抗のべトナム兵士達を、中国海軍は艦船から銃撃し、100名あまりのベトナム兵の命が失われました。

中国とべトベムは当時戦争状態でしたから、この戦争においてどちらが悪いという判断は出来ません。しかし、無抵抗の兵士達を虐殺した事で、ベトナム人の中国への憎しみを深いものにしています。

Youtubeに当時の映像がアップされています。多分、べトナム人女性と思われるたどたどしい日本語のナレーションが付いています。



映像にある様に、ほぼ無抵抗な兵士達に、中国海軍は予告射撃無く、大口径の機銃を集中射撃しており、これは当時の海軍関係者にショックを与えました。ほぼ虐殺に近い状況です。


■ 国境を接する国に付きまとう領土問題 ■

私は中国が悪いともベトナムが正しいとも判断は出来ません。国境を接する国が戦争状態に陥れば、国境付近での戦闘は避けられません。特に制海権に絡む離島の領有を巡っては、両国が自国の正統性を主張して戦闘も厭いません。

特に当時は、ベトナムも中国も近代国家としては幼く、領土的野心を隠す事をしない時代でした。

■ 古くて新しい対立を刺激するのは誰 ■

問題は日韓の竹島問題や、日中の尖閣問題、フィリピンやベトナムと中国の間の西沙・南沙諸島問題など、昔から存在する領土的対立が、最近になってクローズアップされて来た事です。

直接的な原因は中国海軍が近代化によって沿岸海軍から外洋作戦行動も行える海軍に成った事にあります。中国は国益上、南シナ海や東シナ海の制海権を確立したいと望んでいます。

この地域の軍事バランスはかつてはアメリカの第七艦隊によって守られていました。第七艦隊に中国海軍は逆立ちしても適わないので、中国の制海権や領土的野心は抑えられていました。

同時に中国は経済成長を遂げる上でアメリカからの投資を必要としていましたから、表立ってこれらの地域で問題を荒立てる事を避けていました。

中国経済のアメリカへの依存度は以前低くは無く、さらに中国経済はアメリカの投資によって発展しています。その意味では、中国は現在もアメリカと対立を深めるメリットはあまりありません。

それなのに、尖閣を始めとする領土問題を活発化させています。一方で、日本やフィリピンやベトナムもこれらの地域の領有を巡り、中国を刺激する事を繰り返しています。

■ アメリカを引き止める為のヤラセ? ■

一部には中国を巡る領土問題は、アメリカ海軍のアジア地域からの撤退を引き止める為の日本やフィリピンやベトナムのヤラセだという見方をする人達も居ます。

しかし、アメリカは身勝手な国ですから、アジア地域で自国の利益が無いと思えば、第七艦隊を中国軍の脅威に曝す様な事はしません。とっとと、ハワイ-グラムラインまで後退します。

米軍は財政難回避と兵器の近代化の名目で、「トランスフォーメンション」と言う戦略上のロードマップを作成しており、世界各国から軍を引き上げる方向に動いています。

在韓米軍は2016年に撤退させると発表され、韓国での指揮権は米軍から韓国軍に移管される予定でした。沖縄在留米軍のグアム移転も、この流れの中で実施される予定でした。

■ 昨今のアジアの緊張はアメリカの戦略変更か、或いは置き土産か? ■

先日オバマ大統領が来日した際に、「尖閣諸島は日米安保条約の適用内」と明言しています。これは以前ヒラリー元国務長官も口にしていたので、アメリカが戦略を変更さいた訳ではありません。従来通りの立場を確認しただけです。

この発言に勢いを得た様に、安倍政権は集団的自衛権の確立に向けて本腰を入れ始めました。「アメリカが後ろ盾になってくれるなら戦争も辞さず」的な姿勢とも言えます。

しかし、グアムの米軍基地の拡張は着々と進行しており、アジアの海兵隊の主力はグアムに後退する事は確実な様です。

戦略的には沖縄の海兵隊基地は中国本土からあまりにも近すぎて、有事の際には中距離ミサイルの良い標的となります。ミサイルによる先制攻撃が可能な現代において、沖縄は既に戦略的な価値を失っているとも言えます。

もし日中間で尖閣紛争が発生した場合、中国が沖縄へのミサイル攻撃という冒険に出る可能性はゼロではありません。もし、米軍兵士に犠牲が出れば、米中開戦という事態が回避出来なくなるかも知れません。世界の安定の為には、米軍を韓国や沖縄に駐留させておく事はリスクになります。米軍はオバマ大統領の発言とは裏腹に、徐々にアジアから徹底して行くのではないでしょうか。

一方、米軍が抜けた穴を、日本やその他の国は自力で補わなければなりません。自衛隊は沖縄地域に戦力の移動を始めています。従来は「日本の覇権主義の復活」とアジア諸国の警戒を煽る為に控えていた戦力移動を実行する程、日中間の緊張は高まりつつあります。

