春から小学6年になる男の子と、中学生になる女の子が主人公だ。ふたりは広島で生まれ育った。こういう児童書が読みたいし、読んでいただきたい。そして考えて欲しい。
彼がついたうそ。それはとても大切だと思う。相手を思いやること。そのために必要なこと。
祖父から原爆で亡くなった大おじの話を聞いた彼は広島駅に行く。爆心地に向かう。自分の足で被爆地を歩く。帰りは電車には乗らずに家まで10キロを歩く。
認知症の曽祖母は今も(時折だけど)原爆で亡くなった息子を探している。
原爆投下から60年。21世紀に入って、あの日の記憶を持つ人はどんどんいなくなり、忘れ去られていく。12、3歳の彼らは身近な人から戦争を聞く。そんなことは今ではもう不可能だろう。この小説が設定した時代がギリギリかもしれない。
忘れてはならないものがある。だけどそれは自分たちが知らないこと。この物語のふたりが家族から聞いたこと、考えたこと。自分が見たこと。それは彼らの人生にどんな風に影響しただろうか。
できることなら、彼らのその後にも触れて欲しかった。