ティム・バートンによる前作を受けて、ジェームズボビン監督が、アリスのその後、さらには新しい旅を描く第2作。冒頭の海上シーンには手に汗握る。こんなシーンからスタートするとは夢にも思わなかった。アリスの船が海賊たちの追撃を受けて、岩があちこちに突き出た浅瀬の狭い空間を抜けていく。ハラハラドキドキのスペクタクル。これは『パイレーツ・オブ・カリビアン』の新作だったのか、と目を疑うようだ。そのくせジョニー・デップはなかなか出て来ないし。でも、大丈夫、アリス船長がこの難局を見事切り抜ける。
摑みとしてはこれは最高だ。大人になり(前作でもアリスはもう大人だったけど、前作は原作のイメージを受け継いだような結婚式のシーンから始まった)仕事も持ち、男たちに負けない強い女として登場する。そんな彼女が、とある事情から再びワンダーランドに行き(そこはお約束)、ジョニー・デップ演じるマッドハッター(帽子屋さん、ね)を助け、彼の家族を取り戻す旅にでる。今回は鏡の国なのか、と思ったら、(最初はちゃんと鏡から始まるけど)時間の国が舞台となる。お話はもうルイス・キャロルなんて設定だけいただいたオリジナル。
ただ、タイムマシンに乗って過去に行き、不正を正すなんていうお話はいささか安易かもしれない。『不思議の国のアリス』の世界を使い、好き放題した前作をさらにグレードアップしたなら、これはもうアリスではないよ、という世界のお話しになりました、って、感じ。
どんなビジュアルでも表現できるようになったSFXの進歩によって、僕たちはもう何を見てももう驚かなくなった。不感症なので、この映画のめくるめく万華鏡もあまり感動しない。それよりも、今はお話で勝負するしかない。その点、この映画は最初の摑みの素晴らしさを生かしきれない。哀れな存在のマッドハッターをアリスが一方的に助けるだけになったのがまずいのではないか。彼がふさぎこんだのは、家族がいないことだけではなく、もっと品質的な問題でもあるはずなのだ。この世界はどうなっているのか。そこで何を為すべきなのか。そういうお話しの部分が弱いから途中から映画に乗れなくなる。華やかな技術の「披露」だけでは、「疲労」する。