短編連作のスタイルで家族の肖像を描いていく11のお話が独立しながら絡み合い、3世代にわたる家族の物語を紡いでいく。これはどこにでもある4人家族の話だ。だけれども、それに「家」というものを中心に据えたとき、人と家との関係性から立ち上がる不思議なドラマが生まれる。父と母、姉と妹。姉は結婚して新しい家族を作っている。妹は東京から戻り、実家に寄生している。恋人と別れ、仕事もやめて何もせずブラブラしている。
祖母の死から始まり、母親の家族の話も折り込みながらこの、家を巡る物語は展開する。家はみんなが持つ。そこで暮らし、生きていく。その歴史が人を作り,家を作る。ひとつひとつのお話のささやかな物語が絡み合う。やがてそれぞれのピースがひとつに嵌まっていく。自分の家に対する考えが、そこには描かれてある。家ってなんだろうか。家族がそこにはいる。だけど、やがて家族はバラバラになる。それでも家は残る。家で暮らした記憶。それが染みついている。
ラストは1年後、祖母の一周忌。再びみんなが集まり、1年前にはこられなかった家族もそろい、ひとときの時間を過ごし、またそれぞれの家へと帰っていく。自分の家はどこにあるのか。改めて問いかける。実家なんていう言葉があるのだから、幻家や虚家なんて言葉があってもいい。自分の居場所がある、というのはいい。帰るべき場所は家だ。