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映画・演劇のレビュー

『ベオウルフ 呪われし勇者』

2007-12-08 10:35:10 | 映画
 先日『300』で、酷い目にあったので、もうこの手のCG映画はいいよ、と思ったが、ロバート・ゼメギスが、何がしたかったのかが気になって、ついつい見てしまった。

 『ポーラ・エクスプレス』に続く彼の新作。ゼメギスはもう普通の映画を撮る気はないのだろうか。まぁ、そんなことはないだろうが、デジタルの進歩を最大限に利用した誰も見た事がない世界を表現したいという欲求を、満たすために彼なりの挑戦を続けているのだろう。それはよく分かるが、表現技術よりも、描くべき内容のほうが、ずっと大事だ、なんていう当たり前のことがおざなりにされてないか?ライブならではの魅力を敢えて封印するだけの意味は、この映画からは全く感じられない。

 とりあえず最後まで見れないことはないが、どうしてこんな映画を作ったのかは、よく分からないままだ。神話的世界をリアルな映像で描くということなら、『ロード・オブ・ザ・リング』でもう極まってしまったので、何をしても二番煎じにしかならない。ロール・プレイング・ゲームのようなお話ではなく、ストーリーが単純なのはいい。寓話的世界をいかに見せるのかが今回の賭けだ。しかし、それがどれだけ出来たか、というと首を捻らざる得ない。後半の派手なアクションは、この手法でなくても良かったはずだ。見せたかったのはそんな事ではあるまい。

 人間の表情が全くのっぺら坊で、つまらない。特に目に力がない。本物そっくりのリアルさを求めるならば、生身の人間を使えばいいわけで、現実でも、アニメでもない不思議な感触を描きたかったのなら、その表現がこの内容とどういう相乗効果を発揮するのかもしっかり見せて欲しい。

 呪われた勇者なんて言いながら、妖艶な女(アンジェリーナ・ジョリーだ!)の色気に惑わされただけのことで、なぜそうなったのかが、描かれないから、ベオウルフも先の国王もただのアホにしか見えない。これでは映画として成立しない。オールスターキャストが安く実現できるなんて言わないが、見た目は本人だが、本人ではないというのが、なんだか気持ち悪い。

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