正直言ってあまりおもしろくはなかった。ショックだ。だってこの映画は『スモーク』(脚本)、『クラッシュ』のポール・ハギス監督作品である。しかも、彼らしい素材だし、こんなにも好き放題している。なのに。
どうしてこんなことになったのか。もちろん、僕の期待値が高すぎた、ということもある。でも、彼ならそんなものを軽く上回るものを見せてくれるのではないかと信じていただけに、ショックは大きい。3つの都市での3つのお話が交錯して、やがてそれが一つになる、という彼の得意のパターンだ。だが、それぞれのエピソードには深みがない。
主人公となる2人の男は、旅先にある。作家はパリで、新作の執筆をしている。だが、スランプにある。もう書けないのではないか、という不安に駆られる。しかも、書いた小説は編集者から酷評される。もう終わっている。そんな彼のもとに愛人が来る。妻とは離婚した。人生をやり直したい、と思っている。ローマのビジネスマンは、偶然酒場で出逢った女に心魅かれる。彼女は別れた男に子供を拉致されて、彼から息子を取りも出すためにお金が必要だ、と言う。男は彼女のために口座から全財産を引き出す。ニューヨークのもと女優は別れた夫の元にいる息子に逢いたい。だが、元夫に息子の親権を奪われ、彼と会うことは叶わない。
ここに描かれる目の前の出来事だけで、彼らが今まで生きてきた人生の根幹にかかわる出来事がそこに集約されていくはずだった。なのに、それはこちらの胸には届かない。それは描かれたことが表層的でしかないからだ。
すべてが小説の中の出来事ならば仕方がない、とは言わさない。小説は、現実の出来事以上にリアルを描いてこそ意味を持つのだ。そうじゃなくてはこのお話はただに机上の物語しかない。
2人の男の話は作家の現実と、彼が書く物語、というレベルではなく、女たちの話も含めて、人が何を思い、何をするのか、ということを指し示す。自分のしたことへの後悔の念が今ある現実を覆していく。同じ過ちは繰り返さない。子供をめぐるお話が根底にはある。複雑に絡み合ったお話の微妙なバランスの悪さは、衝撃のラストに確かに集約はされていくのだが、あれでは納得がいかない。
どうしてこんなことになったのか。もちろん、僕の期待値が高すぎた、ということもある。でも、彼ならそんなものを軽く上回るものを見せてくれるのではないかと信じていただけに、ショックは大きい。3つの都市での3つのお話が交錯して、やがてそれが一つになる、という彼の得意のパターンだ。だが、それぞれのエピソードには深みがない。
主人公となる2人の男は、旅先にある。作家はパリで、新作の執筆をしている。だが、スランプにある。もう書けないのではないか、という不安に駆られる。しかも、書いた小説は編集者から酷評される。もう終わっている。そんな彼のもとに愛人が来る。妻とは離婚した。人生をやり直したい、と思っている。ローマのビジネスマンは、偶然酒場で出逢った女に心魅かれる。彼女は別れた男に子供を拉致されて、彼から息子を取りも出すためにお金が必要だ、と言う。男は彼女のために口座から全財産を引き出す。ニューヨークのもと女優は別れた夫の元にいる息子に逢いたい。だが、元夫に息子の親権を奪われ、彼と会うことは叶わない。
ここに描かれる目の前の出来事だけで、彼らが今まで生きてきた人生の根幹にかかわる出来事がそこに集約されていくはずだった。なのに、それはこちらの胸には届かない。それは描かれたことが表層的でしかないからだ。
すべてが小説の中の出来事ならば仕方がない、とは言わさない。小説は、現実の出来事以上にリアルを描いてこそ意味を持つのだ。そうじゃなくてはこのお話はただに机上の物語しかない。
2人の男の話は作家の現実と、彼が書く物語、というレベルではなく、女たちの話も含めて、人が何を思い、何をするのか、ということを指し示す。自分のしたことへの後悔の念が今ある現実を覆していく。同じ過ちは繰り返さない。子供をめぐるお話が根底にはある。複雑に絡み合ったお話の微妙なバランスの悪さは、衝撃のラストに確かに集約はされていくのだが、あれでは納得がいかない。