こういう運命の恋を描くラブストーリーは市川拓司の真骨頂なのだが、それをこういう中短編の世界で展開すると、長編の時以上に心地よいものになるという事実にちょっとした衝撃を受ける。3話連続で同じパターン。そんな中でも、短いほどインパクトが強いという事実。タイトルロールの中編より、少し短い『Your song』のほうがよくて、しかも、一番短い『泥棒の娘』が、もっといい。それって内容にもよるのだろうが、それ以上にテンポの良さが影響している。いつもの長編世界に酔うのも、悪くはないけど、今回のように、コンセプトを明快にして、出会いの瞬間、幾つかの風景、ほんのちょっとしたドラマ、そして、再会の喜び、という骨格のみを前面に押し出したのがなんだか新鮮だ。
まぁ、考えるまでもなく、いつも同じようなお話だ。主人公たちの名前や状況は少し違っても、その底を流れるものは、全く同じ。走ることと、歌うこと。絵を描きことと、ぼんやりしていること。勉強することと、小説を書くこと。2人を対比させながら、そのつながりから、ドラマを組み立てる。彼の主人公たちは、いつも周囲になじめない。特異な存在だ。だから、2人は呼応する。今ある現実、やがてある未来。
ここにはとても幸せなハッピーエンドが待っている。現実世界はこんなふうにうまくいくことはない。でも、彼の小説の世界では大丈夫なのだ。それぞれが、どんなに不幸なことがあろうとも、最後にはうまくいく。そんな奇跡を彼は信じているからだ。マンガみたいな話だが、市川拓司は、いつも本気でそんなドラマを信じているから、ちゃんと感動してしまう。作者の真面目な想いが、読者である僕たちに伝わってくるから、心地よい。ただそれだけ。でも、それ以上のものはいらない。
まぁ、考えるまでもなく、いつも同じようなお話だ。主人公たちの名前や状況は少し違っても、その底を流れるものは、全く同じ。走ることと、歌うこと。絵を描きことと、ぼんやりしていること。勉強することと、小説を書くこと。2人を対比させながら、そのつながりから、ドラマを組み立てる。彼の主人公たちは、いつも周囲になじめない。特異な存在だ。だから、2人は呼応する。今ある現実、やがてある未来。
ここにはとても幸せなハッピーエンドが待っている。現実世界はこんなふうにうまくいくことはない。でも、彼の小説の世界では大丈夫なのだ。それぞれが、どんなに不幸なことがあろうとも、最後にはうまくいく。そんな奇跡を彼は信じているからだ。マンガみたいな話だが、市川拓司は、いつも本気でそんなドラマを信じているから、ちゃんと感動してしまう。作者の真面目な想いが、読者である僕たちに伝わってくるから、心地よい。ただそれだけ。でも、それ以上のものはいらない。