こうして、アジア各地で中国との緊張を煽りながら米軍は軸足を中央太平洋に写し、アジア諸国は米軍から武器を大量に購入して中国と対峙する事になります。

これは従来の「オレが守ってやるゼ」という姿勢から「言う事を聞かないと守ってやらないぞ」という姿勢に変化している様に思われます。

米軍に直接被害が発生しなければ、アメリカが戦争に巻き込まれるリスクは格段に減ります。

■ 適当な緊張を演出しながら、アジアの盟主の座を獲得するアメリカ ■

アメリカは中国と全面的に対立する気などありませんが、領土紛争が発生して犠牲者が出れば、日本やその他のアジアの国と中国の関係は完全に断たれます。

中国があまり露骨な拡大戦略を取ると、アメリカが出て来ざるを得ないので、多分中国が侵攻するにしても尖閣諸島を占拠するとか、南沙諸島か西沙諸島で死者が出る様な小競り合いをするとか、38度線を越えて北朝鮮が韓国領内にちょっとだけ砲撃する程度だと思われませす。

しかし、これによって中国とアジア諸国は完全に対立し、アジア諸国のアメリカ依存が劇的に高まります。

アメリカは直接的な戦闘をする事無く、アジアの盟主に収まる事が出来ます。


■ ベトナム兵の虐殺映像を見て、日本の軍事費強化を訴える人は・・・ ■

私は陰謀論者なので、「戦争は世界を変革する道具」だと思っています。さりとて小規模な戦闘においても確実に誰かの命が失われて行きます。

「戦争を抑止する最大の手段は核兵器の保有ですが、それが認められていない以上、日本は軍備拡張によって中国軍が容易に戦争を起さない様にするべきだ!」というのが昨今の保守派の主張かと思われます。

しかし、悲しい事に、日本が軍備を拡張しようが、拡張しまいが、誰かが戦争を欲れば、小規模な紛争など簡単に起こす事が出来ます。


現代の戦争は単純な領土的侵略を目的とするのでも無く、相手を殲滅する事を目的とするのでも無く、単に「世界のバランスを変更」する為の道具に過ぎません。

そして、悲しい事に、世界の経営者が戦争を欲する限り、それを抑止する事は不可能なのでしょう。日本国民がどんなに憲法改正に反対しても、専守防衛を貫こうとも、中国がその気になれば、尖閣紛争は明日にでも勃発します。


それを防ぐ手立ては・・・国家の否定ですが、アナーキズムは諦めの一つに過ぎません。


私は、「世界は一部の人達にコントロールされている」と皆が信じる事で、現実的な危機のリアリティーが消失する事が唯一の私達に残された手段だと信じています。


「尖閣で衝突が起こりそうだって!!」
「イヤ、イヤ、あれ、ヤラセだから」


こんな具合に両国の国民が好い感じで「シラケ」てくれるのならば、それが一番なのですが・・・。




何故か〇〇平という中国の元首席の名前を書くと、ブログの一部、或いは全体が文字化けしてしまいます。これ、以前にも起きました。禁句なんですかね・・・。

金融抑圧の罠・・・低金利で日本の利益が失われる

2014-05-15 07:46:00 | 時事/金融危機
 

■ 低金利で国内でリスクに見合う金利が確保出来ない邦銀 ■


先ずはロイターのこの記事を読んで頂きたいと思います。

「焦点:追い詰められる銀行、商業銀行モデルが転換点」 (ロイター・5月14日)
http://jp.reuters.com/article/mostViewedNews/idJPKBN0DU10B20140514

簡単に要約すると・・

1) 日本の金利は極めて低い状態が続いている
2) 日銀の国債買い入れの拡大で国債金利が低下したので預金金利との逆ザヤが生じる
3) 住宅金利も非常に低い水準なので、預金金利との逆ザヤが生じる
4) 銀行は金利確保の為に海外投資の拡大に活路を見出そうとしている


これは金融資本家達の願望記事では無いかと思われます。

ところで、日銀は異次元緩和でマネタリーバースを大幅に拡大しています。本来ならば供給された資金は銀行を通して民間に貸し出され、実体経済を活性化するはずです。

ところが、金利が異常に低い環境では、リスクに見合う投資物件は減少します。日本の金融機関はリスクを嫌うので担保が取れる物件に投資が集中する傾向にあり、住宅ローンなどで過剰な融資合戦が発生し、ローン金利はどんどん低下しています。ゼロ金利で借り入れコストは最低状態ですが、一方で貸出金利の低下で収益性も低下します。

