今更この小説を映画にするか、と僕は思う。朝井リョウによる原作が出たときに、これは実に面白いと思った。映画にしたらいいのに、とも。だけど、なかなか映画化されず、後発で『チアダン』とか、似たタイプの青春映画が出てしまったから、もういいでしょ、って感じ。(アメリカ映画だけど『チアーズ!』とかいうのもあった。)
でも、この小説をどんなふうに映画にしたのかは気になるから、ついつい見てしまった。見てよかったと思う。2時間気持ちよく過ごせた。これは悪くない映画だ。確かに、これはよくあるパターンから一歩も出ないけど、ただのルーティーンではない。彼ら7人の生き様が、それほど重くなく、でも、嘘くさくもなく、ちゃんと伝わる。それって実は簡単そうに見えて難しいのだ。キャラクターとかはよくあるパターンなのに、ただそれだけでは終わらせない。凡百の映画はそんなルーティーンに埋もれてしまい本来の輝きを失う。だが、この映画は、映画の中でも印象的なその夏の強い陽射しのように、彼らがここでチアを通してキラキラ輝いてることを伝える。
若い(たぶん)この監督は(風間太樹という人で、僕は初めて見た)は、誰もが抱く青春期の輝きを映像として切り取り提示できた。それだけでいい。自分が何かに夢中になること、それに向けて全力で挑むこと。この映画はそれが「チア」であることが仕掛けとなるのだが、男子のチアというマイナーなものに対しての偏見は一切(と、までは言えないけど)描かれないのもいい。これは『ウォーターボーイズ』とは違う。この生真面目なところがこの映画のよさだろう。見ていて気持ちがよかった。チアを始めたばかりの彼らが学園祭でデビューしてみんなから支持されるところまでを、さらりと描く。何かが始まる予感、という次元で止めておく。そんな潔さがこの映画の身上だ。
主人公の横浜流星は最近よく見るけど、これが今までで一番いい。控えめでおとなしい青年を過不足なく演じた。彼以外のキャストは知らない人ばかりで、手垢のつかないキャスティングは、メジャーなこの手の青春映画ではめずらしい。