作・演出はもちろん土橋淳志。今回彼が取り組むのは新選組。時代劇ではない。新撰組を題材にした3人の女の子たちによるコンセプト・カフェが舞台になる。
だけど土橋作品だから、描かれるものは当然軽いだけのラブコメなんかにはならない。それどころが、なんだか重苦しいくらいの勢いだ。
今までの彼の作品とはまるでタッチが違うから最初は戸惑う。何をしようとしているのか、まるでわからないから不安にもなる。ちゃんと本格的な殺陣もあり、女の子たちが頑張って見せてくれる。だけどエンタメではなく、芝居自体はいつもの土橋さん。彼はマイペースでさらりとしたタッチでこれを見せていく。僕たちはなんだかよくわからないまま出来事を見つめることになる。どこに着地するのかもまるで見えない。
3人の女の子たちが主人公だ。彼女たちの揺れる心が描かれる。背景には「新撰組のいた時代」があり、さらには「今の時代」に起きているさまざまな問題までもが内包される。いつの時代でも大きな問題である政治や戦争がこの小さなカフェのドラマに見え隠れする。幕末の内乱と現代の戦争を重ね合わせる。他人事ではない。とある国の内乱、難民、密輸なんていうことに彼女たち3人も巻き込まれていく。それが幕末の新撰組の山南、沖田の置かれた状況と重ね合わせて描かれる。昔の戦争(幕末)と遠い国(架空の国、アラウン)の話を彼女たちの今(京都)である開業前のコンセプト・カフェを舞台にして描く。
だが、これは必ずしも難しい話ではない。それどころが実にシンプルな話なのだ。まだ社会に出たばかりの3人の女の子。高校時代の同級生。実はまだあの頃を引きずっている。この芝居はまず、そんな彼女たちの関係性を描くことが第一。そこに背景のさまざまな問題を絡めていくから、結果的に結構複雑で、いろんなことを考えさせてくれる作品にもなる。いろんな深読みもできるし、単純に3人の女の子たちの恋だと受け止めることもできる。自治体絡みの町おこし事業。東南アジアの小国の事情ははっきりしないけど、なんだかきな臭い。ここにいる女たちとここにくる男たちという対比の構図によって描かれるドラマから目が離せない。