さらに、日銀の異次元緩和で新発国債の7割に相当する額を日銀が購入する事で、国債金利で利益を上げるという濡れてに粟の時代も終焉を迎えました。

国内で有望な投資先が見つからないので、邦銀は海外で資金を運用して利益を確保する必要が生じています。

■ リフレ政策では解決しないゼロ金利の罠 ■

リフレ政策に効果があったのか、無かったのかは意見の分かれる所です。

A) コアCPIが上昇した事から、リフレ政策はデフレ脱却に効果があった
B) コアCPIを上昇させたのは円安で輸入物価が上昇した為で国内の需要は拡大していない


私はBが正しいと思っています。これは単なる円安によるスタグフレーションに過ぎません。昨年前半は確かに景気が上向きましたが、これも株価上昇の資産効果と、公共事業拡大による名目GDPの拡大が観測されたに過ぎません。確かにアベノミクスに対する期待は一時的に高まりましたが、それも昨年後半には縮小してしまいました。

結果として国内金利は低位で安定し、日銀の低金利政策は金融抑圧政策となって国内景気にむしろ悪影響を与えています。

日銀の供給したマネーが国内で循環すれば日本は不景気を脱却出来たはずです。リフレ派の目的もここにありました。しかし、ゼロ金利の罠に陥っている状況では、いくら資金を提供しても有効な投資先は限定され、結果的に大量の資金が日銀の当座預金にブタ積されます。

■ 金融のグローバル化によって内外金利差によって海外に流出する国内資金 ■

リフレ派経済学者があえて目を瞑っている事があるとすれば、内外金利差の問題でしょう。

通貨の価値を毀損させてリフレ政策は実質金利を下げる政策です。これは為替相場の円安にも反映されます。一方、グローバル金融の時代には、投資における国境は限りなく低くなっています。国内金利よりも海外の金利の方が高ければ、資金はどんどん海外に流出します。

日本の金融機関は極端にリスクを嫌うので、リーマンショックの後では委縮して積極的に海外でリスクを取る運用は控えていました。しかし、日銀の異次元緩和というリフレ政策は、国内の実質金利を低下させているので、銀行は湯金金利の逆ザヤを埋める為には、海外で資金運用をせざるを得なくなります。

リフレ政策によって実体経済が回復するにうは時間差を伴います。一方、内外金利差は現状でも存在し、円安で実質金利差は拡大します。こうして異次元緩和によって日本の金融機関は海外に押し出されてしまうのです。

日銀の異次元緩和の発表時期がFRBのテーパリングの開始時期はリンクしていると私は考えています。緩和マネーに支えられた市場は、供給資金の減少で崩壊します。FRBが資金供給を縮小するならば、誰かがそれを補う必要があります。その役目を日銀が担っていますが、日本国内に資金が滞留していたのでは目的は達成されません。

テーパリングには米国債金利を上昇させる効果があるので、日米の金利差が拡大します。こうして、日本国債から押し出された資金は、米国市場や米国債市場へと誘導されます。

■ 国内で運用されなければ日本の景気は刺激されない ■

日銀の異次元緩和にも関わらず日本国内の景気回復実感は乏しい。これは、緩和マネーが国内で運用されずに日銀の当座預金口座にブタ積されている事に原因がありますが、預金金利の逆ザヤが銀行の経営を圧迫し始めれば、資金は日銀の当座預金から引きはがされて金利を求めて市場を徘徊し始めます。

国内融資で金利を稼ぐよりも簡単に海外投資で金利が稼げるならば、金融機関が海外投資を拡大するのは当然と言えます。

こうして、異次元緩和は国内の景気を刺激する事無く、国内の金利を抑制し続けます。

■ 低コストで財政危機を先延ばししたい財務省 ■

日本の人口動態はジム・ロジャースですら絶望的と表現する程酷い状態です。増大し続ける社会保障費と、減少し続ける労働人口を考えれば、景気回復による税収の拡大は限定的です。一方で景気回復が確実になれば金利が上昇し始めますが、累積債務がGDPの200%を超える日本の財政状況は金利上昇に極めて脆弱です。

既に消費税増税程度では改善が不可能な日本の財政を低コストで支える最良の方法は、日銀の財政ファイナンス以外には考えられません。

インフレによる債務圧縮も有効な手段ですが、現在の日本でこれを達成しようと考えると経済が破綻する様な高いインフレ率になります。これは最後の手段とはなり得ますが、現状選択出来る手段ではありません。

むしろ、国内景気が過熱しない様に消費税増税で水を差し、金利を抑圧して国内の金利獲得機会を潰しながら、日銀に国債を着々と買い取らせる事で日本の財政を延命させるのが一番確実な方法です。

■ 利害が一致した国際金融家と財務省 ■

財務省出身の黒田氏が異次元緩和に踏み切ったのには、財務省が日銀の財政ファイナンスを必要としている事が大きく作用しているでしょう。同時に日銀マネーを金融市場に供給させたい国際金融資本家達との利害とも一致します。

明らかに中央銀行の財政ファイナンスである異次元緩和が、国際的な非難を浴びず、円安政策とも言える異次元緩和を通貨マフィア達が看過している理由は、異次元緩和にQE3のバッファーの役目を期待しているからでしょう。

