15年前に上演された初演を見ている。あの時は大阪での上演だった。(確かHEPホールだったのではないか)まだ、Gフォレスタが誕生して間もない頃だ。阪神淡路大震災を真正面から取り上げて、コミカルでハートフルな作品に仕立てようとした。ハードルは高いけど、誠実に挑んだ作品だった。5年後にも再演され今回が3度目となる。
「阪神淡路大震災20年公演」と銘打った。さらには、これが東日本大震災の後で作られることになったことも肝に銘じたい。それは丸尾さんの中にも確かなものとしてある。この国がどうなるのか、どこに向かうことになるのか。そういう大きな問題も背後に潜ませて、今一度、この作品に挑む。
震災から4カ月。避難所からようやく仮設住宅に入居することになった人たち。不安と期待。ボランティアの人たちの支えもあって、ようやく歩き始めた。そんな彼らの群像劇である。お話自体はコミカルな描写で展開していく。初演時はそこが少し上滑りしていて、ラストのカタストロフが唐突に思えた。全体のバランスが上手く機能していないと思った。だが、今回、さすがに15年の歳月を経て、題材との距離感は絶妙である。笑わせるシーンとシリアスなシーンとのつながりもいい。最初と最後の手紙のシーンもいい。自分たちに何が出来るのか。ボランティアを続けるもの、辞めるもの。2年の歳月が経ち、風化していく想い。さらには、2年の月日を経て忘れ去られていくもの。20年という節目の年に、もう遠くなってしまったと思う人たちに、決して終わることのない、消えるはずもない痛みとして、この作品を提示する。
初演時は、父親殺しは唐突に思えたけど、決してそうではない。それまでずっと家の外を舞台にした作品は、そこで初めて仮設の中に入る。部屋の中のシーンを見せる。明るくふるまっていた人たちの背後にある苦しみ。丸尾さんは物事の光と影をしっかり掬い取ろうとする。
仮設住宅で暮らす人たちの悲喜こもごもの日々をコミカルなタッチで描くというパッケージングはぶれることがない。笑わせながら、ひとつの悲劇に突き進んでいく。しかし、そこにも希望を見出す。決して希望は棄てない。そんな覚悟が描かれる。