■ 「チバニアン」誕生!! ■
来年からは世界の地学の教科書に「チバニアン」という言葉が載るかも知れない!!
皆さんは「国際標準模式層序断面(GSSP)」という言葉をご存じでしょうか。地学に詳しい方以外は多分聞いた事も無い言葉でしょう。
1) 各地質時代の境界を示す地層
2) 国際地質科学連合(IUGG)によって批准される
3) 世界で66か所が指定されている
4) 指定された地層にはゴールデンスパイクが撃ち込まれる
地質時代の境界は101存在しますが、未だ指定されていない地層のゴールデンスパイクの獲得を巡り、各国が指名獲得を争っています。
そして、我が千葉県の地層が、このゴールデンスパイクを来年初めにも獲得する事がほぼ決まりました。10月に開かれたIUGSの下部組織である国際層序委員会の投票で、千葉県の地層が競い合っていたイタリアの二か所を抑え、6割の票を獲得したというのです。来年初めに開かれるIUGGで批准されれば正式に「チバニアン」が誕生します。
■ 地質時代の境界って? ■
ところで「地質時代の境界」って何でしょう?
地質時代の分類は次の様に階層化されています。
例えばティラノサウルスが闊歩していた白亜紀を例に取ると
累代(Eon)-----顕生累代 (5億4100万年前~現在)
代 (Era)-----中世代 (2億5190万年前~6600万年前)
紀 (Period) ---白亜紀 (1億4500万年前~6600万年前)
世 (Epoch)-----後世 (1億0050万年前~6600万年前)
上から順に時代が階層的に細分化されます。一般的にはティラノサウルスが生きていた時代は「白亜紀後世」と呼ばれます。
そして、世(Epoch)の下をさらに細分化する「Age」という区分があり、これが「国際標準模式層序断面(GSSP)」が示す「各地質時代の境界」になります。
■ 最後の地磁気反転が起きた時代を示す地層 ■
「チバニアン」が示す「地質時代の境界」とは「最後の地磁気反転」が起きた時代です。
現在は方位磁針のN極は北極を指しますが、地球の地磁気は何度も反転しています。N極が南極を指す時代もあったのです。地磁気反転は360万年の間に少なくとも11回起きています。そして最後の地磁気反転は77万年前に起きた事を明確に示すのが「チバニアン(仮)」の地層なのです。
「チバニアン(仮)」の時代は「中期更新世」(77万年前~12万6000年前)の始まりを示す「地質時代の境界」です。
但し、「国際標準模式層序断面(GSSP)」に指定されるには厳しい基準を満たす必要がります。
<Wikipedia より引用>
2)GSSPの地理的位置および地層の状態
・地理的な位置を地図座標を用いて示すこと
・岩層層序など地質学的な位置づけを示すこと
・模式境界の正確な場所および層準を明確な点として示すこと
・模式境界の層準を挟んで層序の欠落がないこと
・模式層序・境界位置を含む層序断面に十分な厚みがあり、上下に地層が連続していること
・露頭までの道路状態、その国の政治状況、土地の所有権に問題がなく露頭まで容易に近づけること
・露頭の保護・保全のための対策が行われていること
3)一次・二次指標
・GSSPを特徴づける対比指標には、最も重要な地質学的事件(特定の化石種の出現など)を充てること
・他の一次指標および二次指標を示すこと
・火山灰層や天文学的周期性(ミランコビッチ・サイクルなど)により数値年代が決定可能であること
・ 地域的な対比や世界的な対比が示されること
<引用終わり>
「チバニアン(仮)」の地層は、千葉県市原市田淵の養老川の川岸にある侵食崖に露頭していて、上記の条件を満たすのです。
■ 「チバニアン(仮)」にGO!! ■
実は昨年、「チバニアン(仮)」に行ったので、その時の写真をアップします。
「チバニアン(仮)」は小湊鐡道の月崎駅が最寄駅です。『夏美のホタル』という映画のロケ地になりました。(主演は有村架純)
月崎駅から県道88号線(養老清澄ライン)に出て、養老渓谷方面にしばらく歩くと、養老川を越える橋から登り坂が始まります。この坂を登り切った所に、田渕会館の看板が立っていますので、細い登り坂を右折します。
すぐに公民館が現れ、その前にイタリアと日本の国旗がはためいています。掲示板が設置され、「チバニアン(仮)」に関する情報が得られます。
さらにその先に進むと、道は鬱蒼とした林の中を通り、急な坂道で養老川へと降りて行きます。
舗装道路が終わり、ちょっとした草むらの向こうに、川へと下る細い道が現れます。ここから先は運動靴かトレッキングシューズが無いと行けません。途中、案内板が設置されているので、道に迷う事はありません。
川へ降りる所は滑り易いので注意して下さい。
河原を上流に向けてしばらく歩きますが、増水している時は河原は無くなりますので行けません。養老川の河原はツルツルの岩なので、トレッキングシューズでも滑り易く注意が必要です。
数十メートル河原を遡上すると、「チバニアン(仮)」の地層の露頭現場に到達します。ここも案内板が整備されているので、見落とす事は有りません。
崖に赤いスパイクが打ち込まれていて、案内の看板も設置されているのですが・・・・実はどれが「チバニアン(仮)」の層なのかイマイチ分かりません・・・。矢印でも付けてくれると嬉しいのですが。
多分、白い薄い層が「チバニアン(仮)」の火山灰層に違いないと思い写真を撮りました。でも何だか自身ありません。
■ ジオパークとして整備されれば行きやすくなるでしょう ■
実は現状はちょっと危険なので、行き易い場所ではありません。いえ、現状で多くの方が訪れると、保全の問題が発生して、せっかくの地層を破損する可能性もあるので、出来れば今はそっとしておいてあげたい。
ゆくゆくは、ジオパークとして市原市が遊歩道や階段や柵を整備するでしょうから、「チバニアン(仮)」の見学はそれからでも良いかと思います。
ただ、地学がお好きでマナーを守れる方からば、現状を見ておく事をお勧めします。観光客も居ないので、間近で貴重な地層を観察できます。