■ 景気回復を餌に釣られた国民 ■

集団的自衛権の確立や憲法改正など、安倍政権が本来の目的を遂行し始めました。

国民はアベノミクスに期待して自民党に安定多数を与えましが、日本の財政の継続性を考えれば景気回復は金利上昇による財政破綻を早めるだけなので、公共部門の支出拡大は2014年度予算では控えめになっています。

一方で、TPP参加や、規制緩和や集団的自衛権など、安倍政権を支持した人達でも躊躇する政策が次々に実行に移されようとしています。

本気で景気回復を望まない財務省や日銀と、日本を戦争の出来る国に変革したい世界の経営者の思惑通りに安倍政権は行動しています。

人間は目先の利益に騙され易く、それと引き換えに多くの物を失うのでしょう。


本日は財務省が景気回復を望まないというトンデモな妄想にふけってみました。予断を捨てて合理性のみを追求すると、不合理に見える事象が意外にも合理的に見えて来ます。「人力でGO」は、トンデモ理論の裏に隠れる合理性を発見する思考ゲームの場だと私は考えています。・・・私にとっての「陰謀論」はそんな遊びだと思って下さい

「資源」と「食料」と「人口」は古くて新しい問題・・・現代の優生学

2014-05-09 04:14:00 | 時事/金融危機
■ 「ローマクラブ」の鳴らした警鐘 ■

「人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって、すでに半世紀が過ぎていた。」というナレーションで始まるのは『機動戦士ガンダム』でした。この作品が放映されたのは1979年です。

この時代、日本は高度成長期にありますが、経済発展に伴う公害や環境破壊が社会問題化した時代でもあります。同時に第一次、第二次石油ショックを経験し、「資源の枯渇」を強く意識していた時代でもありました。

実は「人口増加」や「資源の枯渇」を世界的に最初に警鐘を鳴らしたのは1968年の「ローマクラブ」でした。

wikipediaからその沿革を抜粋します。

イタリア・オリベッティ社の会長であったアウレリオ・ペッチェイ(Aurelio Peccei)[† 1]とイギリスの科学者で政策アドバイザーでもあったアレクサンダー・キングが、資源・人口・軍備拡張・経済・環境破壊などの全地球的な問題に対処するために設立した。世界各国の科学者・経済人・教育者・各種分野の学識経験者など100人からなり、1968年4月に立ち上げのための会合をローマで開いたことからこの名称になった。1970年3月に正式発足。1978年にFEMAを設立。「環境保護主義者」を動かしているのはローマクラブの代表機関であるアスペン研究所であり、彼らがアトランティック・リッチフィールドやその他の大手石油会社から莫大な資金援助を受けている。

ローマクラブは『成長の限界』という薄いレポートを1972年に発表し、石油は後15年で枯渇すると発表します。

ローマクラブは善意の有志を装っていますが、その出資者が石油資本である事からも、石油う資源の有限性を強調する事で、原油価格を高値で安定させる目的を持っていたのではないかと疑われます。

アメリカは1971年8月のニクソンショックでドルの金兌換を停止しましたが、それでもドルが信用を保つ事が出来たのはドルが石油の決済通貨だったからです。そして、1973年と1979年に中東戦争を切っ掛け発生したオイルショックによって、原油価格は10倍に跳ね上がりドル需要を支えるました。

これらの一連の事象に先だって、「石油資源はいずれ枯渇する」と警鐘を鳴らしたのが「ローマクラブ」でし。

ローマクラブの警鐘は、サミュエル・P・ハンティントンが1996年に発表した『文明の衝突』がその後イラク戦争を正当化させた様に、「石油ショック」の下地を作ったとも言えます。

■ 「ローマクラブ」の警鐘はウソでは無い ■

ローマクラブは「石油は後15年で枯渇する」と発表しましたが、それから44年たった現在でも石油は枯渇していません。

では、ローマクラブが嘘をついたのかと言えば、彼らは当時の真実を語っています。資源の採掘限界年数はR/P比で示されます。

R/P比 = 埋蔵量(Reserves)/生産量(Production)

当時確認されていた採掘可能な埋蔵量を当時の生産量で割った結果15年という年数が産出されました。しかし、その後新たな油田が発見されたり、それまで採掘が不可能であった海底の油田が採掘可能となる事で推定埋蔵量は増大して行きます。

最近では、原油価格が70ドルを越えているのでオイルサンドや新海油田、シェールオイルなども産出コスト以上の値段で売れる為に開発が盛んになっています。この様に産出可能な石油資源の量は年々増えるので、石油のR/P比の分子は年々大きくなり、経済成長によって拡大する分子とバランスし続け、結局はR/P比は40年程度で安定しています。

しかし、どこかの時点で産出可能な原油の埋蔵量は確実に減少に転じます。そうなれば、R/P比は減少に転じ、どこかの時点で石油資源は枯渇します。

■ 食料生産のボトルネックとなるリン鉱石の枯渇 ■

「食料危機が来る」と言われて久しくなりますが、食料危機は訪れていません。それは化学肥料と収量の多い改良品種の普及で、世界の食糧生産が拡大しているからです。

しかし、食料生産を支える化学肥料に含まれるリンの生産限界が最近話題になっています。リン鉱石は古代の生物の化石や鳥の糞の堆積が鉱床を形成しているものと、火山性の無機リンの鉱床が存在します。

