この公演は昨年は中止になった例年年末の恒例行事である「私学芸術文化祭典」で上演された。25日には東海大仰星、そして26日に金蘭会がそれぞれ2回ずつ公演を行ったが、その最終ステージを目撃することができた。僕にとっては、今年最後のお芝居である。見に行けてよかった。夏のHPFは見れなかったので、久々の金蘭の芝居である。すばらしかった。渾身の力作で、こんな作品を高校生がやっていいのかと驚くしかない。まぁ、今までだって金蘭には散々驚かされてきたのだから、もう何があっても驚かないでいいはずなのに、彼女たちは僕なんかの考えも及ばないところで芝居を作る。感服した。
余談だけど、僕は昨年に続いて今年もあまり芝居を見なかった。でも、この作品を見て、また芝居を観たいと思わされた。今年見た芝居は年間50本ほどである。以前の3分の1ほどの本数になってしまった。ただ、この11月くらいから少しずつ復活して見るようになってきている。これまで控えていた劇団が様々なところで公演を再開しているし、興味深い公演も行われている。この12月は面白い作品ばかりだったが、これはその掉尾を飾るにふさわしい作品だ。
困難な状況下での公演だが、扱う内容の過激さに驚いた。革命の話だ。廃校になる私立の女子高校の演劇部が舞台だ。彼女たちが最後の舞台の稽古をしている。だが、コロナのせいで上演は中止になる。2020年3月で学校もなくなる。それから1年。今では廃墟となった学校に彼女たちが再び集まってくる。そして、あの日に何があったかを再現していく。幻になった劇中劇として上演されるお芝居、あの日の再現。これは個人的な性情の問題であり、そこから生じるある種の「恋愛もの」であり、少女たちの戦いの物語であり、それは今、世界で起きている自由の抑圧への抵抗の物語でもある。
戦い続ける少女たちは銃弾の犠牲になり死んでいく。政治的な問題に対して、確固とした信念を貫き、立ち向かう。自分たちのなかにある差別意識と戦争につながる行為への抵抗が、同じステージで同時に描かれていく。自分たちの内なる問題と外の世界に向かう問題は別々の問題ではない。この国のある高校で起きた小さな事件と世界を揺るがす大きな事件が同じ土俵で語られていく。そんな壮大なドラマが70分ほどの劇として綴られていく。この作品は自分と世界を同じ目線で見つめる。劇に対する熱い情熱が彼女たちを支える。演劇で世界を変えることが可能か、と問いかける。