この作品は「真夏の太陽ガールズ2020」の代替公演として上演された。まず、今年は「真夏の太陽ガールズ」が上演できなかったことは悔しいけど、それでも諦めず、こういう形での公演を実施したオカモト國ヒコとBALBOLABOチームは凄い、ということを言いたい。そこには、何があっても芝居をする、という強い意志を感じる。簡単ではない。だけど、やり遂げる。軽やかなフットワークを見せるこの芝居を持ってくるところも、素晴らしい。十八番であるこの演目なら簡単に作れると踏んだのではないことは明らかだ。しかし、ここに描かれる極限状況を安易に今の困難な時代と重ね合わせるわけでもない。エンタメの魅力と、芝居だからこそ見せれるもの、それがまず第1の条件だ。
テノヒラサイズの代表作であるこの作品は、とてもよくできたシチュエーションコメディである。だけど、お話自体の底は浅い。たわいないお話だ。だけど、そのたわいなさが魅力である。男はこんなことのためにすべてを賭ける。だけど、彼はそれをどうしても見せたかった。彼らに、自分たちがしたことによって、どれだけ救われたか、ということを伝えたかった。このお話は、そのための茶番なのだ。それって、今、ここでこの芝居を作ろうとしたこの制作チームの姿勢と重なる。僕たち観客に今のこんな時代だからこそ、これを見せたかった、という心意気だ。
もちろん、オリンピックの年に、4年連続の最後の「真夏の太陽ガールズ」をやるという壮大な計画が延期されたことはショックだ。でも彼らはそれを受けて、それなら何をするのか、と考える。この夏も芝居は止めない。なんだかそれって凄い。細心の注意を払って、公演を実施する。テノヒラサイズの原点だ。今、もう一度、芝居を作る意味を問いかける。そんな作品になっていた。
役者たちが必死に舞台上を駆け巡る。なんとかして、この状況を打破したい。先の見えない、今と向き合う。そんなふうに書くとなんだかこの芝居が切実に見えてくるけど、そうじゃないことは明らかだ。とてもおしゃれで軽やか。それでこそ、『人生大車輪』だ。