これは確か毎日新聞に連載されていて、連載時に読みたかったけど、少しずつ読むのが面倒で単行本化を待っていた作品だ。ようやく読めるのがうれしい。(毎日新聞の小学生新聞とあるが、それって、たぶん本誌のコーナーではないか?)
児童書だけど、いつもながら倻月さんの冷静な視線が貫かれていて、気持ちいい。これは子どもだけでなく大人こそが読むべき小説だ。小学6年という微妙な時間に優しく迫る。忘れていたあの頃を思い出しながら、今を生きる12歳と向き合う。しかもこの小説が扱う小学校は外国人や2世児童が多い。日本人とか外国人とか関係なくクラスメイトとして当たり前に一緒に毎日を過ごしてきたし、今も過ごしている。そんな彼らの日常が丁寧に綴られている。たわいない毎日のこと、まさかの事件。28歳の先生は頑張っているけど、もう子どもたちのことがわからない一面もあり、子どもたちに教えられる。保護者たちは担任である彼女より年上で、まだ結婚も出産も、(もちろん子育ても)したことのない彼女にしてみれば大人である。そんな大人とクラスの子どもたちの間に立ち教師として指導するのは困難も多い。彼女の失敗を巡る物語もちゃんと挟み込みながらジュンを中心にした6人の物語が描かれる。そしてラストの卒業式ではクラス全員,26名が描かれていたことが明確になる。子どもたちに向けてのお話が、こんなにも大人である僕たちの胸に迫る。