ウディ・アレンの最新作は、久々にニューヨークを舞台にした街歩きの映画だ。僕の一番好きな彼の作品『ミッドナイト・イン・パリ』の姉妹編のような作品になっている。たった92分の至福。とても楽しくて、心地よい時間だった。若い恋人たちが過ごす2日間の甘い休日だったはずの時間。なのに、ふたりは別々に行動することになる。彼らが過ごしたすれ違いのそれぞれの時間が描かれる。
甘いラブストーリーではないけど、映画は甘い映画だ。夢心地でこの若い二人の姿を追いかけるといい。若いからバカだ。だけど、みんな若いころはこんなもんだったのだろう。(僕なんか、今もバカだけど。)
映画は夢の時間を提供してくれる。アレンはいくつになっても変わらない。老人になっても、こんなにも若々しく、みずみずしい映画を作れる。70年代の『アニーホール』や『マンハッタン』を想起させる。それら初期の傑作群の頃のテイストと、近年の『ミッドナイト・イン・パリ』の感触が心地よく融合して、とても自由奔放な映画になった。
自分の大好きな場所を舞台にして、大好きなお話を見せる。なんて幸福なことだろうか。しかも、それは年寄りの繰り言のような映画にはならない。ムダはないし、無理もない。小さなお話だけど、それでいい。昔からずっとそうだったし、これからもきっとそうだろう。こんなふうにして毎年映画を作る彼の自由な生き方は、誰もマネができない。ウディ・アレンだからできる技なのだ。80代になっても変わらない。雨のニューヨークはとても素敵だ。ここに描かれる古き良き時代のニューヨークに今すぐ行きたくなる。