■ ショッキングな事件よりもショッキングな事実 ■
サウジアラビア政府に批判的な反体制派ジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏がトルコのサウジアラビア領事館内で殺害された事件、世間はサウジアラビア政府やムハンマド皇太子に避難の矛先を向けています。
しかし、この事件、そもそもサウジアラビアの領事館内で起きていて、死体もバラバラに切断されているので明るみに出る事は無かったハズです。「失踪」で片づけられた事件。
実は、反体制派の活動家の殺害なんて独裁国家のサウジアラビアでは日常茶飯事で、カショギ氏の弟夫妻もサウジ国内で暗殺集団に殺害されたと中東の放送局は報じています。「黒覆面の暴徒に襲われ殺害された」と報じれられいますが、この裏に政府の関与が疑われたとしても証拠は有りません。
しかし、トルコのサウジアラビア領事館内で殺害されたとなると問題は別です。サウジアラビア政府の関与は否定しようが無く、現にこれを認める結果となっています。
この事件、「サウジ政府の指示で殺害、死体切断」という残虐さに世間の注目が集まりますが、実はもっとショッキングな事実はトルコ政府が、事件の最中の録音を一部メディアに公開した事で、事件が明るみに出たという事実。
トルコ政府はトルコのサウジアラビア領事館の中に盗聴器を仕掛けているという、本来知られたくないスパイ行為を明らかにしてまでも、サウジアラビアを陥れたかった。そこまでサウジアラビアとトルコの関係が悪化している事の方がショッキングなのです。
■ かつての盟友は今の敵 ■
シリアの内戦の始まった頃は、サウジアラビアとトルコの関係は悪くはありませんでした。アサド政権打倒という共通の目的の為に手を組んでいたからです。両国の背後で糸を引いていたのは勿論アメリカです。
ところが、トルコがロシアの戦闘機を追撃した事で中東情勢は一変します。プーチンに呼びつけられて震えあがったトルコのエルドアン大統領は、一転してロシアにすり寄り、アメリカから距離を置く様になります。これに怒ったアメリカはクーデターでエルドアン大統領失脚を仕掛けますが、ロシアの無線盗聴によってクーデターは失敗に終わります。これでトルコとアメリカは完全に決裂します。
地政学的にもロシアに近く、ロシアはヨーロッパ南部へのパイプラインをトルコ領内を通過させたがっていたので、トルコとロシアが手を結ぶ事は、アメリカの石油支配にとっては致命的です。同じ様にパイプラインが通るウクライナでアメリカが政変を仕掛けてロシアとの関係を悪化させた様に、反米親露に転じたエルドアン政権を倒したくてアメリカはウズウズしています。
一方でアメリカの中東支配の要はサウジアラビアですから、ロシアとトルコは今回の事件でそこに「揺さぶり」を掛けて来たと言えます。まあ、内容的には「イヤガラセ」程度ですが、アメリカの国内世論は「非人道的なサウジアラビア政府」にアメリカ政府が支援をしたり、武器を輸出う事を嫌います。
■ 中東で孤立しつつあるサウジアラビア ■
英ロの傀儡国家サウジアラビアは、大量の埋蔵量を誇る石油の力で、かつては中東の盟主と呼ばれ、中東戦争の当時は、アラブ諸国の先頭に立ってイスラエルと戦いました。
ところが、イラクやリビアは独裁政権がアメリカに倒され諸部族、諸宗派が対立する混乱状況に陥り、シリアも内戦で疲弊し、トルコはロシアやイランと結託しつつあり、カタールもイランと手を結びました。
サウジアラビアは中東で孤立しつつ在り、アメリカとの癒着を深め、敵であるイスラエルにもすり寄っています。さらにはロシアにもすり寄る節操の無さ。(なんだか日本に似ていますね))
■ サウジアラビアの国民は王族やアメリカを嫌っている ■
サウジアラビアはアメリカ(イギリス)の傀儡国家ですが、国民感情としては反米です。メッカを抱え、イスラム教への信仰が篤い国民はアメリカのサウジ支配を快く思ってはいません。
