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映画・演劇のレビュー

『笑いのカイブツ』

2024-01-07 17:19:00 | 映画

岡山天音が主演する笑いに取り憑かれた男の狂気の物語。怪演である。こんな岡山天音は見たことがない。危ない男を取り憑かれたように演じ切る。役者の岡山が主人公ツチヤと一心同体になっている。まさにタイトル通り笑いのカイブツだ。

ツチヤは笑いのことしか見えない。狂ったようにネタを書き続ける。ネタを考えると周りは見えなくなる。お笑い芸人の作家見習いになり才能を認められるが、周りが見えないし、周りに気を配れない。人間関係を作れないから周囲と歩調が合わないし、周りから疎まれる。しかも自分しか見えないわがまま。周囲の優しい人たちに支えられても、感謝はない。迷惑ばかりかけていく。当然こんな最低な人間は生き延びることは出来ない。

映画を見ているだけでも、イライラするくらいだ。実際にこんな奴に関わっている彼らはたまらないことだろう。あまりに甘すぎる。恋人、友人、理解してくれる先輩。そして母親。恵まれすぎた彼の周囲の人が可哀想になる。こんな奴に巻き込まれて。最低最悪だけど、だが見捨てることができない。

よくもまぁ、こんな男を主人公にして映画を作ったものだ。まるで共感することがない。なのに何故か引き込まれていく。この愚かな男の純粋さにいつのまにか惹かれている。納得はしないし、あり得ないバカさ。もっとまともな生き方をしろ、と腹立たしいのに、目が離せない。夢を一心に追いかける姿は美しいはずだけど、ツチヤはみっともない。純粋すぎたからだ。協調性がない。才能はあってもこれでは破滅するしかない。そんな男を客観的に描いた。共感もしないし否定もしない。映画を見て戸惑うばかりだ。


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