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映画・演劇のレビュー

『コンクリート・ユートピア』

2024-01-07 16:52:00 | 映画

昨年の『非常宣言』に続き新春1月公開のイ・ビョンホン主演パニック大作映画の第2弾。(もちろん、誰もそんなふうには言ってないけど)大災害により荒廃した韓国・ソウルを舞台に、崩落を免れたたったひとつのマンションが舞台となる。そこに集まった生存者たちの争いを描いたパニックスリラーである。デザスター映画というよりも人間ドラマに焦点を置く。

マンションの代表に選ばれたイ・ビョンホンはみんなを守るために全力を尽くす。お話は若い夫婦(パク・ソジュンとパク・ボヨン)の視点から描かれる。ふたりの間に少しずつ溝が広がっていくのがスリリングだ。愛し合っているけど、生き延びるためのアプローチに齟齬が生じる。

サバイバル映画というわけでもない。極限状況に置かれた人々の狂気と冷静な判断が交錯する日々が綴られていく。いつまで経ってもも災害救助には誰もこない。自分たちで生き延びるしかない。周囲を拒絶して孤立することで自分たちの生存を守る。すべてが壊滅した中、このマンションだけがまさか本当に偶然から生き残って、だからここで力を合わせて暮らす。だが、いつまで持つかはわからない。ライフラインも絶たれた状況下で生き延びるのは困難だ。

やがて暴動が起こり、このコミューンも崩壊するのは必至のことであろう。このお話をどこに持っていくのか、落とし所が気になったが、あの終わり方では少しはぐらかされた気分だ。なかなか面白い発想で期待したけど、お話が広がらないし、ある種の予定調和。

宣伝にあるようにイ・ビョンホンが君臨者となって狂気に至るというわけでは(必ずしも)ない。彼はいたって冷静だ。住民のパニックをしっかり押さえている。ただ、ここには未来が見えないから、みんなが狂気に至る。出口が見えない迷路になっていく。生き残るためには人は自分のことしか考えなくなり、破滅に至る。あまりに暗くて救いのない映画である。参った。


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