この集団の芝居は初めて見る。「死体運びにまつわる不条理青春劇」というパッケージングがなんとも言えず、興味深い、僕には、わけのわからないものを見たい、という願望がある。この芝居はそこにぴったりとあてはまる。ふつう死体なんか運ばない。しかも、これはそれが仕事として描かれる。バイト君たちは実に割り切ってこの仕事をする。気味が悪いとか思わない。さばさばしていて、どうして? と思うほど。彼らの勢いに押しまくられて、芝居はどんどこと進んでいく。有無を言わせぬ勢いで。彼らを見守るこの研究室の2人のスタッフは圧倒されるし、観客である僕たちも同様だ。
コメディではないけど、コメディタッチ。笑うしかない。運ばれる死体を山下残が演じる。(というか、彼はただ運ばれるだけなんだけど) 何度となく運ばれる。48体の死体の役だ。延々とせっせと、運ばれる。その単純な繰り返しが続く。校舎の建て替えのために死体(献体)を移送させる。夜中の大学の研究室が舞台だ。というか、その移送中の廊下かどこかなのか。上手から下手へと死体が運ばれていくのを見ているだけ。それだけで1時間半ほどの芝居は完結する。
途中死体が動き出すのだけれど、ゾンビものか、と言われると、そうでもなく、でも、確かに動いているんだから、ゾンビじゃん、とも思う。疲れた彼らが見た幻か、とは、思えない。そういう描き方はしないからだ。じゃぁ、何なのか、と言われると、何でもないとしか言いようもない。そこに意味を追い求めないからだ。お話自体は、ただ運んでいるだけ。ストーリーはあるにはあるのだけど、そこには意味がない。そんなことより、このアルバイトが何を意味するのか、そっちのほうが気になるのだけど、そこにも意味を持たさない。不条理過ぎて、考える気も失せてしまう。ただただ繰り返される行為を見守っていくだけ。しかも、それすら最後には意味を成さない。
何故、死体が動き出すのか、よくわからないけど、コメディでもないのに、笑えてしまう。まぁ、そんなことが起きたら、びっくりするし、怖いはずなのに、それをこうして芝居の中で見ると、観客は笑う。単純におもしろいからだ。意味はない。要するにナンセンスなのだ。それを軽妙なタッチでしれっと描いていく。何なんだ、と思う間もなく、終わる。わけがわからないから、苦笑するしかない。でも、嫌いではない。わからないまま、突き放されて終わるのに、なんだか清々しい。