公開初日の午後、さっそく見に行く。見事なアナログ映画だ。オリジナルのリメイクである。原作へのオマージュであり、その進化系。ここには誰もが見たこともないウルトラマンが、懐かしい姿で立っている。原点帰りではない。原点に忠実に「今」のウルトラマンがそこにはいる。庵野秀明と樋口真嗣がタッグを組んで、4年の歳月を費やし、丁寧に作り上げた。最新技術と、アナログ技術の見事な融合。そして何より素晴らしいのは、まずよく出来た台本があることだ。庵野の用意した台本には、あの頃の再現ではない、だが、あの頃夢見た世界が確かにそこにはある。ウルトラマンがなぜ地球に来たのか。怪獣(ではなく禍威獣だが)は、なぜ日本だけを襲うのか。そこは「お約束」ではなく、「リアリティ」を追求するでもなく、ちゃんと子供目線で不思議と向き合う夢のある映画になっているのだ。だからチラシにあるように、これは「空想特撮映画」なのである。そして「空想と浪漫。そして友情。」がそこには描かれるのだ。
『ウルトラQ』の世界から始まり、お約束のストーリーは逸脱せず、なんと最後の敵はちゃんとゼットンである。もちろんそれは安易な原作のなぞりではない。この世界観を壊すことなく、この世界を構築していくための仕掛けである。ウルトラマンが地球を救う。彼は人間が大好きだから。自分を犠牲にしても、ひとりの人間の命と、人類全体も守ろうとする。「科特隊」が「禍特待」になり、ハヤタ隊員が、神永新二になろうとも基本姿勢は変わらない。
『シン・ゴジラ』でやったことをちゃんと引き続きやりつつも、あれとは違うアプローチを見せる。引き継ぐところと、新機軸との兼ね合いをきちんと考えて、単純に同じことはしない。当たり前の話なのだけど、とても潔い。細部まで実によく考えられてある。カラータイマーを外したのも、ささやかな変更だが、興味深い。長澤まさみが巨大化するシーンも、ああいうのが確か『ウルトラQ』にあったよな、と思い出す。ストーリーに無理なく遊びが収められているのも素晴らしい。初めて見る人にも、ずっと見ている人にも、そして僕たちのようにリアルタイムであの頃見ていた人たちにも受け入れられる万人向けの娯楽映画に仕上がっている。ストーリーも詰め込みすぎず、急所を外さず、納得の展開で1時半52分という的確な尺に収める。あっぱれだ。