今回も別にミステリーではないし。前作の続きで、同じパターン。でも、この(よくあるパターンの)ケーキ大好き少女と、イケメン・クールのパティシエ志望の男の子のお話は、楽しい。おいしそうなケーキの話と、ふたりの恋(以前の)話は、だらだら読んでいるだけで、けっこう幸せな気分になれる。好きなものを好きと言える。好きを楽しめる。そんな当たり前のことが、ちゃんと描かれる。
こういうライトノベルは、つまらない、という人もいるだろうが、こういうスタイルでしか語れないものもある、と思うのだ。少女漫画もそうだろう。(たぶん) 読者を楽しませるためのありえない設定を用意して、でも、そんな夢の話の中で、真実をさらっと振りかける。心地よい夢物語が、生きる元気につながる、だなんて書くと大げさだけど、この子たちのケーキが好き、という気持ちは本物で共感できる、それだけでいい。主人公の2人のラブ・ストーリーなんか誰も期待していない。この子たちは一緒にいるだけで楽しいのだ。憎まれ口をたたきあいながら、同じところでバイトして、学校のみんなには秘密で。
この春に見た廣木隆一の『PとJK』も同じ感じだった。あのありえないを小説や映画の中で楽しむ。そんなのもありではないか。フランス人の美人の謎の女性がオーナーを訪ねてパリからやってくるとか、もうやりたい放題。
きっと好評なら、3冊目も書かれるのだろうが、この手の作品はもうここらへんでやめた方がいい。