1時間15分ほどの短い芝居だ。だけど、この静謐を湛えた程よい緊張感が心地よい。闇の中に浮かび上がるほんの少しの灯り。誰かがそこにいる。小さくなって蹲るようにして、そこにいる。視界は狭い。観客である僕たちの視線は彼女の手元に集中する。何がそこにあるのか。何が起きようとしているのか、注目する。だが、なかなかそこからお話は展開していこうとしない。なかなか明るくもならない。
その先も同様。徒に時は過ぎ . . . 本文を読む
ひとりの少女の殺害事件を発端にして浮かび上がってくる40数名に及ぶ子供たちの連続殺人事件。しかし、当局はこの国には殺人はない、という前提のもと、すべてを闇に葬ってしまう。1950年代、スターリンによる独裁政権下、社会主義国家は、恐怖政治のもと、個人の自由はなく、暗黒社会だった。本当のことは言えない。いつ、誰による密告で告発されるかも知れない。怯えながら生きるしかない。権力は平気でなんの罪もない市民 . . . 本文を読む
後編なのに、途中で話が終わるって詐欺ではないか。全くなんの情報もなく見たから、あの終わり方には正直驚いた。あんな不意打ちはない。
事前に「前編」を見て置くつもりが、時間がなくて、見ないままで先にこの後編を見ることになって、ちょっと不安だったけど、そこは大丈夫だった。支障なく作品世界に入れた。最初に前回のあらすじがあり、それがわかりやすくコンパクトのまとめてあったのがよかった。
話の展開は緩やか . . . 本文を読む
最近こういうパターンが多すぎではないか。TVアニメの再編集による劇場版。観客のニーズに応えたのだろうけど、映画館は商売になるのならなんでもやる。そういう無節操さは、映画産業が生き残るために必要だけど、なんだかなぁ、と思う。じゃぁ、見なければいいのだが、ついつい見てしまう。
こういうスポーツものは、第1章にあたる部分こそが一番面白い。これもそうだろう。高校に入ってさっそくバレー部に入部した2人の . . . 本文を読む
今年の課題図書に選ばれた作品だ。中学の部だが、高校生も、むしろこちらの方を読んだほうがいい。とてもよくできたファンタジー。でも、ほんとうはこれをファンタジーとして括るのはつまらない。湯本香津実の『夏の庭』の続編で、(もちろん、嘘です。全く区別の作品なのだが、手触りが酷似しているのだ。)こちらはおじいちゃんが死んだ後のお話。
死んだおじいちゃんの遺品整理のため、おじいちゃんの家に滞在する6日間の . . . 本文を読む
2人の女の出会いを描く。お互いにその存在すら知らず別れ別れになっていた姉と妹。1枚の絵が、ふたりをつなぐ。主人公は何不自由なく生きてきたお嬢さま。父親の会社が経営する私設美術館の学芸員であり、絵画コレクター。もうひとりは、孤児で、日本画の大家の養女である新進画家。
ある画廊で、たまたま見かけた1枚の絵、心惹かれて、それを購入する。そこからふたりは出会い、お互いの出自を知る。重くて暗くて息苦しい . . . 本文を読む