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映画・演劇のレビュー

『ライジング・ドラゴン』

2013-04-15 21:34:54 | 映画
 僕は断然ジャッキー派だ。僕たちの世代はブルース・リーから多大な影響を受けている。だが、夭折した彼より、ずっと生き続けるジャッキーの挑戦を断固支持する。まぁ、どちらがどうとか、そんな問題ではないことなんか、誰より自分自身がよく知っていることなのだが、それでもまず、こんな話からこの映画のことを語り始めたい。

 『酔拳』からずっとリアルタイムでほぼすべての作品を見てきた。最初はバカバカしいと思うこともあった。あの頃の香港映画はとても荒っぽい映画ばかりで、とてもまともに見ていられなかった。ブルース・リーの映画なんか、すべてそうである。ブルースの存在だけがすべてだ。だが、ジャッキーはそうではない。すべては『プロジェクトA』から始まる。あの映画を初めて見た時の興奮は、忘れることができない。まぁ、今はそんな話をする場合ではないから、話を先に進める。

 あれやこれやの紆余曲折があり、今回の作品が本格アクションからの引退となるようだ。だからこれは「最後のアクション超大作」となる(らしい)。そりゃぁ、もう、還暦を迎える彼がこれ以上、アクションを極めることは不可能だ。だからといってCGに頼った映画を彼が作るわけがない。生身の体がすべてだ。だから、最後の今、彼は出来る限りのすべての力を出し切る覚悟でこの作品に臨んだはずなのだ。何よりもまず、今、これを見なければならない。そんな使命感すら抱いて公開初日の劇場に行く。

 だが、いつまでたってもまるで乗れなかった。衝撃的なまでに映画はつまらない。これは一体どうしたことか、と驚く。久々に監督も兼ねた。過激で楽しいアクションシーンは満載された。でも、映画にはまるでテンポがない。もたもたするばかりで、まるで弾まない。どうして、こんなことになったのだろうか。あれもこれもと詰め込み過ぎたのかもしれない。いろんなアクションをこの1本に封じ込めようとした気持ちはわかるけど、なんだか締りのない映画になった。

 まずこの話自身がつまらない。チームジャッキーがお宝を奪う、という基本線が、まず、わけがわからない。何なんですか。あのお友だち集団は? これはアジアの鷹シリーズの新作という触れ込みなのだが、ジャッキーには一匹狼が似合う。もちろんそんな映画は実は少ないのは承知のうえだ。彼にはいつも周囲に仲間がいる。でも、今回のそれはなんか今までとは違う。

 映画のためのアクションではなく、アクションのための映画になっているのだ。この映画で見せたかったのは、アクションをするジャッキーその人で、だから、これは映画ではない。ただのイベントでしかないのだ。それって僕にはつまらない。ジャッキーのアクション映画が見たかった。

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