『天国は待ってくれる』

　とても重い映画だ。でも、この映画は、この重さを全身で受け止めてくれ、と訴えかけてくる。これが、この映画に込めた俺たちの想いだ、という叫びが聞こえてくるような映画だ。

　甘っちょろい話で、これは《お子様ランチ》かもしれない。しかし、作り手は本気でこの映画に挑んでいる。昔は、こんなタイプの映画がたくさんあった。批評家からも一般の大人からも相手にされない＜青春アイドル映画＞である。それをお子様ランチと呼んで差別していた。しかし、そんな作品の中にも、確かに映画として大人にも感動を与えてくれる作品があったのだ。松竹の山根成之監督は一生涯そんな映画を撮り続けて、死んだ。彼の傑作『さらば夏の光よ』を思い出させてくれる。そんな松竹伝統の青春メロドラマの復活である。

　新人、土岐善将監督は、映画史に残るようなものを撮ろうとしているのではない。Ｖ６のアイドルタレントを使ったお手軽な青春メロドラマに見えてもいいと覚悟を決めている。ただ、この映画を見に来る【イノッチ】（井ノ原快彦）のファンの女の子たちに確かな感動を与えてあげたい、それだけを願って誠実に作っている。それだから僕たち大人の心を打つこともできるのだ。

　大切なことは、誰にむけて、どれだけ真剣に作るか、ということである。それ以外のことは考えなくていい。つまらない映画だと、バカにされたっていい。この映画を見た子どもたちが確かに感動して劇場を出てくれたなら大成功なのだ。かってそんな映画がこの国にはあった。６０年代から、７０年代にかけて作られたプログラム・ピクチァーはその時代の子供たちの胸に、確かに届いていた。

　この映画は、３人の男女の恋物語。３人の永遠に続くはずだった友情の物語だ。たとえ死んでしまっても３人の気持ちは消えたりしない。大人になっても彼らはそう信じる。気恥ずかしいようなストレートな想いが、素直にこちらに伝わってくる。彼らを包む親たちの友情物語も、話としては出来すぎだが悪くない。今時こんなことはないだろ、と思うが、それを信じたくなるようなハ－ト・ウォーミングである。優しい気持ちになりたい人にはお勧め。