タイトルは『おきくのせかい』ではなく『せかいのおきく』だ。ひらがなで綴られるこの不思議なタイトルが映画を象徴する。時代は江戸末期。貧乏長屋。お菊(黒木華)はこの小さな世界で確かに生きている。けなげとかいうのではなく、すっくと立つわけでもない。長屋で父とふたり。気丈に生きていたが、父だけではなく声までも失い、たったひとりになった。それでも生きていかなければならない。この世界でひとり、生きていく。
. . . 本文を読む
これはまるで思いもしなかった映画だ。先日見た中国映画の傑作『小さき麦の花』のような温かい映画だと勝手に思っていた。要するに中国版『スタンドバイミー』のような甘い映画を期待したのだ。確かチラシの裏にもそんなことが書いてあったし。だけど、まさかの映画で、驚いた。(確かにチラシにはカフカの『城』とかも、書いてあったんだけど。)不条理劇とかいうわけではない。ノスタルジックで懐古的な映画でもない。もちろんそ . . . 本文を読む
GWの3日間はこの本を読んで過ごした。最初の1日、5月1日に350ページまで読んだ。実は4月30日の夜、冒頭の50ページまで読んでいる。少年と少女の出逢いから始まる。彼は16歳、彼女は15歳。高校生だ。初々しいラブストーリーになる。1年後、ふたりは17歳と16歳になった。当然だが。話はそこから始まる。
第一部は長い長い導入で、いつまで経っても話が始まらない。いいかげんうんざりしてしまう。それは1 . . . 本文を読む