ひな人形と四年生の女の子が、鄙びた田舎の駅で出会い、心を通い合わせる。誰からも顧みられることもなく、そこにひっそり飾られていたお雛さま。そんな彼女が少女を助けることで、再生していく姿を描く。
僕にとって、いとうみくは『車夫』に続いてこれで2冊目となる。最近出会った作家の中で、とても気になる人だ、今回もとてもいい。児童文学の棚から探してきた本だが、大人が読んでも、とても素直に響いてくる。
個人的な話だが、先日なんと10数年振りに雛人形を押し入れから出してきた。子供が大きくなってもうなんだか出すのが億劫になっていたからだ。でも、先日(といっても2月の終わりの話なのだが)東京で暮らす娘が、凜ちゃん(1歳、もちろん孫)を連れて里帰りすることになって、それならぜひひな人形を飾って楽しんでもらおう、と思ったからだ。凜ちゃんを喜ばせるために、久々に人形を出したのだが、久々に見る雛人形はよかった。そんなことがあり、今読んだ、この小説はとても心に沁みてきた。これは女の子にとって、雛人形とは何なのか、なんていうテーマだから、いろんなことを考えさせられてタイムリーだった。
少女と人形を通して、家族のきずなの再生がさらりと描かれていく。お話は神社が舞台となる。そういうわけで(というわけでもないけど、たまたま続いて、まはら三桃『ひかり生まれるところ』を読んでいる。
こちらは神主になった女性の日々を描く作品だ。子どもの頃と今とを対比させ、並行して描きながら過去の出来事を乗り越え、今を生きていこうとする姿がさわやかに描かれる。生まれたときから中学時代のある事件まで。そのことがきっかけとなり、神職を目指すことになる。
今、静かに秘やかに息を潜めるように生きる主人公をゆっくり見つめるようにして彼女の毎日のスケッチが描かれていく。過去と今が交錯して、未来へとつながる。たまたまだけど、2作ともよく似ている。