このリン鉱石のR/P比は60年~130年と推定されます。これは現在採掘可能な推定埋蔵量と、現在の消費量から産出されているので、原油同様に新たな鉱床が見つかれば、年数は伸びて行きます。

何れにしても、将来的にはリン鉱石の枯渇が食料生産のボトルネックになる可能性があります。

■ 増え続ける人口と、増え続ける消費 ■



http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/1151.html より

上のグラフは世界の人口推移の予測です。現在の世界の人口は72億人と言われていますが、私が小学校6年生の頃は(今から35年前)37億人だと社会科で習いました。世界の人口は35年間で倍増しています。


http://www.iae.or.jp/publish/kihou/28-2/09.html より

上のグラフは石油の消費量予測です。
上記サイトから設定条件を引用します。

れはあくまで毎年2%で需要が伸び,且つ円滑な供給がなされた場合を想定した生産予測で,世界の石油可採年数(R/P)が10年を切る2037年で,世界的な危機意識が高まり,R/P=10年を維持するために,消費量の制限が行われ,需要の急速な減退を見せるというシナリオである。今ひとつの円滑化されたカーブは,ほぼ類似のシナリオながら,2030年にピークを打ち,それ以降は年率5%で減退するというものである。
 世界の石油資源量を3兆バレルとした米国地質調査所(USGS)の評価は,いわゆる資源楽観論の代表的なもので,IEA,EIAはじめ多くの公的機関が採用している見解であり,各国政府もこれをほぼ前提とした政策を立案しているものと解されている。


石油から原子力や自然エネルギーへの代替えも進んでいますが、一方で途上国の経済成長はエネルギーや資源の消費を拡大します。

自然エネルギーや再生可能エネルギーも革命的な技術革新な無ければ、石油を代替えする程の供給量を確保出来ません。

この様に、世界の人口が増え続け、資源が有限である限り、50年、100年後には地球の資源は枯渇して行きます。

現在は「資源」よりも「需要や市場」が不足している世界経済ですが、長期的には「資源」の不足が経済成長の足かせとなり、同時に資源争奪が世界の平和を不安定化させます。

■ 人口抑制と優生学 ■

人口が過剰である事への恐れは多分第二次世界大戦前には生じていたのかも知れません。ナチスドイツの優生学研究にロックフェラーが出資してい様です。

戦後は、プエルトリコで強制的な不妊手術が行われたり、或いは女性の権利を守る名目で、ブラジルの黒人女性への不妊手術の普及が試みられてたりしています。

WHOがかつてフィルピンで行ったは破傷風の予防接種は、何故か生殖適齢期の14才から45歳までの女性だけに3年間に5回ものワクチン接種が予定されました。このワクチンには妊娠のために必要なホルモンの一部分β-HCGを含が含まれました。 このβ-HCGは抗体生産を刺激し、女性の卵子が受精したときに彼女自身の自然のHCGを抗体が攻撃する事で不妊化を実現する効果があると疑われています。

この様に、戦前、戦後を通して公に、或いは秘密裏に「優生学」的思想によっる断種や不妊化が実施されて来ました。「優生学」は「劣等」な遺伝子を絶やす事で、「有良」な遺伝子のみを残すという思想で、現代では否定される考え方です

しかし日本でも1996年まで『優性保護法』という名の法律が存在しました。これは戦前の1940年(昭和15年)の国民優生法(断種法)に端を発し、戦後は1948年に『優性保護法』という名称で施行されます。基本的には、遺伝的に問題のある胎児の堕胎の規則を定めた法律ですが、『優生保護法』という名称には「優生学」の名残が見られました。「優生学」事態が社会からマイナスイメージを持って見られる様になったので、1996年に『母体保護法』という名前の法律に改正されています。

「優生学」は戦前は「選民意識」や民族としての「優越意識」を反映していましたが、戦後は人口抑制的な目的に変化していたのではないでしょうか。途上国は人口が多く、それら貧困を生み出していると考えられているので、途上国の人口抑制の為の避妊が公然と行われていました。

私がワクチンに疑念を抱くのは、WHOにこの様な疑惑が付きまとう為で、新型インフルエンザワクチンや、子宮頸がんワクチンなど「あまりに不自然なワクチンのキャンペーン」には何か良からぬ仕掛けが隠されているのではないかと邪推してしまいます。

■ 実は豊かさこそが最大の人口抑止策だった ■

少子高齢化が深刻な社会問題化する日本で、「人工が増えている」という実感は得にくいと思います。日本に限らず、韓国や台湾、中国といったアジアの諸国が今後、日本を上回るペースで少子高齢化時代に突入します。

