母と息子の話だ。痴呆が進んだ母の介護をする息子が家の近所を流れる桂川のほとりで見た幻が描かれていく。息子はもう何もしゃべれない母親に一方的に語りかける。
そんな彼のひとり語りの日々が続く。芝居の中で描かれる日までが充分に想像できる。彼はもう精神的にも肉体的にも参ってしまっている。きっと限界にある。だが、穏やかでいつもと変わりない時間をその日も過ごす。そんな優しい青年が、母親を絞め殺すまでの物語だ。作、演出は櫟原将宏さん。彼の真面目さがよく出ている。好感が持てる芝居だ。
車椅子を押して、散歩をする。そしていつものようにここにくる。河原を一心に見つめる母。彼女のもとに寄り添う。そこに優しい想い出たちがやってくる。結婚の報告に来る妹、仕事に精を出す父親、もう一度コンビを組もうと誘ってくれるかつての漫才の相方、在宅介護について親切にアドバイスをくれるヘルパーさん。ここにやってくる人たちはみんな優しい。だが、それは彼が作り上げた幻でしかない。現実は過酷だ。妹は結婚に敗れて病院にいるし、父は死んでしまった。相方は借金の申し込みに来る。そんなふうに。
母と息子のもとにくる彼らとのやりとりの中から、彼が抱える現実が見え隠れする。とても真面目で誠実な芝居だと思う。だが、あまりに作り方が単純すぎる。ここにはドラマとしての奥行きがない。その結果、芝居は単調になる。ドキドキしない。1時間20分が長く感じるほどだ。もちろんストーリーの面白さを追求せよ、とは言わない。個々の人間を見つめていくことから、見えてくるものが、僕たちをドキドキさせるのだ。芝居全体があまりに予定調和過ぎて感情の起伏すら描ききれないのが、残念だ。この図式的な構成からはみ出すものが欲しい。
そんな彼のひとり語りの日々が続く。芝居の中で描かれる日までが充分に想像できる。彼はもう精神的にも肉体的にも参ってしまっている。きっと限界にある。だが、穏やかでいつもと変わりない時間をその日も過ごす。そんな優しい青年が、母親を絞め殺すまでの物語だ。作、演出は櫟原将宏さん。彼の真面目さがよく出ている。好感が持てる芝居だ。
車椅子を押して、散歩をする。そしていつものようにここにくる。河原を一心に見つめる母。彼女のもとに寄り添う。そこに優しい想い出たちがやってくる。結婚の報告に来る妹、仕事に精を出す父親、もう一度コンビを組もうと誘ってくれるかつての漫才の相方、在宅介護について親切にアドバイスをくれるヘルパーさん。ここにやってくる人たちはみんな優しい。だが、それは彼が作り上げた幻でしかない。現実は過酷だ。妹は結婚に敗れて病院にいるし、父は死んでしまった。相方は借金の申し込みに来る。そんなふうに。
母と息子のもとにくる彼らとのやりとりの中から、彼が抱える現実が見え隠れする。とても真面目で誠実な芝居だと思う。だが、あまりに作り方が単純すぎる。ここにはドラマとしての奥行きがない。その結果、芝居は単調になる。ドキドキしない。1時間20分が長く感じるほどだ。もちろんストーリーの面白さを追求せよ、とは言わない。個々の人間を見つめていくことから、見えてくるものが、僕たちをドキドキさせるのだ。芝居全体があまりに予定調和過ぎて感情の起伏すら描ききれないのが、残念だ。この図式的な構成からはみ出すものが欲しい。