そもそもサウジの国民は独裁的なサウジアラビア政府を嫌っています。サウジ王家の信仰するワッハーブ派は原理的な傍流のイスラム教ですが、アラビア湾岸の油田地帯の住民は世俗的なシーア派、その他の国民はスンニ派です。
王族の信仰するワッハーブ派は厳格な原理主義で、女性の権利を極端に抑制してきました。サウジでは女性が車を運転する事すら、つい先日までは禁じられていたのです。
当然、国民は王族を快く思っていませんが、サウジ政府は豊富な石油資金で国民の歓心を買い、さらには独裁的な強権で国民を支配して来ました。
実はサウジ王家は中東で孤立するだけで無く、国内でも孤立しているのです。だからこそ、後ろ盾となるアメリカ(イギリス)に依存して来ました。サウジの王族はアメリカに留学して徹底的に親米教育を施されて来ました。
■ オバマ政権下で接近したサウジとイスラエル ■
親米のサウジ王家ですが、オバマ政権下で、アメリカとの関係が微妙になります。当時、アメリカはシェールガス・オイルの生産が拡大し、原油の産出量はサウジアラビアを抜き去ります。当然、市場に流通する原油の量が増えるので、原油価格は40ドル/バレル程度まで下落します。
国家の財政を原油の販売利益に依存するサウジアラビアは財政的な危機に直面します。かつてのOPECであれば足並みを揃えて減産して原油価格を維持したでしょうが、現在は足並みも乱れ、あわ良くば抜け駆けしようとする国ばかりです。
この頃、オバマ政権はサウジ王家と距離を取っていました。同様にイスラエルとも距離を取っていたので、嫌われた者同士で、サウジとイスラエルの関係が深まります。同時に両国はロシアとの関係改善も試みます。
■ サウジに武器を売りたいトランプ政権 ■
オバマ政権(ヒラリー政権)に勝利したトランプは、軍産複合体のセールスマンとして精力的に活躍しています。サウジアラビアにも武器を売りたい。
ところが、今回のカショギ氏殺害事件で、アメリカ世論はサウジアラビアへのン武器輸出に批判的になります。トランプとしてはビジネスパートナーであるサウジ政府を最初は擁護していましたが、ここに来て、世論に折れる形でサウジ政府を批判し始めています。
ただ、これが長引けば、サウジ政府はロシアに武器購入の話を持って行くと、トランプを脅すハズ。以前、ロシアの迎撃ミサイルの購入を打診するなど、最近のサウジアラビアは、ロシアをダシにしてアメリカの感心を引こうとしています。まるで、捨てられそうになった年を取った愛人を見る様で哀れです。(安倍首相も似ていいますね)
■ ソフトバンクのファンドは次の経済危機で大きな損失を出すハズ ■
原油価格は現在は回復していますが、サウジ政府は将来的に石油資源が枯渇すると国家の財政が破綻し、当然、王家も失脚する事が確実です。その予見される未来から逃れる為に、サウジ政府はオイルマネーを投資で運用する選択をします。それがソフトバンクと共同で運営する10兆円ファンドです。
孫社長はアリババ株で8兆円の含み益を出したり、イギリスのCPU開発会社のアーム社を3兆円で買い取るなど、大胆な投資戦略でのし上がって来た人です。ソフトバンクの料金で国内の庶民からお金を吸い上げ、それを大胆な海外投資に振り向けて来ました。
確かに孫社長の「見立」は正確で、今の所、大きな損失は出していません。次世代の成長企業に確実に投資している様です。しかし、これらの企業の株は、現在のバブル化した株式市場で過大評価されている銘柄が多く、次に起こるであろう株価暴落で大きく値を下げるであろう企業が多く含まれているハズです。
サウジ政府にとっては5兆円などハシタ金ですが・・・ソフトバンクはそうではありません。国内の携帯電話の通話料金を下げる様に菅官房著間が圧力を掛けていますが、安定したキャッシュフローを生み出す通話料金が引き下げられれば、有利子負債が多いソフトバンクの経営は一気に悪化し、焦った孫社長が投資で下手を打つなんて事もあるかも知れません。
・・・・もし、サウジアラビアの5兆円を溶かしたら・・・孫社長の元に黒づくめのアサシンが現れるかも知れません。
きっとこんなのが来ます・・・。
おっと、妄想が暴走した。