こういうタイプの少しビターなファンタジー映画が今の時代の気分なのだろうか。示し合わせたわけではなくたまたまだろうけど、Amazonオリジナル映画の日本映画『不都合な記憶』に続いてNetflix映画であるこの韓国映画もまた現実の死を受け止められない人たちが人工知能AI技術による擬似現実の中で生きる日々を描く。
こちらはリアルな存在ではなくスマホを通してつながる。死者の生きているその後の日々。あり得ないことだけど、わかっているけど(まだ幼い子どもには母の死は伝えない)この擬似現実を受け入れて暮らす。そんな傷ましい姿を見て、だけどやがてここから離れてゆるやかに現実を受け入れていくことになる。それまでの優しい時間が描かれる。信じたくない現実を目の前にして、茫然と立ち止まる。嘘でもいいから、それまでの日々が続いていると思いたい。
だけどこれは現実じゃないことはわかりきっているから、イライラする。そんな葛藤を抱えて生きる何人か(描かれるのはふたりだけど)の人たちのスケッチを並行して描く。やがて破局はくる。癒されて終わるのが理想的な配信終了だけど。
スマホを通して遠くにいる設定の彼らからの電話越しの映像と音声は届く。越えられない一線が確かにそこにはある。