このバカバカしい映画を成功させたのは、まず、真木よう子のあのお人形さんのような無表情だ。理解不可能な事態に陥り機能停止になる。23歳の恋人とは世代間のギャップを感じるけど、30歳の我が身にも同じような齟齬を感じている。無表情は拒絶ではない。不安がマックスになった時、人はそうなる。
そんな彼女の内面はその「脳内」で描かれる。この映画のアイデアはそこに尽きる。だが、これって、ウディ・アレンは『セックスのすべて』で昔々にやっている。あれのパクリだ。だが、あれは短編だった。あんなことを、なんと、大々的に長編として遣り切ろうとしたのだ。これは英断だ。こんなバカバカしいことで2時間の映画を作り切る。見事だ。
脳内の5人のキャラクター設定がおかしい。笑える。笑わせておいて、泣かせる。彼らの誠実さがしかり伝わってくるからだ。終盤自分の殻に引きこもる神木隆之介のポジティブが、復活する姿は感動的だ。はしゃいでいるだけではない。彼ら5人が真剣に主人公の想いを演じたことがこの映画の成功の理由だろう。
いつも毛糸の帽子を被っている主人公のルックスはかなりおかしい。自分に対して自信がない、わけではない。いろんなことに、さりげなく、こだわりがありすぎるくらいだ。それが少しちぐはぐ。上手く機能していないのだ。恋愛のおいても仕事においても。彼との付き合いを通して彼女は自分を押されて彼のペースに合わせようと無理する。7歳も年下の素敵な彼を失いたくない。何を考えているのか、よくわからない彼と一緒に暮らしながら、無意識に自分を抑えて、だんだん病んでくる。現実のドラマと、脳内のドラマを並行させ(同時進行もさせ)ながら、かなりリアルな恋愛映画になる。
ラストも納得の終わり方だ。ただのはしゃいだだけのコメディ映画ではない。これはとてもシリアスな恋愛映画なのだ。