習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

たなぼた『喫茶リコリス』

2015-12-28 22:36:21 | 演劇
今年も「たなぼた」の芝居が見れるなんて、なんだか嬉しい。彼女たちが復活してもう3年になる。ここに至ってようやく本調子になってきたのではないか。そんなふうに思えるくらいに、再演となるこの『喫茶リコリス』は、とても落ちついた作品に仕上がっている。

ある喫茶店での24時間が描かれる。朝から始まり、翌朝まで。ここはなんと終日営業の喫茶店なのだ。マスターは静かに訪れるお客さんを見守るだけ。カウンターの向こうで、コーヒーを淹れて、サンドウィッチを作る。ただ黙々と自分の仕事をこなす。しかし、彼にはなんだか秘密があるようなのだ。個人経営なのに、24時間営業なんていうのがまず普通じゃない。

なんだか、訳のわからない客がやってきて、ドタバタを繰り広げる。よくあるパターンで、まぁこれは、たわいもない、ほんとうに「よくあるコメディ」なのだが、それが、ただのドタバタには終わらない。

なんだか、(少しだけど)しみじみして、落ちついた芝居なのである。そこが、気に入った。従来の「たなぼた」との違いはそこに尽きる。短編連作スタイルである。僕たち観客は、お客たちの交わす会話を聞くことになる。基本的にマスターは、話には関わらない。当たり前のことだ。しかしふつう芝居ではなかなかそうはいかない。なんだかドラマチックになるのが常だ。なのに、この芝居はそうはならない。

この作品のよさは、そんな節度にある。舞台中央の柱時計。古い大きなその時計に象徴されるもの。それがマスターの拘りで、それが何なのか、というのが芝居の隠し味となっている。まぁ、そんな大げさなことではないけど、ほんのちょっとした仕掛けがこの作品に広がりと奥行きを与える。そこが今までの「たなぼた」にはなかった魅力になっている。役者たちも適材適所で、悪くない。安心して見ていられる小佳作である。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ババロワーズ 『ショートシ... | トップ | 劇団カメハウス 『MEMENTO ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。