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映画・演劇のレビュー

A級MissingLink 『罪だったり罰だったり』

2017-10-13 23:30:56 | 演劇

 

3本がそれぞれ自分たちの罪について、その罰について、しっかり見つめてみるという正攻法の芝居で、がっつり作られてあり見応え満点。こんなにもわかりやすいA級作品って初めてではないか。でも、それが観客に対するサービスでも妥協でもなく、このテーマに対する作り手の真摯な姿勢を示すものになっていて素晴らしい。重いテーマをガツンと突きつけてくるけど、重い芝居にはならない。とても見やすい芝居でさらりとした作品になっているのが凄い。ドストエフスキーへの挑戦でもある作品をこんなカタチで返してくるなんて。

 

「誰が生きる意味を与えてくれるのか」というとても大きな問いかけに対して土橋さんがきちんと小さな答えを返してくれる。これはそんな作品なのだ。とても面白いし、わかりやすく、いろんなことを考えさせてくれる。こういうすっきりした芝居を見るのは久しぶりな気がする。短編としてもよくできている。内容としては長編の趣もあり、ほんの少しいくつかのシーンを膨らませたならしっかり長編作品になる贅沢さ。でも、敢えてそうはしない。本来なら描き込みたいところも、サラリと流して余白を残す。そのへんの匙加減が見事だ。

 

1話目は、いきなり男を殺す場面から始まる。なぜ殺したのか、とか、なぜ殺さなくてはならないのか、とか、今ではもういない父親のこと、とか。帰郷の話にいろんな事情が重なり合う。

 

2話目は、夢の中で出会った3人の子どもたちの話。大人になった彼らがそれぞれの場所で夢を実現させ、そして死んでいく、死なせてしまう。シリアでの事件。アメリカでのドローンによる遠隔操作。日本人旅行者による現地取材。3人のそれぞれの話が交錯する。

 

3話目は、認知症の祖母の自殺を感づいていながら、見過ごす話。知らないフリ、見なかったフリをして。彼女の想いを全うしてあげる手助けをした男に罪はあるか。

 

いずれも直球勝負の力作で、3本の長編作品を一気に見た気分にさせられる。なのに、疲れさせられることなく、あっという間の2時間20分だった。40分程度の話にした。お話の核心部分をクローズアップした。その結果とてもシンプルで、見応えにある作品に仕上がったのだ。

 


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