今回も江頭美智留さんの台本を使う。(今回の演出は倉田操。)前作『ナビゲーション』に続くこの新作は、彼女が関わってきた世界であるTV局のお話。彼女の勝手知ったる世界を舞台にしたコメディだ。ドラマ作りのてんやわんやの舞台裏でのドタバタ騒動を描く群像劇。
ワンシチュエーションでラストまで一気に見せるはずのドラマだが、幾分単調に流れていくから、緊張が何度か途切れるのが残念だ。主人公の新人女優上白石萌(梅山恋和)の視点から描くべきだったのに彼女が群像劇の中に埋もれてしまったのが残念。
初めて見たドラマ制作現場で右往左往しながら、この世界を見ていく彼女の驚きと興奮が作品世界をリードしていくべきだった。
実際にも初めての舞台参加となる梅山恋和はとても魅力的で、彼女の戸惑いがリアルに伝わってくるのはよかったのだが、それだけに演出はしっかり彼女をセンターに導いていくべきだったのだ。ストーリー上は終盤台本を任されたり、主役の代役を依頼されたりとちゃんとセンターに導かれていくのだから、彼女が輝くように芝居全体をまとめていくのが使命なのに、そうはならなかった。バランス感覚を重視して彼女を埋もれさせてしまったのは残念でならない。