これらの国で人口増加が鈍化した原因は「生活が豊かになった事」です。農業を中心とした社会では「人=労働力」でしたから、「子供が多い=労働力が居多い」という関係にありました。しかし、工業化によって労働生産性が高まると、人口が必ずしも豊かさとイコールでは無くなりました。

工業化が進展し、さらに高度なサービス業が発達すると、教育による所得格差が広がります。人々は自分の子供に高度な教育を受けさせたいと望みます。一方では現在の生活水準を維持したいと望むので、子供の数か一人か二人になるケースが増えて来ます。

医療の発達で乳幼児や児童の死亡率が低下した事で、バックアップとしての子供が不要となった事も出生率の低下に貢献しました。

この様に、生産性の向上した社会では、豊かさの実現によって人工が減少します。

■ 一人当たりの消費資源量は豊かさと共に拡大する ■

一方、豊になれば一人当たりの資源やエネルギーの消費量が拡大します。



http://www.yonden.co.jp/life/kids/museum/energy/world/004.html より

中国はアメリカの4倍の人口を抱えますが、2010年の一人当たりのエネルギー消費量はアメリカの1/3.5 程度です。

今後、中国がさらなる経済発展を続けると、一人当たりのエネルギー消費量は拡大して行きます。資源消費も拡大しますから、新興国が豊になる事によって、世界のエネルギーや資源のい需給バランスは今後大きく変わる可能性が有ります。

■ 古くて新しいローマクラブの提言と成長の限界 ■

現在の世界は過剰生産性を抱えているので、足りないのは需要です。リーマンショック以降、世界経済の低迷によりこの傾向が堅調になっています。

一方、遠く無い将来、新興国の経済成長によって需要か拡大しますが、資源や食糧の量が供給のボトルネックとなる可能性は低くはありません。

ローマクラブが『成長の限界』を発表した当時は、多分に石油価格の操作という裏の目的が見え隠れしましたが、今後世界は資源によって『成長の限界』を味わうかも知れません。

■ グローバリズムと新興国の発展とは何だったのか? ■

冷戦終結後、世界はグローバリズムという名の元に成長を加速させました。かつて発展途上国と呼ばれた国々は、先進国からの技術と資本の移転によって「新興国」と呼ばれる様になります。それと同時にそれらの国の平均的な生活れレベルが向上し、無節操な人口増加にブレーキが掛かりました。

しかし、さらなる世界経済の成長は、資源の枯渇により限界を迎えるかも知れません。その過程でかつては資源争奪戦争が発生しました。

はてさて、世界の経営者は同じ道を選択するでしょうか・・・?
私はブロック経済圏によって成長を鈍化させる試みが始まるのでは無いか予測しています。
世界を幾つかの経済圏に分ける事で、成長をコントロールする時代が来る・・・。

何となく昨今の世界の動きを見ていると、しばらく忘れられていた「成長の限界」という言葉を思い出してしまいます。

通貨の信用とは何か・・・バーチャル化するマネー

2014-05-08 07:56:00 | 時事/金融危機
 

本日は「現代におけるお金とは何か」という事を、ダラダラと考察します。あまり考えが纏まっていませんが、何となく、「お金」という物が、従来の概念から変質している様に思えてなりません。ゲームのスコアーの様なバーチャルなお金に危機が訪れるとすればどういう状況なのか・・・・次の危機を占う上で、通貨の質的な変質は重要なポイントとなると思うのですが・・・。ちょっと私には難し過ぎる命題ですね。


■ ハードカレンシー(国際決済通貨) ■

昨日、ドルについて考察した時に、「ドルはバーチャルな存在なのかもしれない」と書きました。本日はその点について少し考察してみたいと思います。

ドルの価値を支えているのはドルが国際決済通貨である事です。

ドルを持っていれは、海外から色々な物を買う事が出来ます。これが、例えばマレーシアの通貨であるリンギットなどでは相手国は受け取りを拒否するでしょう。何故なら、リンギットを持っていても、いつ暴落するか分からないので価値の保存に不安があるからです。当然、手にしたリンギットで買い物しようとしても他国も同じ理由でリンギットを受け取りたがりません。

現在世界ではドルとユーロと円がハードカレンシー(国際決済通貨)として通用します。

ユーロはドルに次ぐ信用力を誇りますが、ユーロ圏の経済規模の大きさ、生産力、需要、そして歴史的信用がユーロの価値を担保しています。ユーロは「拡大マルク」と言える存在ですから、ひとえにドイツの信用力が高い事がユーロの価値を支えているとも言えます。

円もハードカレンシー(国際決済通貨)として認められています。巨大な財政赤字を抱える日本とドイツには信用力に大きな隔たりがある様に思えますが、仮に世界の通貨がガラガラポン状態になった時に、やはり国内に巨大な生産力を保有する国は信用の回復が速い事を考えれば、円の信用は日本国内の生産力に支えられていると言えます。

