ほぼひとり暮らしの89歳の老女ソヨミ。その夜の添い寝をするというバイトをする19歳の女の子、茜。このふたりの話。
ソヨミは孫が同居しているようだから、ひとりではないけど、茜は会ったことはない。二世帯住宅で、定年退職して悠々自適の暮らしをする息子夫婦もいる。だが、一切登場しない。彼らは一年中旅行三昧らしい。ということは家族はちゃんといる。何不自由ない、はず。なのに他人に添い寝を求め . . . 本文を読む
3話からなる短編連作スタイルの長編作品。これはとてもよく出来たスリラーなのだ。だけど、それを殊更強調して見せるのではなく、なんでもない日常のスケッチにして見せてくれる。そのさりげなさが凄い。最初のエピソードではまだ、何が描かれるのかは明確にはならない。そこはある高校の職員室。春休み中の日曜日。ふたりの教師が新学期の準備をしているようだ。生徒の話をしている。その中に「シックス」とか、「サード」とかい . . . 本文を読む
劇場に入ってまず、驚く。「なんなんだ、これは!」と。こんな使い方をしたウイングフィールドは初めてだ。この劇場空間全体(通常の舞台部分も客席部分も含む)がこの芝居の舞台となっている雑貨屋になってしまっている。そこにはところ狭しと雑多な商品が並ぶ。だから劇場にではなく、お店に来た気分にさせられる。そんな中にたくさんのお客さんが埋もれている。というか、密かに座ってる。あれは観客だ。最後に入った僕は入り口 . . . 本文を読む
劇団大阪がこの作品を取り上げたのは42年前に遡る。もちろんその時も熊本さんの演出だ。1981年の初演から始めて今回で6度目になるらしい。当時40歳だった熊本さんも82歳。作者の近石さんはすでに90を超えている。彼女が不惑を迎えた頃に書かれた戯曲を、同じく不惑だった熊本さんが演出した作品をまだ20歳を過ぎたばかりだった僕は残念ながら、見ていない。でも、劇団大阪がシニア演劇を始めて4年目に作られた5度 . . . 本文を読む
こんな強烈な話をよく思いついたな、と感心している。悪意の塊のような周囲の人たち。それがクラスメイトだから、これはかなり怖い虐めだ。彼の高校入学時、尿路結石で入院して出遅れたことから始まる悲惨な体験を綴る。だけど、こんなのアリなのか、という壮絶さ。(ツッコミどころ満載だし)ここまでやると完全にバレる。虐めのエスカレートが半端じゃない。学校のトイレに閉じ込められたまま夜を迎えるなんてあり得ない。さらに . . . 本文を読む