『サラエヴォの銃声』というタイトルで、『ノーマンズランド』『鉄くず拾いの物語』のダニス・タノヴィッチ監督作品。前知識なくそれだけで見たからなんだか驚いた。こんな映画だとは思いもしなかった。ホテルの中から出ない。群像劇。さまざまな人たちが、ここで交錯していく。それぞれの立場や想いがすれ違い、ぶつかり合う。お話は『グランドホテル』形式を踏む。でも、個々人のドラマはさらりと描かれるから、あまり感傷的にはならない。どちらかというとドキュメンタリーのような感じで、感情移入しづらい。こんな話なのに、なぜだかあまり緊張感がない、情勢にむけてすべてのドラマが集約されていく、わけでもない。
この85分の映画が描く時間も85分だ。まぁ、これは『真昼の決闘』の時代から、よくあるパターンなのだが、それすらさりげない。あまりにさらりとしていて、なんなのか、と思うくらいだ。100年前のサラエヴォ事件の記念式典が舞台(背景?)となる。ホテルでのさまざまな出来事を追いかけていく。やがてタイトルにある銃声に至る。ボスニア内乱を描くのかと思っていたから、こんな群像劇だとは思いもしなかったから、映画を見ながら終始戸惑うことばかりだった。カタストロフィに向かい、ドラマはどんどん緊張を高めていく、というのがこの手の映画の定番なのに、その轍を踏まない。静かに事実を見つめていくばかりだ。それがもの足りない、と思ったのは、僕の理解力のなさだろうか。
へんな思い込みで映画を見てはならないと反省した。だけど、正直言って、この映画自体もなんか思ったほどには面白くはなかったのだけど、どうなんだかなぁ。(でも、いろんな映画祭で数々の賞を穫っているようだけど。)