■ バーチャルな通貨 ■

お金は「金」でこそ無くなりましたが、紙幣として実体を持ったものとして私達は認識しています。一方で、金融取引などでは通貨はコンピューター上のデータとして扱われ、実際の紙幣が行き来する事はありません。

こう考えると、「現在の通貨はデータである」と言う事も出来、急にお金の存在がバーチャルなものに思えて来ます。通貨だけでなく、証券や債券や国際などもデータ化される事で、取引は電子化されています。この様に、現代の世界ではお金とそれに準じる多くの物が電子化され、データとなって流通しています。

■ デビット・ボウイをデータ化する ■

20年程前に「証券化」という言葉が流行りました。人間として最初に「証券化」されたのは確かデビット・ボウイではなかったかと思います。

「人間を証券化」というと変な感じですが、「デビット・ボウイ」を個人としてでは無く「お金を稼ぐ企業」として捉えた場合、「デビット・ボウイ」に「投資」して「金利」を得る事が出来れは立派に個人も投資の対象になり、証券化も可能となります。

本来、個人がお金を借りる時は銀行に行き融資担当と折衝するか、知人にお金を借りる必要があります。しかし、個人でも証券化されてしまえば、他の証券同様に市場で売買する事が可能になり、より広範な人達から少しずつ大量の資金を集める事が出来ます。

証券を買ってデビット・ボウイに出資した人は、資産の一部を証券購入に充てているだけなので、デビット・ボウイが仮にドラックのオーバードープで急死したとしても、全財産を失う様な事はありません。

現代では証券はデータ化されていますから、デビット・ボウイはデータ化されたと言う事も出来ます。

■ 誰かの借金をデータ化したMBS ■

証券化は本来は動かす事の出来ない不動産などをデータ化する事で、流動性を高める役割を果たします。

例えば、不動産REITではビルを建てたい人は市場を通じて資金を迅速に集める事が出来ます。ビルという不動産は、借金を通して証券化されたのです。

リーマンショックの引き金となった不動産担保証券(MBS)も同様です。個人は住宅ローンを組んで銀行からお金を借りますが、銀行は債権をフレディーマックやファニーメイの売却します。この時点で銀行はローンが回収出来なくなるリスクから逃れる事になります。

フレディーマックやファニーメイは多くの住宅債権をグチャマゼにして住宅担保証券(MBS)を組成します。この中には破綻リスクの高い物件も、低い物件もある程度の量が混じっています。ただ、全体の内の3%以上が破綻しなければ投資に対するリターンは損なわれません。

MBSはデータ化された証券として世界各国の金融機関やファンドに売られます。この時点でリスクはMBSの購入者に移動します。要は、MBSとは、住宅を購入した誰かの借金が細切れにされたデータとして流通している物だと言えます。

■ 債権や証券がお金を生み出している ■

この様にデータ化する事で、流動性は格段に向上します。流動性が高いという事は売買が容易だと言う事です。データ化された誰かの借金は、市場で盛んに取引される様になります。

市場に資金が集まれば、証券や債券の価格は上昇します。そこで、将来的な価格上昇を見込んで、世界の余剰資金が市場に集まり出します。さらに価格が上昇すれば、借金をしてこれらの債権や証券を購入しても利益が出る様になります。

ここで問題になるのが「信用創造」という現在のお金を作り出すシステムです。銀行は預金の内の10%を準備預金として手元に残し、残りの90%を貸し出す事が出来ます。単純化する為にお金を借りる人と預ける人が同一だと仮定します。預金者は自分で借りたお金を再び預金してさらにその9割を借りる事を繰り返す事が出来たとします。するとお金は何倍にも膨れ上がります。これを「信用創造」と言います。

信用創造で重要なのは「お金の借りて」が存在する事です。そして、お金の借りてが存在する為には「利益が見込める投資先」がある事が重要です。

リーマンショック以前の金融市場は、世界の資金が集まる事で相場が右肩上がりに上昇していました。ヘッジファンドなどが巨大な資金を投入していたからです。

■ データ化したお金が消える? ■

市場取引でやり取りされる時のお金もデータです。データ化した商品をデータ化したマネーで売り買いしている訳です。

巨大なマネーが目まぐるしく行き来してもデータなのでコストはシステムの維持費程度しか掛かりません。こうして電子化した市場の中で、電子化したお金がめまぐるしく動き回る事で、「信用創造」が肥大化して行きます。事ここに至っては、取引される商品の元の姿など何でも良くなっています。

ところがリーマンショックの様な危機が起きると事態は一変します。

実体の無いデータの価値は非常に不確かなものです。例えば、サブプライムローンで破綻したローンを含むMBSが混入した金融商品が手元にあっても、たった1万円の債権を取り立てる為にアメリカまで航空運賃を払って行く事は出来ません。そこで、これらの不良債権が混入した金融商品やMBSの値段が崩落します。

人々は借金をして買ったこれらの商品の値段が下落してしまう前に、これらの商品を売却して借金を返済しようとします。こうして「信用収縮」が一度始まると、「信用創造」によって生まれたお金は一気に消失します。

お金自体がデータなので、幻が消えるが如く、お金は消えて無くなります。

■ 「復活魔法」で増えたお金 ■

この様に市場が崩壊する過程で、本来ならば価値のある証券や債券の価値が過剰に消失します。これがバブルの崩壊です。

値段の暴落したMBSや金融商品を大量に抱えた金融機関は、時価評価に耐えられません。そこで、これらの商品を額面の7割で評価する事と、政府が税金を使って金融機関に資金注入する事で、金融機関は債務超過によって破綻する事を免れます。

この過程もある意味、データ処理とも言えます。ゲームでライフポイントが増えた状態に近いものがあります。

さらに各国の中央銀行はMBSや国債を大量に市場から買い上げて、さらにライフポイントを市場に供給しました。これが量的緩和(QE)と呼ばれるものの正体です。

リーマンショックという決定打を浴びてライフポイントがゼロに成りかけた市場は、中央銀行の回復魔法で蘇ったのです。

この過程で、マネタリーベースはイギリスで4倍、アメリカやユーロ圏で3倍も増加しています。

■ バーチャルな世界でしか使えない「バーチャルなお金」 ■

マネタリーベースが拡大する過程で、実体経済はほとんど拡大していません。供給された資金は、市場が飲み込んでしまったのです。

回復魔法が効果を発揮するのは市場の中に限定され、実際の世界はゼロ金利の罠に囚われているので、魔法は発動されません。

リーマンショック以降、各中央銀行が投入したお金は、バーチャルの世界の中でしか活用出来ないので、これらのお金は実体経済から切り離される事で限りなくバーチャルな存在であるとも言えます。

円もドルも実体経済の中で流通するお金と、市場の中で流通するお金は、同じ様でありながら実は違うものになっているのです。

■ バーチャル世界で取引されるバーチャルなお金 ■

さらに為替市場ではお金自体が取引されます。ここでも巨大な資金がデータとして行き交います。FXなどは個人がこの取引に参加出来る様にしたゲームの一種と考える事な出来ます。

既にここまで至ると、お金は本来の姿を失い、ゲームのスコアーやライフポイントと化しています。ビットコインと本質的には同じ物と言えます。

■ お金の「ポストモダン」 ■

この様に金融市場の過度の発達は、お金の概念自体を従来の「モノ」中心から「データ」に変革してしまいました。

これはある種の価値観のパラダイムシフトで、お金の「ポストモダン」化と捉える事が可能です。

■ 依然としてお金は実体経済でも使える ■

半ば「データ」という概念的な存在となったお金ですが、実際の社会ではお金があれば好きな物が買えます。要は、お金は依然として旧来の価値を失ってはいません。

結局、現代の社会は、「市場」という閉鎖空間の取引の中でお金がどんどん増えており、そこからあふれ出すお金が実体経済で使われているとも言えます。キャピタルゲインで生計を立てている人達は、まさにこれに相当します。

何だかゲームのスコアーとしてビットコインを賭けている状況に似ているとも言えます。

■ 実体経済で金利上昇の力を奪われたマネー ■

リーマンショックで大打撃を受けた市場ですが、世界経済も市場もリーマンショック前の状況に回復したと言われています。しかし、現在の市場はゼロに近い金利で供給される資金に支えられていますから、この供給が途絶えれば、一瞬で「信用消失」の連鎖が始まり、市場は崩壊します。

FRBはQE3こそ縮小していますが、金利についてはしばらくゼロ金利を継続するとアナウンスしています。FRBや日銀、ECBがゼロ金利を継続する限り、市場は安心してゲームを続ける事が出来ます。

では中央銀行が金利を引き上げざるを得ない状況は何時起きるのでしょうか?それはインフレ率が過度に上昇し始めた時です。2%程度のインフレは必要とされているので、4%、6%と物価が上昇し始めれば金融緩和は継続不可能になります。

しかし、アメリカの実体経済は回復したとは言え、需要は低迷しており、コアコアCPIの上昇も低調です。現在の需要は、低金利の住宅ローンや自動車ローンで無理やり作り出しているものですから、自律的回復には程遠いものがあります。

中央銀行の金融抑圧政策の元では、実体経済の投資の金利利益は抑制されていますから、資金は金融市場や資産市場などのバーチャル空間にプールされ、実体経済でインフレを起す力を奪われているのです。


ここまでダラダラと考察して来ましたが、通貨の質的な変質が、従来の経済理論を無効化している様に思える昨今の世界情勢です。

一方で危機はバブルの再来では無く、意外にもアメリカの通常の景気循環の後退期に現れる様な気もしています。そういった意味においては、リーマンショック以降回復を続けて来た米国経済がどこでピークアウトするのかが焦点になるのかも知れません。


現在の世界は葬送行進曲を掛けながら椅子取りゲームを続けている様に私には感じられます。派手な曲を期待していると、肩透かしに合うかも知れません。